ごみをエネルギーに換える!バイオマス発電がこれからの地方を救う理由


SDGs的な立場から、ごみの単純焼却をやめて新たな資源として捉える必要が出てきています。そこで注目されているのが、有機ごみを活用したバイオマス発電です。これまでコストなどの問題によって普及が遅れていたバイオマスですが、資源循環を実現する上で地産地消のエネルギー源としていま注目が集まっています。

1.バイオマス活用とはなにか

久米今回は、地産地消が鍵となるバイオマスの活用について伺っていきたいと思います。早速ですがポイントを3つお願いします。

新井 まず1つ目が、バイオマス/バイオガスとは何か、2つ目にバイオガス発電の課題、3つ目に、地産地消のエネルギーとしての可能性、ここについてお話をしていきたいと思います。

久米 今回のテーマであるバイオマスっていうのは具体的にどういったものを指すんでしょうか?

新井 バイオマスっていうのは木材とか食品関係とか、あとは家畜の排せつ物とか、あとは下水汚泥みたいなものも含まれるんですけれども、要するに有機物のことを指します。

久米 なるほど。それらのものって今どのようにリサイクルされているんですか?

新井 バイオマス原料として使える廃棄物は年間2億4,000万トンくらい発生しています。

じつは、全体のリサイクル率としては7割ぐらい行ってるんですが、そのうちの多くは家畜の排せつ物と下水汚泥で、それぞれ8,000万トンずつくらいあるんです。両者ともリサイクル率は7~8割いっているので、全体のリサイクル率でみると比較的高めに見えるんですけれども、その中で課題と言われているのが食品廃棄物と、林地残材という、森の中に残された木とか、未利用の間伐材とかですね。

それぞれ3割ぐらいまでしかリサイクルされていないので、ここの活用が課題と言われています。

久米なるほど、食品残渣の中でも、特に家庭とかスーパーとかで出るものがリサイクルされていないんですか?

新井 そうですね。家庭や飲食店から出る生ごみとか、おっしゃる通りスーパーのお惣菜の期限切れのものとかが今は単純焼却に回されちゃっているのがほとんどなので、ここをいかにリサイクルに回すかっていうのが課題です。

2.バイオガス発電とはなにか

久米 なるほど。活用方法として、バイオマス発電とかバイオガス発電っていう言葉を聞いたことがあるんですけど、それぞれどういった発電方法になるのか教えて頂けますか?

新井 バイオマス発電にバイオガス発電が含まれるっていうような感じです。

バイオマス発電というのは、バイオマス、つまりは有機資源、木材とか食品とかそういったものを原料にして熱を取り出したり、発電をしたりするっていうことなんですけど、一番メジャーなのが木質バイオマス発電と言われるやつで、これは間伐材とか廃棄物由来の木質チップを燃やして、それで発電をするというものです。

バイオガス発電というのは、食品廃棄物をメタン菌を使って発酵させて、その時に出てくるメタンガスを燃やして電気を取り出すという発電方法になります。

久米 なるほど、バイオマス発電は木質チップを原料とする一方で、バイオガス発電であれば廃棄物を原料として発電することができるってことですね。

新井 一応、木質系であっても基本は廃棄物になった木材を使って発電しています。多いのが「PKS」って言われる、パーム油っていうものを取るために育てられているパームヤシを絞った後の殻です。量がかなりあるので、これを原料にして燃やすっていうのが結構世界的にメジャーになっています。

日本の場合はそれを輸入してきて、バイオマス発電所で突っ込んで発電してるっていうのが結構多い状況ですね。

久米 国内で出ている間伐材だけではなくて、輸入にも頼っているんですね。

新井 はい。パームヤシを海外から輸入してきて、それを燃やしてカーボンニュートラルですっていうのはどうなのかっていう議論がずっとあって、特にパームヤシの場合は大規模プランテーションによる森林破壊が問題になっているので、環境配慮の観点からも、地産地消っていう観点かも、どんどん国産の木質チップに回帰していく流れがあるんじゃないかなというふうに思います。

3.バイオガス発電の課題

久米バイオガス発電であれば、リサイクルしづらい廃棄物を由来としている、かつ国内の循環がより可能になるので、すごく画期的な技術だなと思うんですけれども、普及がまだまだできていないのはどういった理由があるんでしょうか?

新井まず、食品リサイクルの序列っていうのが決められていて、リサイクル手法は3種類あるんですけれども、まず1.飼料化。豚などの家畜の餌にする方法と、2.堆肥化、つまり肥料ですね。

そして3番目として、1、2いずれにもならないものの受け皿的な立ち位置で、いろんなものを受け入れやすい特徴がある3.バイオガス発電になります。

飼料化なんかは原料としての価値が高いので、出す側としては処理費が安く抑えられるんですね。かつリサイクルできる。一方でバイオガスはどうしても廃棄物に近くなってくるので、処理費が高くなってしまう。地域の焼却場の処理単価と比べたときに、焼却費用が安い地域だとそっちに持ってってしまうので、なかなか普及が進まないっていうのが課題の1つと言えます。

理由のもう1つは、要するに生ごみということで臭いがしますので、臭気対策っていうのが必要になるんです。堆肥化とかは郊外でもできるんですけど、食品廃棄物を効率的に集めるためには都市部に建てなきゃいけない。

そうすると、周辺住民が迷惑しないようにシャッターを何重にしたりして臭気対策をするっていうコストがかかってくるので、なかなか導入が進まないっていうところがあります。

ただ、最近は飼料化も加熱殺菌が必須になったり、その加熱に使う化石燃料の価格が高騰しており全国的に焼却場の処理単価が上がる傾向にあるし、一方でバイオマスの方はどんどん技術が上がりコストが抑えられているため、近年はコストが変わらなくなってきていると言われてます。

4.地産地消のエネルギーとしての可能性

久米 3つ目のポイントとして、地産地消が鍵になるのではということでしたが、どういった可能性があるんでしょうか?

新井 やっぱり食品廃棄物とか間伐材ってどの地域にもあるものなんですよね。あとは下水汚泥などもそうです。絶対に発生するものなので、今まで化石燃料を使ってた地域がバイオマス原料からエネルギーを作れると、かなり効率よく地産地消ができるのでサーキュラーエコノミー的にもいいんじゃないかって言われています。

久米 なるほど。焼却施設はすでに各地域にありますし、そんな感じでバイオガス発電所が地域に根ざしていければ、運搬のコストもより抑えられますし、処理費用も下げられる可能性があるということですね。

新井 そうなんです。特に下水汚泥は今でもリサイクル率が7~8割もあるんですが、その用途は建設資材とか、歩道の路盤材とか農地への肥料化とかが多いんです。ですがこれを燃料として活用していく方がカーボンニュートラルの観点からいいんじゃないかって議論が今されていて、そうなると新たな地域インフラになる可能性があります。

下水処理施設が発電所になるって考え方ができるので面白いと思っています。

久米 面白いですね。食品廃棄物の活用もしながら、またエネルギー問題も同時に解決していけるバイオガス発電はとても期待ができそうですね。