環境と教育のおいしい関係とは ~ごみ拾いの真の意義とシティズンサイエンス~


「リサイクルは教育だ」という言葉があります。日本は1960年代から学校教育でごみについて教える草の根運動によって強い分別意識が浸透し、世界的に見ても高度な分別制度が成されている国です。そこで、ごみを減らすことと教育の関係について改めて紹介します。ポイントは「楽しんで体験すること」そしてその先にある「シティズンサイエンス」でした。

1.環境教育の実態について

久米 今回は環境教育の重要性について3つのポイントに絞ってお話を伺っていきたいと思います。

新井 はい。まず一つ目は環境教育の実態について。二つ目は環境に関する啓蒙活動について、三つ目、さらに踏み込んだシティズンサイエンスという活動についてお話します。

久米 最近では小学校でもSDGsの教育が取り入れられているって話を伺ったことがあるんですけど、実際に新井さんが経営している新井紙材さんも小学校に出張授業に行かれているそうですね。最近の小学生の環境への関心はどんな感じですか。

新井 そうですね、最近では小学四年生のクラスにお邪魔して講義をしたんですけど、SDGsでいえばプラスチックについて、特に海洋プラスチック問題に関して関心度が高かった印象がありました。

あとは、ごみ処理焼却場のクレーンがごみを掴んで焼却場に運ぶような動画を見てもらったり、再生プラスチックで作ったごみ袋の実物を持っていって触ってもらったりしたんですけど、そういった現物を触ったり見たりするところにかなりやっぱり反応よかったなっていう印象がありますね。

久米 なるほど。確かにそういった現物とか現場って普段は全く知ることができないので、かなり興味深いですよね。

新井 実はこの業界ってけっこう工場見学の受け付けとかをやってたりするんですけど、なかなか知られてないですよね。

久米 新井紙材さんはどのようなことがきっかけで環境教育を始められたんですか?

新井 紙の業界って元々、日本が分別リサイクルを始める1960~70年代ぐらいのタイミングで、小学校に伺っての出張授業を行ってたんですね。例えば、牛乳パックを持ってきてもらってそれを溶かしてはがきをつくるみたいな、リサイクルの一連の流れが体験できるみたいなことを業界としてかなりやっていたんです。

それは当然、古紙を原料としてたくさん確保したいっていう業界側の思惑もあったんですけれど、そういう草の根的な活動のおかげで日本のリサイクル・分別意識っていうのはかなり根づいたと言われてるんです。

その経緯を見てきたり、また、当時の出張授業をしていた人らが今もやってたりするので、そういうところから、こうした教育・啓蒙活動は重要なんだと意識して思ってやってます。

久米 なるほど。継続して子供に伝えていくことで、さらにその親にも伝わったりとか、継続による定着化みたいなところに繋がっていくんですね。

2.楽しむことが入り口になる

新井 あとは、楽しみながら啓蒙活動しようって流れもあって、ごみ拾いイベントとか、海岸のビーチクリーンとかってのはよく聞きますね。

ごみ拾いイベントについて言えば、「清走中」っていう、楽しみながら競い合ってゲームみたいにして街中のごみを拾っていこうみたいなイベントがあります。

あとはビーチクリーンですが、恥ずかしながら私も最近になって初めてビーチクリーンを体験しました。それまではいくらごみを拾ったところで、ごみの元となる原因を締めなきゃしょうがないだろうって少し考えてたりもしたんですけれども、実際行ってみると「あぁ、こういう現状があるんだ」という理解が進みます。海で仕事する人たちにとっては、ごみを拾わないとやっていけないっていう事情が分かったりとか、非常に勉強になりました。

久米 なるほど。私もビーチクリーンに参加したことがあるんですけど、ごみがたくさん集められるとちょっと嬉しい気持ちになりますし、環境に関心のある友達同士とかを誘ってみんなで行くことで、ちょっとした思い出作りにもなったりして、すごく楽しかったです。

参加者も実際に自分たちの手を動かして体を動かして体験することで、より実感が湧いてくるので、まずは楽しいっていうことが入り口となって、そこからさらに踏み込んだ活動に発展していくっていうような順番があるのかなと思います。

3.シティズンサイエンスとは何か

新井 そうですね。やっぱり実体験するっていうことは非常に大事で、それをきっかけとしてさらに深くなっていくといいと思います。深いというのの1つに「シティズンサイエンス」っていう活動があります。

例えば私が参加した香川・瀬戸内海のビーチクリーンでは、ごみ拾いに参加してた市民が「このごみはどこから来てるんだろう」と調査したんです。そこでは牡蠣の養殖に使うプラスチック器具のごみがかなり出ていたんですが、調査によって広島の方から流れてくるっていう事がわかりました。

そうしたら、例えば「別の素材に替えませんか」みたいな提言を排出元の企業とか自治体に対して働きかけていくことができて、根本解決に繋がっていきますよね。そうした活動に繋げていけるのがシティズンサイエンスなんです。

このように、楽しみながらごみを拾ったりして、入り口となる体験・イベントを開く一方で、そもそもごみを拾う必要がない仕組みをつくる方法を考えることも重要です。その両方が必要なのかなっていうふうに思うので、これからの啓蒙活動はそういった制度設計ができるといいんじゃないかと思います。

久米 ありがとうございました。