世界を救う新しい概念「ドーナツ経済学」とは?


私たちが当たり前のようにイメージする経済学のイメージといえば、右肩上がりの成長曲線だ。

しかし、地球規模で様々な課題が浮上し表面化することで、その成長曲線のイメージからの脱却を目指さなければならない時代が訪れようとしている。

今回は新しい経済学のスタンダードになるかもしれない「ドーナツ経済学」について分かりやすく解説する。

1.ドーナツ経済学とは?

飴屋 今回はドーナツ経済学について伺っていきたいと思います。

新井 ドーナツ経済学は2011年にケイト・ラワースさんという経済学者が発表した新しい経済理論です。

自然環境を汚すことなく平等な社会を実現する、人類の長期的なビジョンを示した新しい理論ということで注目されています。

飴屋 ドーナツの図の見方を少し教えていただけますか?

新井 この円は人類が繁栄している状態をドーナツに例えて表現したものですが、緑色のドーナツの外側が地球環境に係る限界を表しています。

過剰な資源採取や大気汚染など、主に人類社会に由来する環境への問題が行き過ぎていることを円の外側が表しています。

もう一方、ドーナツの内側の部分は人類の社会的問題を表しているんですが、貧困や不健康の問題など、全ての人に資源や福祉が行き渡ってない不足の部分が赤く表現されています。

外側の過剰な部分をドーナツの輪の中に収まる範囲に抑えて、内側はドーナツの輪の中に収まるよう引き上げることで、SDGsが達成してる状態を目指そうみたいな考え方ですね。

飴屋 きれいなドーナツの形になったらSDGs達成みたいな感じなんですね!

2.今の経済理論は限界?ドーナツ型の理由

飴屋 なぜドーナツ経済学が生まれたのか教えてください。

新井 簡単に言うと、今までの経済成長至上主義みたいな考え方だと無理が出てきているっていうことをケイト・ラワースさんが指摘してるわけです。

皆さんが思い浮かべる今までの経済学、経済理論は右肩上がりの成長曲線図だと思うんですけど、このままずっと西暦4000年まで右肩上がりでいくのかっていうと、そんなわけないんですよね。

飴屋 たしかにずっと上がり続けるとは考えにくいですね。

新井 すでに現状が右肩上がりではうまくいかなくなってきていますから、新しい考え方を導入しないと駄目だよねっていうのがケイト・ラワースさんの主張なんですね。

ちなみにケイトさんが強く言っているのが、右肩上がりの経済学があまりにもわかりやすくて、多くの人が右肩上がりの経済成長が刷り込まれてしまっており、政策などの重要な決定も右肩上がりの経済学を前提に行われている現状が非常に問題だと言っています。

なので、人々の認識を右肩上がりからドーナツに書き換えて、わかりやすさで勝負しようと考えているそうです。

飴屋 確かにドーナツだとわかりやすいですね。

3.何が優れてる?

飴屋 ドーナツ経済学は何がいいんですか?

新井 私がよく言うことなんですが、脱炭素を巡る議論なども極端に化石燃料をゼロにすればいいみたいな話が出てきがちなんですが、そうではなく、バランスよくやりましょうみたいなところですね。

単純になにかをゼロにするって話ではなく、ちょうどドーナツの輪の中に収まるようにバランスをとりましょうみたいな考え方が、私としてはとても共感できます。

飴屋 できるだけ綺麗なドーナツを目指したくなりますね。だけどドーナツ経済学みたいな新しい理論だと反対意見とかないんですか?

新井 オランダのアムステルダム市がドーナツ経済を市の目標として取り入れているんですが、大使の方に何か反対意見があるんですかって聞いたことがあります。

聞こえてくる反対意見としては風力発電の風車の結果が悪くなるから立てないでくれみたいな不満はあるみたいなんですけど、ドーナツ理論自体に対して「いや違う」みたいな話はあまりないみたいです。

ちなみにアムステルダムの大使の方が言ってたんですが、ケイトさんはSDGsのアイコンが多用されすぎて陳腐化し、価値が下がってるのをすごく気にしていて、先述したドーナツの図の使用を厳しく制限してるっていう話もおっしゃってました。

今回のまとめ

飴屋 今回のまとめをお願いします。

新井 まず1つ目がドーナツ経済学とはSDGsを達成できているかを表した理論だと思ってください。

2つ目が、今までの右肩上がりの経済成長至上主義の図を一旦忘れて、ドーナツの図を覚えてほしいということです。

飴屋 これからの経済はドーナツで考えていきます!ありがとうございました。