
「SDGsはうさんくさい」「どうせビジネスでしょ?」といった言論を見かける。
しかし、断言するがSDGsは私たち人類が取り組むべき目標である。
今回は、実際にリサイクルの現場に携わる新井遼一が考える「SDGs」をやるべき理由を語らせて頂く。
新井遼一がSDGsを考え始めたキッカケ

飴屋 新井さんはSDGsのゴール12(つくる責任、つかう責任)に取り組まれていますが、なぜゴール12なんですか?
新井 これは私がリサイクル業界で働いていて、日々、現場を目にしているのが大きいですね。

私もこの業界に入る前までは環境のことなんて何も考えてなかったし、何とかなっているんだろうと思っていました。
しかし、実際にこの仕事に就いて廃棄物の現場を毎日、目にしていると、こんなに日々たくさんのモノが無駄に廃棄されてるんだ、焼却されてるんだってリアルに感じるようになりました。
例えば何かのイベントでツアーグッズみたいなモノを作って、「トラック1台分用意したけどイベントが中止になってしまい、グッズを全部そのまま廃棄します」みたいなことがあるんです。
毎日、何の役にも立たずにそのまま焼却されていくモノを目にしていると、自分ごととして「なんともなってない」って心から思ったんです。

飴屋 「なんとかなっている」と思っていたら、「なんともなっていなかった」ってことですね。
新井 そうなんです。ごみ収集箱に入れてしまえば、いつの間にかごみがなくなっている。
普通に生活していると、たくさんの無駄が出ていることが見えないようになっていることが、恐ろしいことだなと思いました。
清潔で便利なんですが、その一方で、見えないところでたくさんの無駄が出ている。
これは誰も責任を持って作ってないし、責任を持って使ってないんじゃないかと思い、危機感を覚えたことで、これはコミットする価値があるなと思いました。
じゃあ、まず何をすればいいの?
飴屋 その現状ってどうやって解決したらいいんですか?
新井 大きな視点でいえば、大量生産・大量消費っていう文化を変えていく必要があると思っています。
ただ、これだと課題が漠然としすぎていて「何をすればいいの?」ってなりますよね。
だから最初はまず知ってもらうことだと思います。
さっき言ったようなごみ収集箱に入れるといつのまにかごみがなくなっている、でもその先には人が動いていて、たくさんの無駄を廃棄している現実があるということを知ってもらうことですね。
飴屋 「環境と人」はそういった情報を発信していますね!
新井 そうですね。多くの人に知ってもらいたくて始めました。

もう一つは、作る側の人たちにも、やっぱり廃棄のことまで考えてもらいたい。
みんな悪意をもって廃棄を促しているわけではないと思います。
大量生産や大量消費も、例えば「一人ひとりのお客様のために」「少しでも安くいいモノを!」って精神からきているとは思うんですよね。
私もそうでしたが、実際に廃棄処理の現場から伝えていかないと、つくっている人たちも裏でどうなっているか気づけないし、良いことだと思って作っているわけですから、たくさんの無駄が出ている問題がわからない。
たくさんの無駄が出ていることを製造側の人たちにも伝えていくことで、無駄が出ない作り方を考えてもらうキッカケになればいいなと思っています。
飴屋 気づいた人が伝えていく、それをキッカケに色んな人がこの問題に向き合っていければいいですよね。
「みなさんガマンしましょう」という誤解
飴屋 やっぱり我々消費者がガマンしていくべきって感じですかね?

新井 そう言われがちですが、地球のためにって考えると、究極的には「人類はいなくなった方がいい」みたいな話になるじゃないですか?
それは違うと思っていて、根っこには人類の持続的な幸福、つまりWell-beingがあるべきだと思っています。
幸福を持続していくために、様々な社会課題が今持ち上がっていますが、それに対してあなたはどう関わりますか?
それを問いかけているのがSDGsなんじゃないかと思っています。
なので「SDGsのために」とか、「環境のために」ではなくて、自分たちの幸せが気候変動やいろいろな社会課題によって脅かされているんだ、だからそれを解決するためにアクションをする。こういった考え方でいいと思います。
飴屋 自分の幸せのためにSDGsに取り組むなら、わかりやすいですね!
SDGs達成の障壁となるものは?
飴屋 SDGsを実現していく上で、課題になってくるものってなんですか?
新井 効果を誇張したり、うわべだけSDGsを掲げたり、実際やっていないのにSDGsやっているように見せかけたりする「SDGsウオッシュ」というのが課題だと思います。

環境にいいことやエコな活動を偽ったり、うわべだけでごまかす活動のことをグリーンウオッシュっていうんですが、これを転じてSDGsウオッシュって言うようになりました。
例えばですが、石油会社が業務とは全く関係がないのにホームページ上でやたらと森の写真とかを前面に出して表面的なイメージを良くしようとしたり、
「環境にいい商品です!エコなんです!」みたいに効果を誇張したり、また悪質な場合だと嘘をついてる場合もあるんです。
こういった誤解を招く行為や偽装行為が増えてくると、我々としては何が正しいのかわからなくなってしまいますよね。
EU等ではそういったグリーンウォッシュに対する取り締まりや規制をするべきだって議論がされていて、どんどん厳しくなっています。
飴屋 日本にはないんですか?
新井 日本でもこれから議論されると思います。
ただその前に、今の消費者や特に若い世代は、真剣にSDGsのことを考えている人が多いと思うし、表面だけのポーズみたいなものは見破られて支持されない、むしろ、逆にネガティブなイメージになってしまうと思いますね。
飴屋 いい傾向ですね!「環境と人」からどんどん発信していきましょう!
新井 そうですね!我々が発信することで、SDGsウォッシュも減っていくといいですね。
飴屋 ありがとうございました。