

ファストファッションをはじめ、ファッション産業の今の在り方がSDGsの観点から非難されている事を耳にした方は多いだろう。
具体的に何が問題視されているのか?
今回は、ファッション産業がはらむ問題について、大きく4つに分けてわかりやすく解説していく。
ファッションは環境に悪いって本当?
飴屋 ファッション業界って環境を汚しているんですか?
新井 汚しています。これは世界的な問題になっています。
日本でもサステナブルファッションという特設サイトがあるので、そこを見てもらえればわかりますが、非常に大きな問題になっています。

大きく分けて四つの問題があると思っていて、第一に水の問題ですね。
服を作るには大量の水が必要で、その水をすごく汚しています。
コットン製のTシャツを1枚作るのに2700L、ジーンズを1本作るのに7500Lの水が必要です。
これはコットンの原料の綿花を育てる際に、普通の農作物より多くの水を必要とするからです。
特に服の場合は、食べ物と違い人間の口に入らないので、たくさんの農薬・殺虫剤を使います。

飴屋 それは環境に悪いですよね。
新井 そうなんです。世界中の殺虫剤使用量の15%は綿花栽培に使われていると言われるくらいで、殺虫剤が混ざった水が生態系の中に流れ出してしまう問題があります。
あとは、布を着色や脱色する際にやっぱりまた薬品を使う。
そういった時もきれいな水を汚したりしてます。
もちろん排水基準をしっかり設けて、綺麗な水にしてから戻している企業もたくさんあります。
しかし世界的に見たときに、技術が足りていないところはそのまま生態系に垂れ流しているという問題点がありますね。
飴屋 水だけで既にだいぶ大きな問題ですね。
ファッション産業の問題2&3:化繊のリサイクル
飴屋 綿を使うのをやめてしまえばいいんじゃないですか?
新井 そうですね。ただここで第二の問題として化学繊維の問題があります。
綿以外の代表的な製品にポリエステルやナイロンがありますが、これはプラスチックの一種で化石燃料から作っている素材です。
汗をよく吸う高機能なスポーツウェアなどでよく使われますが、そもそも日本に流通する服の7割が焼却に回っている事実があり、つまりプラスチックを燃やしてしまっているんですね。
これは脱炭素的な意味で、CO2を出しているので問題だということになります。
飴屋 綿は水質汚染、ポリエステルなどの科学繊維はCO2排出の問題があるということですね。
新井 はい。そもそも大量に燃やされているのが問題なので、長く着られればいいんですが、ここで第三の問題、リサイクルの問題が出てきます。
例えば、綿100%とかポリエステル100%の服だけ集めれば、これをまた服にしたり、別の製品にすることは技術的に可能なんです。
ただ、多くの服が綿50%・ポリエステル50%の混紡であったり、30%ナイロンが含まれていて手触りが良くなってます。
そういったものを集めてもリサイクルはできないんです。
飴屋 混ざったものはもうダメなんですね。
新井 なので焼却するしかない。
そういった複合素材がどんどん増えてきているんです。
紙とか鉄でも複合素材のリサイクル問題はありますが、製紙業や鉄鋼業に比べ服の再生インフラはまだまだ規模が小さく、整っていない現状があります。

昔から服のリサイクルや回収は行ってはいたのですが、ここ20年ぐらいでファストファッションの台頭による影響で、服の生産量が非常に増えたんですね。
2000年から2014年で、世界の服の生産量は倍になっている。そんな話があるぐらい急激に増えたので、服の処理先のインフラがまだまだ整っていないんです。
飴屋 確かに、いきなり増えたら追いつかないですね。
ファッション産業の問題4:人権の問題
飴屋 最後、四つ目の問題って何ですか?
新井 人権の問題です。
服の産業は物流の流れが非常に長いんです。
綿花を栽培する農家がいて、綿花を使って糸を引く会社、その糸を使って布を織る会社、その布を着色する会社があって、更にそれを縫製して、やっと製品になります。
飴屋 長いですね!
新井 店に並ぶまでにこれだけの長いサプライチェーンができているんですが、最終的な販売価格が非常に下がっています。
さきほど言った生産量の増加というのは、服が安価になって買いやすくなったから、更にどんどん作ってどんどん売るという大量生産・大量消費の産業になってしまったんですね。
ユニクロとかZARAとかH&Mなどが、世界的にすごく普及してきたのがその時期なんですが、最終価格が低いのに、それだけ多くの人が関わっているっていうことは、どこかに無理をさせているということが考えられますよね。
飴屋 なるほど。
新井 代表的な事件としてバングラデシュのラナプラザ崩落事故があります。

ファストファッションのための縫製工程を受注した人たちが、ビルにすし詰めにされ、ひたすらに縫製作業をしていたんですね。
そのビルに人が入りすぎてしまい、最終的にはビルが崩れ多くの人が亡くなったという事件です。
先述した構造的な問題が浮き彫りになった象徴的な事件と言えます。
もちろん雇用をそこに創っているメリットもあります。
ただ、あまりにそれが行き過ぎてしまい、崩落事件になってしまいました。
また、最終的な価格が安いために下請けの押し付け問題のような面があって、人権問題として非常に大きな問題になっています。
飴屋 安く洋服がいっぱい買えて、いい時代だなって思ってましたけど、その裏で誰かが無理をさせられているんですね。
新井 もちろん、服に限ったことではないですけどね。
飴屋 そういったことをまず知らないといけないですね。
新井 でもそれが長いサプライチェーンの中で、非常に見えにくくなっているのが問題なんです。
結局 どう解決していけばいい?
飴屋 すごいいっぱい問題がありますが、どうやって解決していけばいいですか?
新井 やっぱり大量生産・大量消費のもとに成り立っているので、ここをまず何とかしないといけない。
例えば、気に入った服を長く着るのが基本であって、そのために服のリペア技術を積極的に取り入れる。
それと古着の国内流通で無駄を省いていくことも大事です。
要らなくなった服の出し先として、メルカリやジモティーといったツールをうまく使っていただければと思っています。
あと、これは生産側の問題ではあるんですがハイブランド企業は在庫品を中古に流すのを嫌がるんですよね。
飴屋 価値が下がってしまいますよね。
新井 余った在庫を燃やしていたなんて事例もあります。そういったことは結構起きていて、産廃として受けているのを見てきました。

解決策の一つとして、Renameっていうブランドがあります。
有名ブランドの余った在庫品のタグをうまく付け替えることで、そのブランドの痕跡をうまく消し、二次流通をさせています。
そのタグの付け替えという最小限の作業で、市場を切り開くというアイディアも環境と人の記事になってますのでぜひご覧いただければと思います。

飴屋 なるほど新しいですね!ありがとうございました。