チャレンジする価値あり!おいしくて地球に優しい注目の『次世代フード』

「フードテック」「代替肉」「ミートフリーマンデー」…メディアなどでさかんに取り上げられているこれらの言葉、一度は耳にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。「肉を食べることがそんなにいけないことなの?」と疑問に思われるかもしれませんが、食用肉を生み出す畜産業が抱える問題は実はとても深刻です。

世界の食肉消費量は年々増加し続けていますが、食肉用の家畜を育てるためには大量の穀物や水が必要なことに加え、飼育中に発生する温室効果ガスは地球全体で発生する温室効果ガスの14~18%を占めています。このような問題の解決策の一つとして、代替肉を広める動きが広まっているのです。

そこでこの記事では、今注目されている植物性タンパク質「ソイミート」と栄養価が高いことで知られる「昆虫食」についてご紹介します。

牛肉1kgに必要な穀物は11~13kg、水20,000ℓ

ミートフリーマンデー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?ミートフリーマンデーとは、地球の環境を守るために、週に一度月曜だけ肉を食べるのをやめようという取り組みで、欧米を中心に広まりつつあります。なぜこのような動きが起こっているのかというと、畜産が地球に与える環境被害が大きいという事実があるからです。

畜産業から排出される温室効果ガスの問題や、食用肉を育てるために必要な水や穀物などの資源といった理由から、代替肉を広める動きが広がっているのです。

畜産業と温室効果ガスの関係

世界中の畜産業から出る温室効果ガスの量は、世界中の運送関連から発生する温室効果ガスの総量を超えていると言われています。2020年11月の米国科学サイエンスに掲載された研究論文は、食糧システムからの温室効果ガス排出について何も対策を取らずに放置しておけば、それだけで、2050年までに気温上昇1.5℃を超えてしまうと発表しています。

ハンバーガー1個に1000リットルの水!?

バーチャルウォーターとは、食料を輸入している国( 消費国) において、もしその輸入食料を生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定したもの。例えば1kgのトウモロコシを生産するには、灌漑用水として1,800リットルの水が必要です。牛はこうした穀物を大量に消費しながら育つため、牛肉1kgを生産するためにはその約20,000 倍もの水が必要。

身近なもので言えば、牛丼1杯に2,000リットル、ハンバーガー1個には1,000リットルの水が消費されているという計算になります。

ちなみに、日々の食生活においてどのくらいの水量が必要なのかは、こちらから計算することができます。

水質汚染、森林伐採、人獣共通感染症…

工業型の畜産は、温室効果ガスや水・穀物などの資源問題に加え、水質汚染、森林伐採、人獣共通感染症などの問題も抱えています。

【水質汚染】

人間の食糧のために飼育されている動物は、人口の何倍もの排泄物を生み出します。米国環境保護庁(EPA)によると、米国の工場畜産場の動物は毎年約5億トンの糞尿を排泄しており、ほとんどの場合「ラグーン」と呼ばれるため池に保管されるか畑に噴霧されます。また工業型畜産では、動物に大量の抗生物質やホルモン剤などを投与しており、薬で汚染された動物の大量の糞尿が川や海を汚染していることも問題。家畜の飼料のために栽培された作物もまた、大量の化学肥料や農薬などを使って生産されたものが多く、それらが川に流れ込んで水質を汚染しています。

【森林伐採】

近年失われた熱帯雨林の多くは、牛の放牧や家畜の飼料などのためのプランテーションによるものだと言われています。気候変動を止めるためにも、これ以上の伐採は食い止めなければなりません。

【人獣共通感染症】

アメリカ疾病管理予防センター(CDC)によると、新しく発生する感染症の3/4は動物からきているのだそう。また、世界保健機関(WHO)、国連食糧農業機関(FAO)、国際獣疫事務局(OIE)は、動物性たんぱく質の需要増加はパンデミックを増加させると警告しています。

気軽においしく始められるソイミートとは

代替肉として今注目を集めているソイミートという食材をご存じでしょうか?

ソイミートとは、大豆からタンパク質を抽出し、繊維状にして肉に似た食感に仕上げたもの。大豆100gと牛肉100gを比較すると、タンパク質は約1.1~1.5倍、生産時に必要な水の量や約1/8なので、環境に優しい食材であると言えます。

さらに、ソイミートは乾燥された常態で販売されているので常温保存できるうえ賞味期限が長く、水があれば調理が可能なためアウトドアや災害時の栄養価の高い保存食としても活用可能。そういった意味でも、これからの時代ぜひ取り入れたい優秀食材なのです。

ソイミートは多様な可能性を持つ優秀食材

ソイミートは代替肉として認識されていますが、タンパク質以外にも食物繊維や必須アミノ酸も豊富。その他、カリウム、鉄分、銅などのミネラルや糖質の代謝を助けるビタミンB1が多いことも特徴です。さらに高タンパクで低カロリー、脂質も牛肉の約1/40以下と驚くほど低いので、ダイエット中の方や体重制限などを行うアスリートの方にもおすすめの食材。

ソイミートをおいしく食べる方法

(出典:LOVEG

ソイミートは乾燥した状態で売られており、おいしく食べるためには調理する前の“戻し”の作業が重要です。まずたっぷりのお湯で5~10分茹でて、ざるに上げて水洗い。水が濁らなくなるまでよく洗うと、独特の大豆臭さが軽減されておいしく食べることができます。

コクを出すコツは、醤油や味噌などの発酵食品を合わせ、気持ちしっかりめの味付けに仕上げること。スパイスを効かせた料理にも好相性です。

※戻し方についてはメーカーによって多少異なる場合があるので、パッケージの戻し方を参考にしてください。

実は筆者も食べたことがあるのですが、食感が楽しく、さまざまな料理にアレンジできるのであれこれ利用法を考えるのも楽しいと感じました。最近はおいしさにこだわった商品も多く、特にミンチタイプなどは言われなければ大豆だとわからない人もいるのでは?と思うほど。ストイックなベジフードというよりも、美味しく食べられるナチュラルフードといった感覚で、どんな方にも気軽に取り入れることができるのではないでしょうか。

まずは唐揚げからチャレンジ

初心者にまず試してほしいのが、油でカラリと揚げた唐揚げ。揚げることでコクが増し、食べ応えもアップします。ソイミートを戻す工程以外は通常の唐揚げと同じ作り方でできますが、ショウガやニンニクを効かせて下味をしっかりめに付けるとより美味しく食べられます。下味を付けた状態でおよそ一週間冷蔵保存可能。

昆虫は貴重なタンパク源

次にご紹介するのは昆虫食。近年世界的に昆虫食が注目されるきっかけとなったのが、2013年に国連食糧農業機関(FAO)が発表した『食品及び飼料における昆虫類の役割に注目した報告書』です。この報告書によると、昆虫類の多くはタンパク質及び良質の脂肪を多く含み、カルシウム、鉄分及び亜鉛の量が豊富なのだそう。人口増加によるタンパク質不足が叫ばれる中、食糧危機の解決のため、栄養価の高い昆虫類の活用を推奨するという内容です。

昆虫は牛などの家畜よりも飼料が少なくて済み、温室効果ガスの排出量削減にも繫がります。また、収集や飼育の産業化によって新たな雇用や収入を生むことができるという側面も。

特にコオロギが注目されている理由

昆虫の中でも特に注目されているのがコオロギです。実際に食材として扱う料理店のシェフによると、コオロギは雑食なので味が奥深く、餌や育て方によって風味が変わるので食材としてのポテンシャルが高いとのこと。また、クセも少ないのでオールマイティーに活かすことができる扱いやすさも注目されるポイントです。

環境への負荷が少なく育てやすいので、コオロギの養殖ファームは国内でも増加傾向にあります。ちなみに、コオロギの体重当たりの温室効果ガス排出量は牛の約0.035%、1kgのタンパク質を生産するために必要な飼料は牛の約0.7%。

コオロギを食べやすい加工品で取り入れる

(出典:株式会社グリラス

昆虫食というと尻込みしてしまう方もいるかもしれませんが、身近な加工品で体験してみると、意外なおいしさに驚くはず。

例えば、コオロギ研究で最前線を走る徳島大学発のベンチャー「株式会社グリラス」では、クッキーやカレーなど気軽に取り入れることができる商品を取り扱っています。まずは食べてみることで、昆虫食について考えるきっかけを作るのも一つの方法です。

もちろん、すべてのタンパク質を昆虫に置き換えるというのは現実的ではないでしょう。ですが、私たちが今積極的に体験することが、生産体制を整えたり昆虫食への理解を深めることに繫がります。足りないものを補う一つの選択肢としての昆虫食は、きっと未来にとって有効な取り組みになることは間違いありません。

昆虫食・株式会社グリラスについてはこちらの記事でも詳しくご覧いただけます。

未来の食は、昆虫が支えてくれるかもしれない

実際に買えるおすすめ次世代フード

実際に買えるおすすめ次世代フード

素材選びや加工技術によっておいしさも進化した代替フード。注目株をいくつかご紹介します。

こおろぎ醤油

1本の瓶にコオロギ約482匹を用いたコオロギ醤油。下処理を施したコオロギに、桝塚味噌(野田味噌商店)が造る愛知県産米を使った米麹と食塩水を合わせ、蔵の木桶の中で半年以上かけて発酵・熟成。しっかりとした旨味とコオロギ由来の香りを持ち、クセは少なく、様々な料理に使うことができます。

ANTCICADA

北海道大豆ミート

遺伝子組み換えをしていない北海道産大豆を100%使用したソイミート。大豆本来の旨味や甘みがしっかりと感じられます。ミンチタイプはカレーやミートソース、麻婆豆腐などにおすすめ。

ダイホク

味付けそいから

トースターで焼くだけの下味付きソイミート唐揚げ。話題の冷麺店がサイドメニューとして人気だった唐揚げを商品化したものなので、そのおいしさはお墨付きです。素材はすべて国産で、タマネギ、人参、シイタケ、昆布などをじっくり煮込んだスープにソイミートを浸け込み、じゃが芋デンプンをからめて素揚げ。トースターで焼くだけで簡単に食べられるのも嬉しいポイントです。

冷麺ダイニングつるしこ

ベジツナ

プラントベースフードを長年製造販売している老舗が作った植物性ツナ。大豆の食物繊維を生かしながら加工し、ツナのような食感に仕上げています。大豆の風味があり薄味なので、しっかりめの味付けが合います。ヴィーガンマヨネーズと合わせてツナマヨにするのもおすすめ。

三育フーズ

今日何を食べるかの選択が未来を変える

食に関する問題はあまりに大きく、自分一人が次世代フードを取り入れても何も変わらないと思われるかもしれませんが、そのマイクロアクションこそが世界を変える力を持っています。一つの食材を取り入れることでその周辺の情報が集まって、環境問題を考えることが日常化するかもしれません。

食べるものを選択して購入することは投票と同じ。

今日何を食べるかが未来を変える。

そんな意識を持って食卓にのぼる物を選択することが、未来の地球に向けて今私たちができるアクションなのではないでしょうか。