ごみとお金の話〜家庭ごみの回収は無料なのか?~


日常でごみ捨てにお金がかかっているという意識は薄いかもしれませんが、どんな形で回収・焼却という経済が回っているのでしょうか。地域により指定ごみ袋か否かは違いますが、その違いとはなんでしょうか。今回は、身近すぎて意識しづらい「ごみとお金」について解説します。

1.家庭ごみの回収は無料か

飴屋 今回は、なぜ家庭ごみは無料で回収されてるのかをテーマにお話を伺っていきたいと思います。

新井 今回のテーマでは3つのポイントがあります。

まず1つは「家庭ごみはそもそも無料なのか」、2つ目が「ごみの焼却費用は高いのか安いのか?」、そして3つ目は「有料ごみ袋の意味は」です。

飴屋 家庭ごみにお金を支払っている実感はないんですけど、実際はどうなんですか?

新井 税金で運用されているので、実質全員が負担しています。家庭ごみは、自治体が責任を持って処理しているので、住民税でみんなが支払っている感覚ですね。

飴屋 なるほど。では、その集めた税金を誰に支払ってるんですか?

新井 多くの自治体では地域ごとにごみの回収業者さんがいて、そこに委託費用として支払われています。委託を請け負った回収業者さんは、そのごみの回収費用と焼却場に払う費用を含めた形で行政が支払っているという構造です。

飴屋 ごみ焼却にはいくら費用がかかるんでしょうか?

新井 委託された回収業者さんが、焼却場に持ち込んだときに支払う金額があるんですが、大体1kgあたり25~40円くらいですね。

飴屋 ひと袋あたりだと?

新井 生ごみを大体1袋2キロぐらいとすると、1袋50円~80円になりますね。

2.ごみ焼却費用は高い?安い?

飴屋 2つ目のテーマになると思うんですが、それって高いんですか?それとも安いんでしょうか?

新井 微妙な感じですよね。

ただ、委託を請け負っている業者さんは、そのお金で車を買って人を雇って回収をしているわけで、実際はそんなに余裕がない金額感になっています。

そもそも税金なので、委託の金額自体がカツカツな所が多いんです。

あとはやっぱり固定金額で請け負う所が多いのも特徴ですね。例えばコロナ禍で家庭ごみが一時的に増えたりしたことがあったんですけど、そういったときに焼却場に払う費用負担がすごく増えてしまったんです。けれどもそこを加味してもらえないパターンも結構あると言われているんです。

3.有料ごみ袋の意味

飴屋 最後3つ目のテーマなんですけど、有料ごみ袋(指定ごみ袋)を採用する地域が増えているのは、ごみ処理に使えるお金を増やすためだったりするんですか?

新井 そうですね。それももちろんあります。

あとは有料化することで、ごみを減らす効果もあると言われています。やっぱり税金って形で負担しているけれど「いくら出しても値段が変わらない」ので、なかなかお金を払ってごみを出していることを意識しづらいんですよね。でも1枚いくらという話になると、減らそうというインセンティブが働きます。

飴屋 確かにそう考えますね。

新井 有料ごみ袋を導入してる自治体は増えていて、例えば神奈川県藤沢市では、導入後にごみの量が15%~30%減ったっていうデータもあります。

飴屋 結構減りましたね!有料化がそんなに効果あるんだったら、1枚500円とか高値で売り出したら、もっともっと減るんじゃないすか。

新井 それも極論で、そうなると不法投棄がすごい増えると思います。ごみ袋を買うお金が無いからその辺に捨ててしまえと。ですので適正な値段というのは大事ですね。

あとは消費税と一緒で、所得の低い世帯ほど負担が重くなってしまう公平性の問題も出てきます。

飴屋 なかなかそこのバランスも難しいところですね。

新井 2020年の環境省の調査によると、全自治体の65.8%が有料化を導入していると言われています。でも、以前取材で浜松市に行ったときに、駅前でプラカードを立てて有料化反対運動を行っている方がいらっしゃって、やっぱりそういった反対の声も上がっているということを実感しましたね。

あとは日本で一番高いごみ袋が、北海道の「えりも町」にあって1枚220円するんです。

飴屋 結構高いですね。

新井 高いですよね。有料ごみ袋の相場だとリッター1円や、45Lの袋だと45円〜50円くらいなところが多いんですけれども、ただその金額の納得感というのは、やっぱり住んでる人にしかわからないですよね。

指定ごみ袋になった方がいいの?

飴屋 結局のところ、どうするのがベターなんでしょうか?

新井 有料ごみ袋の適正な値段っていうのは難しい判断で、なかなか決められないと思います。でもやっぱり有料化することで、レジ袋有料化と同じように減らそうという意識が芽生えることが非常に重要ですね。

あとは安ければいいっていう考え方はわかるんですけれども、その裏でごみ収集業者などに負担を押し付けてる可能性があるっていうことを頭に入れていただきたいと思います。

飴屋 しっかりとタダじゃないんだと意識することが大切ですね。

新井 これは余談ですけれども、コロナ禍の中でエッセンシャルワーカーが注目されたと思いますが、ごみ収集業者はその中に入っているんです。実際にごみ収集が止まると、日本は1週間で荒廃都市みたいになってしまうんです。

飴屋 大変なことになりますね。

新井 それくらい止まっちゃいけない重要な業者なんですね。

コロナ禍で注目されたときには、ごみ袋に「いつもありがとうございます」みたいに手紙が添えられていたエピソードがあったりとスポットが当たっていたんですが、最近ではそういう話もなかなか聞かなくなってしまいました。でもやっぱり、業者の皆さんへの感謝の気持ちだけは忘れないで頂きたいなと思います。

今回のまとめ

飴屋 今回のまとめをお願いします。

新井 はい。

1つ目は、ごみの処分はお金がかかるので減らした方が経済的ということです。

2つ目は、ごみ袋の有料化を導入する自治体は今後増えてくると思います。けれども安易に否定せず、適正価格があるので、その背景も知ってほしいということです。

飴屋 わかりました。どうもありがとうございます。