虫?植物?タンパク質の代替食品の現状と未来


人口増加や生活水準の向上で世界中の人たちのタンパク質を賄うことが難しいと言われる「タンパク質危機」が迫っている。

また畜産による環境破壊や食肉に対する考え方の多様性から代替食品が考えられ始めた。

今回はタンパク質代替食品の現状と未来を解説する。

代替食品の3つのポイント

飴屋 肉や魚が不足する「タンパク質危機」が迫っているって聞いたんですが、タンパク質の代替食品について教えてください。

新井 今回は3つのポイントで整理していきます。

一つ目はどんな代替食品があるのかについて、二つ目が代替食品の課題について、三つ目が代替食品ってSF的な感じがするけどどうなんですかって話をしていきたいと思います。

肉や魚に代わる代替食品ってどんなもの?

飴屋 タンパク質の代替食品ってどんなものがありますか?

新井 これは3つありまして、「植物性タンパク質」「昆虫食」「未来の代替食品」になります。

最初は植物性タンパク質について話しますが、動物性タンパク質っていうと肉、魚、卵、チーズ、牛乳、乳製品などがあります。そしてこれらの動物性タンパク質のほとんどが植物性タンパク質で代替可能です。

肉食王国みたいなイメージがあるアメリカですが、いろいろな食品会社が植物性の代替食品を開発しています。

大豆肉や豆乳、オーツ麦を使ったオーツミルク、緑豆から作った代替のタマゴなどがあります。

(画像出典:Eat Just)

飴屋 タマゴも作れるんですね!

新井 代替タマゴなんかはメレンゲでお菓子に使われたり、スクランブルエッグもできます。

あとは、ひよこ豆を塩水で洗った後の水をつなぎに使ったヴィーガンチーズみたいなものまであります。

開発はだいぶ進んでいますし、植物性タンパク質は市民権を得てきているといえますね。

昆虫食の現状ってどうなってるの?

飴屋 二つ目の昆虫食についてお願いします。

新井 昆虫食っていうと、昔から日本でもイナゴを佃煮にしたり、中国でも蜂の幼虫を食べたりと、人類の重要なタンパク源であるみたいな説はありました。

今はかなり進んできてて、代表的なのはコオロギですね。

コオロギを粉末状にして形はわからないようにして、何かにまぶして食べたり、クッキーにして普通に美味しいみたいなものが結構増えてきているんです。

あとは養蚕でシルクの糸を作ったときに残る「さなぎ」ですね。

残ったさなぎを粉末状にして、シルクフードと銘うってだしている会社があります。

キッザニアでも昆虫食ということで、粉末にしてまぶしたポップコーンみたいなのを作ることもやっています。

昆虫食もかなり市民権を得てきていると思います。

虫や植物だけじゃない!未来の代替食品

飴屋 三つ目の未来の代替食について教えてください。

新井 まずは培養肉です。次に電気、空気、水で作るタンパク質豊富な粉末みたいのをやってる会社があります。

培養肉ですが、例えば牛とかの可食部の細胞だけを取ってきて、それを培養して食べれるようにします。

研究がいろんなところで進んでいて、実用化には至ってないんですが、もうすぐできるんじゃないかと言われています。魚も同じように研究されてますね。

飴屋 もう一つの「電気、空気、水」で作る代替食品ってなんですか?

新井 これは太陽光で発電した電気で、水とバクテリアを反応させて作ってしまう未来の食品ですね。

そんなことが可能なのかって思うんですけど、これも実用化間近というふうに聞いています。

本当に普及するの?いまの課題と未来予想

飴屋 代替食品がいろいろあるのはわかったんですが、課題とかって何かありますか。

新井 まず植物性タンパク質ですが、実は化学調味料や添加物がかなり入ってるものが多いみたいなんです。

もう一つは食品としてクオリティがまだ低い商品例えば大豆肉ですが、薄味だとちょっと違和感があるのでソースをたくさん付けて、ジャンクな味付けになりがちだったりとかですね。

環境にいい食品だから安心して食べていても、糖尿病になってしまうこともあるわけです。

環境にいい食品なのか、健康にいい食品なのか、ちゃんと分けて考えた方がいいってことです。

飴屋 昆虫食の課題は何でしょうか?

新井 昆虫食の課題はまず一つは大量に飼育する必要がありますが、仮に工場から昆虫が逃げ出したときに、その繁殖力で広がってバッタの大群が穀物を食い荒らす蝗害みたいになったり、そこまでいかなくても公衆衛生上のリスクがあります。

次に代替食品の味は虫が食べている餌によってかなり変わるらしいんですよ。

その餌にこだわりだすと、タンパク質の変換効率が鶏肉よりもまだ良くないらしくて、その辺のバランスを考えていかなければならないみたいですね。

あとはやっぱり、ゲテモノのイメージがあるじゃないですか。

虫をパクッと食べるのってやっぱり抵抗がある人が多いので、いくら粉末にしても、そこのハードルが大きいと昆虫食を開発されてる会社さんはおっしゃってましたね。

飴屋 たしかに虫を食べていると思うと少し抵抗感がありますね。

最後に未来の代替食品の課題は何でしょうか?

新井 これは何よりも実用化がまだされてないことですね。コストや安全性において立証されてないことです。

未来の食は、昆虫が支えてくれるかもしれない

代替食品はSFの産物か?

飴屋 代替食品ってSFな感じがしませんか?

新井 そういうイメージがありますね。荒廃した未来で缶詰入りの味のない栄養だけとれるものを食べてる映画のシーンとかありますよね。

ですが、実際はもう少しバラエティー豊かになると思っていて、いろんな会社からどんどん開発がされています。

「ひよこ豆を塩水で洗っていたら、その塩水を使ってチーズができるかもしれない」そういう発見の連続があるので、これからはもっと増えていくと思うんですよね。

それがコスト的にも安くなれば庶民の味方みたいな感じで自然と切り替わっていくように思います。

だから過度に考えすぎて、暗いSFの感じっていうよりかは普通に美味しくて栄養も取れて健康になって…みたいなもの、美味しくて栄養のある新しい選択肢として広まる未来があると思っています。

飴屋 すごく楽しみになってきました。

今回のまとめ

飴屋 今回のまとめをお願いします。

新井 まず一つ目は、代替食品の3つのカテゴリーとして植物性タンパク質、昆虫食、未来の代替食品があるということ。

二つ目が、まだまだ課題ありますというところ。

三つ目は、課題があるにせよ、幸せに美味しく食べられる新しい選択肢になって欲しいよねっていうことですね。

飴屋 健康的で美味しい代替食品が増えるといいですね!ありがとうございました。


■動画撮影にあたり参考にした取材先

オオニシタクヤ
昭和女子大学環境デザイン学部・准教授

堀晴菜
昭和女子大学国際文化研究所リサーチアシスタント