【石油/石炭/天然ガス】化石燃料って、そもそも何ですか?【脱炭素】


脱炭素に向けて政治・社会が進んでいくなか、槍玉に挙がる化石燃料だが、そもそも石油・石炭・天然ガスといった化石燃料の正体はなんなのか。

今回は化石燃料の基礎から化石燃料の問題、その問題との向き合い方まで論じていきたい。

化石燃料とは?まずは石炭のお話

飴屋 化石燃料についてお伺いできますか?

新井 化石燃料は大昔の植物や動物の死骸が長い年月の間、地中に凝縮された物です。

動植物の死骸が堆積されて、地層とかの間にあるんですが、これを掘り出したものが化石燃料ですね。

大きく分類すると石炭、石油、天然ガスの3つで、石炭が固形のもので、石油が液体状のもので、天然ガスが気体状のものなんですが、元々は一緒のものです。

飴屋 同じものが固形になったり、液体になったりしてるんですね。

1つずつ伺っていきますが、まず石炭はどういう使われ方をしているんですか。

新井 石炭は炭鉱や山から掘り出す炭みたいなもので、主に石炭火力発電用途ですね。

ほかには鉄鋼業や製紙業、セメントなどを作るときにボイラーで燃やして使われたりしています。

日本は化石燃料のほとんどを輸入に頼っていて、石炭の7割ぐらいはオーストラリアから輸入していると言われています。

飴屋 日本で石炭は掘ってないんですか?

新井 日本ではほぼ採掘できないですね。

石油のはじまり ~ドレークさんの話~

飴屋 次は石油についてお願いします。

新井 石油はよく知られている通り、ガソリンや灯油、プラスチックを作るナフサなど、いろんな用途に使われてます。

昔から自然に石油が噴出しているところがあったのですが、当時は傷口に塗ったりしてたみたいなんですよ。

飴屋 石油を?

新井 薬品みたいな使い方をしてたみたいです。

石油の採掘は19世紀の末ごろにアメリカのエドウィン・ドレークが堀り当てたのが始まりです。

石油は暖房とか灯の燃料になる灯油として使えることは当時から分かっていたので、ドレークさんは「絶対ここに埋まってるハズだ!」と世界中からお金を集めて掘ったんですが、なかなか石油が出てこなかった。

なかなか出ないので投資家が離れてしまったんですが、それでも個人的に借金したり知人からお金を集めて、諦めずに掘り続けてやっと掘り当てました。

飴屋 それが始まりだったんですね!

新井 それからはオイルラッシュが始まって、掘る人がどんどん増え始めます。

ただ、その当時の石油は灯油としてしか使い道がなかったので、掘り出す量の方が多くなってしまい、価格がめちゃくちゃ下がっちゃいました。

そこでドレークさんの運も尽きて破産してしまうんですが、これじゃあんまりだっていうことで、晩年は寄付というか施しみたいな形で年金暮らしをしたっていう、かわいそうな経緯もありました。

飴屋 今は石油って幅広く使われていますが、そんな歴史があったんですね。

石油の産出は主にどこが多いんですか?

新井 石油は中東とかアメリカに偏って埋蔵されてます。日本にはほとんどないですね。

輸入もほとんど中東に偏っています。

意外と知らない天然ガスの用途と利点

飴屋 最後に、天然ガスについて教えてください。

新井 天然ガスも石油と同じように地下に埋まっているんですが、マグマみたいにまとまった状態ではなくて、岩盤の隙間にちょっとずつあるものを集めて吸い出してるんです。

これは天然ガスも石油も同じで、吸い上げるのが気体か液体かの違いですね。

天然ガスは石油よりも世界中に広く分布しているので、日本もアジアを中心に色々なところから輸入をしています。

用途としては石炭と同じく7割が発電で、3割が都市ガスとしてお湯を沸かしたり、熱利用されています。

飴屋 身近に使われてるんですね。よく天然ガスはクリーンエネルギーみたいに言われてるのを聞きますが?

新井 天然ガスは石油や石炭と比較すると、燃やしたときのCO2の排出量が少ないんです。

あと大気汚染を引き起こすような有毒ガスみたいなのが、天然ガスは少ないんですね。

飴屋 たしかに、石炭は黒い煙がモクモクと出てるイメージがありますが、天然ガスは黒い煙は出なそうですね?

新井 そうですね。出ることは出るんですけど、煙が少なかったり、CO2も出るには出るんですが、石油とか石炭に比べて少ないんですよね。

だから、化石燃料の中だったら一番クリーンといえます。

ちなみに天然ガスとプロパンガスの違いってわかります?

飴屋 値段が違う気がします。

新井 たしかにそうなんですが、その理由として作られ方に違いがあります。

地層の間にあるガス田から取り出したものが天然ガスで、英語だとNaturalGASといいます。

一方でプロパンガスは石油をガソリンに精製するときに出るガスのことを言います。プロパンガスも燃料用なんですが、値段の違いは作られ方にありますね。

人間の価値観はエネルギーに左右される?

新井 余談ですが、化石燃料が使われるまで人類が何を燃料としてたかわかります?

飴屋 その辺の枝とか葉っぱとかですかね?

新井 そうですね、基本的には木を切って燃やしてました。人類はずっと木を燃やす、つまり炭素をエネルギーとして使用していました。

なので木を切り尽くすまでは人類って結構栄えてたんですよね。メソポタミア文明やインダス文明とか古代は栄えていたって聞いたことないですか?

飴屋 古代は豊かで科学とか発展したって聞いたことはあります。

新井 そうなんです、豊かになってどんどん伐採して、森林を全部切り尽くしちゃった。森林が不足して資源が枯渇してしまい、化石燃料もなかったので、衰退したとも言われています。(※諸説あり)

飴屋 なるほど、エネルギー問題が衰退の一因だったんですね。

新井 そこから続く中世っていうのは結構貧しい時代で、飢饉とか疫病みたいなのが流行って、資源がないので暖も取れないみたいな時代になっていました。

その反動なのか、中世は宗教とか、キリスト教なんかがすごく広まった時期ですよね。

飴屋 資源がないから宗教に頼るしかないって感じですかね?

新井 そうですね、貧しくても正しく生きようみたいな精神論が発展していったのが、中世の時代です。

中世が終わって産業革命のころになると化石燃料が発見されて、エネルギー資源がまた豊富に使えるようになったので、古代文明のように科学が盛り返してきました。

飴屋 エネルギー不足の解決が豊かな社会を作ると?

新井 まさに現代も物質的に豊かな社会になりました。

ちなみに今も価値観の転換が少し起きているとも言われています。

脱炭素や気候変動って「資源をそこまで使わないようにしよう」みたいな考え方ですよね。

今は個人の幸せとか自己実現、ネット上のコミュニケーションみたいな内面にどんどんフォーカスしているのを見ると、過去の歴史にあったような人類の価値観の転換が起こっているのかなって思ってしまいます。

飴屋 なるほど。おもしろいですね!

なぜいま化石燃料は問題視されているの?

飴屋 現代の豊かな社会をもたらしたのも化石燃料だと思うんですが、何が問題でいまこんなに騒がれているんですか?

新井 気候変動を引き起こす地球温暖化は、化石燃料を燃やすことで大気中にCO2が増えていることが原因と言われていて、脱炭素、つまり脱化石燃料が叫ばれています。

どういう事かというと、まず人類が化石燃料を発見するまでは生えている樹木を切って燃やしてエネルギーにしていましたよね。

木というのは燃やせばCO2がでますが、そもそも大気中のCO2を吸って育ったものです。

つまり燃やした分と吸った分でプラスマイナスゼロになる、これが「カーボンニュートラル」です。

一方で、化石燃料は太古の昔に存在した森林が吸収したCO2などが地下で固定化たものです。

それをどんどん掘り起こして、燃やして大気中に拡散しているんですね。

飴屋 大気中のCO2が増えちゃう?

新井 そうなんです、それが地球温暖化の原因になっていると言われていて、問題なんですね。

「脱化石燃料」は実現可能なの?

飴屋 化石燃料は減らすべきですよね?

新井 その通りで、省エネと代替エネルギーの開発が行われています。

省エネは「石炭火力発電の効率を上げていこう」とか「なるべく少ない量でたくさんエネルギーを得よう」という試みですね。

加えて、化石燃料を燃やしたときに出たCO2をつかまえて、地下に貯蔵する技術の開発とかも進められています。

石油であれば、ガソリンと電気を使うハイブリッド車でガソリンの使用量を減らして燃費を上げるみたいなのが省エネの考え方ですね。

飴屋 もう一つの代替エネルギーっていうのは何ですか?

新井 再生可能エネルギーといわれる太陽光発電や風力発電を増やしていくことで、化石燃料を燃やす以外の発電エネルギーを増やして、化石燃料の使用を減らしていく試みですね。

飴屋 ハイブリット車とか増えていますし、化石燃料使用をゼロにすることも可能ですか?

新井 ゼロにするのはなかなか難しいんじゃないかと思っています。というのも、ひとまず2050年にカーボンニュートラルを実現するっていう大目標が立てられました。

つまり、2050年までにCO2の排出量と吸収量をプラマイゼロにしようってことです。

ですが、2050年の時点で全部が電気自動車になっていたり、全部が再生可能エネルギーになっているかっていうと、なかなか現実的じゃないですよね。

飴屋 あと30年もないですよね。

新井 なので、省エネや代替エネルギーを推進して化石燃料を減らしていくんですが、使用量をゼロにするんじゃなくてうまく共存していこうよっていうのが今の方向性ですね。

脱炭素、脱化石燃料という考え方が広まったことで、全くゼロにしようとか、化石燃料がすべての悪者みたいな捉え方をされることもあるんですが、

そうではなく、もっと上手に化石燃料を使っていくのが良いのではないかと思ってます。

飴屋 ありがとうございました。