静脈産業までを考えないとモノが売れない時代がくる?


日本において、廃棄物やごみの再生業者の名前を知る人は多くありません。しかし、海外には兆円企業が存在し、静脈産業のエキスパートとして、企業に対して一貫した環境対策のコーディネートをすることができます。今回は、海外の例をもとに、日本企業の環境対策が非効率な理由について紹介します。

海外の静脈産業はメジャー

飴屋 日本は静脈産業にスポットが当たってないって聞いたんですが、海外ではどうなっているんでしょうか?

新井 日本とは全然違って進んでいます。

例えばアメリカのウェイスト・マネジメントや、フランスのヴェオリアといった、時価総額1兆円をこえる大コングロマリット企業があるんですが、3R(リデュース・リユース・リサイクル)に一貫して対応できるんですよね。

飴屋 3R全てですか?

新井 そうです。

だから、「まずはリユース部門に相談しよう」とか、「そもそもリデュース部門にこういう提案をしたらどうですか」みたいな形で、静脈産業側から一貫して提案が出来る体制が整っていて「何かあったらウェイスト・マネジメント社に相談しよう」と言える状況になっています。

静脈サイドの巨大企業が日本にないワケ

飴屋 すごいですね。なぜ日本ではそれが出来ないんでしょうか?

新井 日本の場合は、地域ごとに産業廃棄物処理業者やリサイクル業者が分散していて、規模がすごく小さめなんですね。だから効率があまり良くないんです。

地域性がすごく強いので、海外のメジャーな企業が参入しにくい部分があって、なかなか標準化できないのが現状です。日本に静脈サイドの大きな企業が生まれていないのは、そういった背景があります。

企業が静脈側を見直しているけど・・・

飴屋 でも最近は大企業が、ちょっとずつ静脈サイドに取り組み始めているんですよね?

新井 そうなんですよ。

例えば、ユニクロが店舗で古着の回収を始めたり、サントリーが回収したペットボトルで新たにペットボトルを作って売ったりなど、静脈物流を含めた取り組みが日本でもどんどん進んでますよね。これは消費者側の意識が変わってきたから企業もそれに対応している流れです。

ただ日本の場合、静脈物流の全体を横断的にわかる人・会社が少ないんです。そのため、部分最適にとどまってしまっている部分があるのは否めないですね。

日本の静脈産業の欠点とポテンシャル

飴屋 最近私も、環境への取り組みを意識するようになってきました。

新井 さっきも話しましたが、消費者側の意識が飴屋さんのように変わってきているので企業も対応している流れがありますよね。

例えばアメリカではモノを買うことは企業に対する投票だという意識が根付き始めているんです。

飴屋 「応援したいから買う」みたいなことですね。

新井 そうです。応援購入みたいな意識です。

あとは環境問題に関する規制がかなり厳しいEU圏のスーパーとかだと、法規制によってある程度エシカル(倫理的)なものだったり、サスティナビリティ(持続可能性)を意識した製品じゃないと、そもそも店頭に並べられないところもあります。

飴屋 置いてもらえないくらいになっているんですね!

新井 そうなんです。法規制がそういう方向にどんどん厳しくなってきているんです。

飴屋 そうなったら、倫理面や環境面を意識したものを作らざるを得ないですね。

新井 法律の力はやっぱり強くて、日本でも2022年4月から「プラ新法」が施行され、リサイクルやごみ削減への設備投資を進めている企業がどんどん増えてきています。

飴屋 日本も海外のように進化していってる状況なんですね。楽しみです。

新井 だからこそ静脈産業全体に精通したコーディネーターが日本には必要とされています。

現状だと廃棄物は廃棄物、リサイクルはリサイクル、リユースはリユースみたいに業界が分断されてしまっているので、極端な話、リユース(再利用)できるものをリサイクル(再生)に回してしまうなんてことが起きてしまっているんです。

そこを横串で刺して全体をコーディネートできるような、静脈物流の専門家という存在が重要になってくると思ってます。

私がメディアという形で情報発信をしたり、いろんなところに取材に行ったりしているのも、自身がまさにそういう存在になれればいいなと思って取り組んでいますね。

飴屋 確かに、そういう専門家がいると変わってきそうですね。ありがとうございました。