どうやって電気は作られる?日本が火力から脱却できない理由


2022年3月に起こった、関東の電力ひっ迫問題の原因はなんだったのか?
日本のエネルギーミックスはどうなっていて将来はどうすべきなのか?
わかりやすく解説する。

なぜ電力ひっ迫が起こったか

飴屋 最近東京周辺の電力がひっ迫してましたが、なぜ起きたんですか。

新井 あれは2022年3月16日の東北地震の影響でいくつかの火力発電所が止まったのと、季節外れの冷え込みで暖房需要がかなり高まっていたことに加えて、雪が降っていて太陽光発電が機能しなかったことで一時的な電力不足になりました。

飴屋 日本では地震がよくありますが、なんであのときだけ急に電気が足りないんだと思ったら、いろんな不幸が重なっていたんですね。

新井 色々なことが重なって電力がひっ迫しましたね。

日本の電力はどうやって作られる?

飴屋 そもそも電気ってどういうふうに作られてるんですか。

新井 日本のエネルギーミックスは火力発電が7割、再生可能エネルギーが約2割、あと1割が原子力です。

飴屋 意外と火力発電が多いですね。

新井 東日本大震災以降ですが、原子力発電の割合が低くなって火力発電が上がっています。再生可能エネルギーも上がってますが今は火力発電の割合が非常に高いんです。

これは脱炭素っていう点からも、世界的にちょっと非難されたりしてて。

飴屋 たしかによくないって言われそうですよね。

再生可能エネルギーってどういう意味?

飴屋 再生エネルギーについて教えてください。

新井 再生可能エネルギーは太陽光発電や風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電になりますが、使っても減らない資源を使った発電方法を再生可能エネルギーといいます。

飴屋 ソーラーパネルやダム、風車とかですか?

新井 そうですね。

飴屋 地熱は温泉でしょうか?

新井 はい。温泉とかの地下に埋まっている熱を使って発電する場合ですね。

飴屋 バイオマス発電の燃料は何を使うんですか?

新井 燃料として使うのは未利用の森林の残材なんですが、いわゆる間伐材ですね。

林って放置するとどんどん繁って日照が悪くなって育たなくなるので、定期的に手入れをして間伐をしていくんですが、そういう間伐材をチップ状にして燃料としているのがバイオマス発電ですね。

飴屋 無駄がないですね!

新井 はい。ただ現状はバイオマス発電の75%は輸入材に頼ってる状態で国内材の活用は進んでないですね。

飴屋 バイオマス発電は輸入に頼った発電方法だったんですね。

新井 そうですね、そして同じく輸入に頼っているのが火力発電です。

火力発電は石油、天然ガス、石炭といった化石燃料を燃やすことで発生する蒸気でタービンを回して発電する方式なんですが、燃料のほとんどを輸入に頼っています。

エネルギー自給率でいうと8%くらいしかないですね。

飴屋 エネルギー自給率が非常に低いんですね。

新井 そうなんです。なので日本としては化石燃料の調達のリスクをなるべく減らしたいので石炭火力をメインにしています。

飴屋 石油や天然ガスはリスクが高いんですか?

新井 はい。石油や天然ガスは埋蔵地域に偏りがあってですね、石油なら中東だったり、天然ガスはロシアに多いです。

それに比べると石炭は世界中に埋蔵されていて代替調達先も多いのでリスクが低いんです。

飴屋 何かあれば別の場所から輸入すればいいので石炭火力をメインにしているんですね。日本には化石燃料資源ってないんですか?

新井 日本にもありますが、少ないですね。

原子力発電は何が問題なのか

飴屋 少しナイーブな話なんですが、原子力発電は効率がいいと聞きますが増やしてはダメなんですか?

新井 そうですね。原子力発電はウランを燃料として使いますが、火力と同じように燃やしてその熱でタービンを回して発電しますが、問題が2つあります。

まず、その使い終わった核燃料ウランの処理方法が確立されてないことです。現状はとりあえず地下に埋めておいて将来何とかしましょうねっていう先送りにしている状態です。

もうひとつの問題は発電施設がかなりナイーブなものなので、災害に遭ったり、戦争になったときに標的にされるリスクが高いことですね。

再エネを含めた将来のエネルギーミックス

飴屋 原子力発電はナイーブですし、脱炭素を目指すと火力発電は減らしていかなければならないとなると、全部再生可能エネルギーにしてしまうのはダメですか?

新井 それができればいいんですが日本の場合は平地が少なくて、海も遠浅の海岸が少ないので再生エネルギーが不向きなんです。

砂漠のような平地だったら太陽光をさえぎるものがないので効率よく太陽光発電ができます
が、日本は山が多いので太陽光パネルを設置するのに適した土地が少ないですね。

また、海岸なら巨大な風力発電も設置しやすいんですが、遠浅でないとなかなか設置しづらくて日本の海岸はすぐに深くなっているので、風力発電も設置しづらいんです。

飴屋 日本は地理的にあんまり向いてないんですね。

新井 そうですね。導入容量に限りがあります。

もうひとつは全て再生可能エネルギーにした場合ですが、例えば曇って太陽光がゼロになった時に調整する電力がないことです。

今は火力発電や水力発電でカバーしていますが、再エネ100%にすると何かあったときに調整できないリスクがあるので、うまい具合にエネルギーミックスをしていきましょうというのがエネルギーの基本政策ですね。

日本のエネルギーミックスの方針としては、まず2050年にカーボンニュートラルを達成することですが、それに向けた最適な火力発電、再生可能エネルギー、原子力発電の割合を議論しているところです。また議事録などを見ると再エネを5割から6割以上、原子力を3割から4割で、残り1割を水素で賄うことにするみたいです。

飴屋 水素でも発電できるんですか?

新井 そうですね。水素発電はまだイノベーションが必要な領域で今の技術だと実用化には至ってない発電方法です。ただ2050年までには開発をしたいという意味で1割は水素発電で賄うことにしているみたいです。

飴屋 水素でどう発電するんです?

新井 水素発電に関してはまた別の機会に話したいと思いますが、水素もクリーンエネルギーいわゆる再生可能エネルギーに含まれるので、将来性のある発電方法です。

もう一つは火力発電ですが、化石燃料を燃やして出てきたCO2を地下に貯蔵して再利用する技術も開発中で、これもまだイノベーションが必要な領域ではあるんですが将来性のある発電方法です。

日本の場合はエネルギー自給率の問題もあるので回収機能付きの火力発電をうまく活かせれば、原子力発電と回収機能付き火力発電をミックスして3〜4割は賄えると言われています。

政府も2050年に向けて原子力発電の議論は絶対に必要だといっているので、原子力発電をナイーブな話として扱うんじゃなくて、みんなでしっかり議論していくことが必要だと思います。

飴屋 未来のエネルギーのあり方についても議論していきたいですね!ありがとうございました。

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