日本は外にいるより家にいるほうが危ない?


日本の住宅は、他国と比べて性能が低い?
省エネを達成するために見過ごされがちな「断熱」について説明する。

日本の住宅は断熱性能が低すぎる

飴屋 日本の住宅は暑いし寒いって聞いたんですけど、本当ですか?

新井 そうですね。断熱が全然効いてない家が多いと言われています。

断熱って何かというと、例えば冬場の窓って結露したりするじゃないですか。あれは外気を取り込んで起こることなので、家をいくら暖房で暖かくしても、外にどんどん熱が逃げちゃって、その温度差で結露してる状況なんです。

また、夏の場合はクーラーをガンガンにしても外が暑いから効率が悪いですね。

つまり断熱性能が低いことが日本の住宅問題の一つとして挙げられます。

飴屋 日本の昔ながらの木造造りや瓦屋根が多いから断熱性能が低いとかありますか?

新井 そういう説もありますが、一番の問題は法規制がないことだと言われています。

飴屋 世界では何か基準・規制があるってことですか?

新井 そうですね。例えばイギリスの場合、暖房を使わずに16度以下になるような家を建てちゃいけないみたいな法律があります。

日本の場合はそういう法律がないので、コスト重視でどんどん作られているのが原因だと言われてますね。

外よりも家の中のほうが危ない理由

飴屋 冬場は外よりも家の中の方が危険って話を聞いたんですけどどういう事でしょうか?

新井 そうですね。ヒートショックって聞いたことあります?

飴屋 名前だけは聞いたことがあります。

新井 寒い家の中にずっといて、寒い脱衣所からお風呂に行って熱々の湯船にいきなり入ったりすると、寒い中ですごく縮まってた血管が湯船でいきなり開くので、失神してそのまま溺れてしまうのがヒートショックって言われる事故なんです。

交通事故の死亡者数(3,000件/年)より、ヒートショックで亡くなる方の方が多いんです。

飴屋 だいぶ多いですね。

断熱住宅はいいことしかない

飴屋 断熱できればヒートショックも減らせますか?

新井 はい。すごく効果があると言われています。そもそも住環境がすごく寒いためにお風呂と温度差が生まれているので、断熱をしっかりすることで家の中が適温に保たれれば、ヒートショックも少なくなっていくし、健康にも良いと言われてます。

冬場は寒い家の中でダウンを着ながら過ごす人とか、私の母なんかは東北で暮らしてるので、エアコンをガンガンつけてたりします。

日本の場合、省エネエアコンに対して政府の補助金がすごいついてたりするので、エアコンの性能がすごい上がってるんですが、そもそも断熱をしっかりしないと、エアコンで暖めたそばから外に熱が逃げてるような状況でもったいないですよね。

飴屋 もったいないです。断熱はコストが高いからやらないとかではないんですか?

新井 それが、そうでもないんです。それに家を建てるときにしっかり断熱のことを考えることで、家計の中で電力消費が一番大きいエアコン使用量も半分ぐらいにできる。

ランニングコストがその分減るので経済的にも環境にもよくて、健康にもいい。

飴屋 いいことしかないですね!

新井 そうですよね。そういったエコハウスみたいな断熱がしっかり効いた家を専門でやられている内山さんっていう建築士の方もいらっしゃって、記事にもなってますのでぜひご覧いただければと思います。

外よりも家庭の方が危険?日本の家の性能が低い理由

熱利用:海外の進んだ事例

飴屋 海外の断熱って具体的にどんな感じなんですか?

新井 先ほど言った通り、イギリスではある程度の温度を保つことが法律で決まっています。

また北欧では熱を発生させる発電所の地域に電気と熱を供給するようなインフラが整っていて、ガス管みたいに温水管を住宅に這わせて暖房できる仕組みがあります。

当然気密性もあるし、断熱の効いた住宅なので効率もすごくいいです。

日本の熱利用はすごく遅れている

新井 このように日本の場合は、熱利用っていう観点から見ると非常に世界から遅れていると言われてます。ですので、まず住宅の断熱っていうところからしっかりやっていくことが重要なんじゃないかと思います。

飴屋 すごいエアコンとかが出てきて世界的に進んでるような気がしてたんですけど、
そもそもまず断熱をしないといけなかったんですね。

新井 あと、エネファームってご存知ですか。

飴屋 名前だけはちょっと聞いたことがあります。

新井 エネファームっていうのはガスを使って、お湯を沸かしながら発電も同時にしますよっていうシステムなんです。

基本的に住宅で使うエネルギーは電灯やパソコンを使う「電力エネルギー」と、お風呂を沸かしたり床暖房をしたりする「熱エネルギー」の2種類があり、通常は電力エネルギーは発電会社から買って、熱エネルギーはガス会社から買っています。

ですが「コジェネレーション」っていうシステムがあって、エネファームが有名なんですが、電力を作る時に出る熱を活用してエネルギー利用を一緒に行うことができる、非常に効率がいいシステムなんです。

飴屋 どういう事でしょう?

新井 火力発電所などで発電する場合って、電気と同時に熱も発生するんですが、熱の発生する発電所と、熱を使う都市って離れてるのが普通ですよね。

飴屋 たしかに、発電所って何もないところにあるイメージです。

新井 そうですね。福島原発で作った電力を東京で使ったりしてたわけです。

そういうふうに電気を使う場所が離れているので、私たちがその熱を使おうと思ってもなかなか使いづらいところがあるんです。

なので住宅単位でエネファームを入れたり、また先ほどの北欧の例でいうと住宅から地域っていう面に広げて熱と電力を効率的に使いたいですね。北欧は熱の活用がうまいと思います。

飴屋 寒いところなので効率よく熱を使う知恵が閃いた感じですね!

新井 なのでやっぱり理想をいうと発電所が町の中心にあって、そっからみんな熱と電気を使うっていうのが理想ですね。

飴屋 すごく効率はよさそうですよね。

新井 なかなかそうはいかないんですけど、地域っていう面で使っていく形が一番できたらいいなとは思います。

飴屋 理想に近づけたらいいですね!ありがとうございました。