脱炭素にも地方創生にもなる!日本の最新サーマルリサイクル


「サーマルリサイクル」はまだ一般に馴染みのない言葉ではあるが、実は廃棄物業界では古くから幅広く活用されてきた技術である。今回は、雪国の新潟で産業廃棄物を使ってバナナを育てる面白い事例や、北欧の進んだ暖房インフラなどを通して、サーマルリサイクルの可能性を見ていこう。

雪国でバナナを育てる?日本の事例を紹介!

飴屋 今回はサーマルリサイクルの具体的な事例について教えてください。

新井 取材したこともあるんですが、新潟にシモダ産業という会社がありまして、焼却炉の排熱を使ってバナナを作っています。


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シモダ産業ではごみの焼却炉で使用した温まった水をビニールハウスに回して、その熱でビニールハウスを温めてバナナを栽培しています。

また、鳥取にある三光株式会社では、ごみの焼却炉の廃熱から魚を養殖したり、藻を育てたりしてます。

2社のように焼却の際にでる熱を利用した事例は結構ありますね。

飴屋 一般的には熱を発電に回すことが多いって聞いたんですけど、どうなんですか?

新井 そうですね、自治体とかの焼却炉では燃やしたときの蒸気を使って、併設した発電機で発電するっていう事例は結構多いです。

ただ大規模な施設でないと発電効率が悪いし、大規模施設でも効率が5割いかないぐらいと言われています。

さらに日本の場合は土地も限られてるので、そこまで大きい施設を建てられる自治体は少ないですね。

シモダ産業や三光株式会社みたいな農業や養殖といった分野なら、小規模な焼却炉でも活用できるので、そういった活用が増えてほしいなとは思います。

焼却炉って一箇所にまとめられないの?

飴屋 大きい焼却炉を作って全部そこで賄うのは、難しいんですか。

新井 そうですね、欧米ですと、広い土地にすごい大きな施設を建てて、大規模にやるってことが可能なんですが、日本の場合だと使える面積、国土が限られているので山間にある自治体とかだと、焼却場にそこまで広い土地を取れないっていう課題がありますね。

飴屋 欧米のように建てるのは、日本だと難しそうですね。

新井 たしかにそうなんですが、自治体の焼却炉が古くなって新しい焼却炉を建てるときに、複数の自治体でお金を出し合って建てようみたいな話はどんどん進んできてはいます。

焼却炉ってたくさん必要なの?

飴屋 そもそも焼却炉ってそんなにたくさん必要ですか?

新井 そうですね、やっぱり家庭の可燃ごみをはじめとした行き場のないごみっていうのは必ず発生してしまうので、その受け皿として燃やす施設は必要かなと思ってます。

燃やさないと処理できないごみは、もちろん減らしていくべきです。

ただ、2050年に脱炭素の国になっていたとしても、その時に焼却炉がゼロになっているということは絶対にないと思います。

やはりどうしても必要なインフラですので、最大限活用していくっていう視点が大事だと思います。

北欧のサーマルリサイクルの活用事例

飴屋 焼却炉は今後も必要だと思いますが、これからは付加価値のある焼却炉がたくさん増えたらいいですね!

新井 そうですね。例えば北欧での活用事例ですが、焼却炉やバイオマス発電所の処理工程で冷却のための水が必要なんですが、その処理工程の後で冷却に使った水が温まるんですね。

その温まった水を貯蔵しておいて、住宅の壁の中にガス管のように這わせて暖房として使ったりしています。

北欧では熱の暖房利用は一般的に行われていますが、日本では新たに管を引きなおさなければならないので、農業などに活用するのがよいかと思います。

シモダ産業のように「雪国でバナナ」みたいな新しい特産品もできます。

そういったサーマルリサイクルで育てた果実などを特産品として輸出できれば地方創生と脱炭素が同時に出来ますよね。

飴屋 同時にできます!いいことしかないですね!

新井 なかなか面白いことになってくるんじゃないかなって思います。

飴屋 これからが楽しみですね!ありがとうございました。