世界循環経済フォーラム(WCEF)2023レポートVol.1

ヘルシンキ市で4日間にわたって行われた「世界循環経済フォーラム(World Circular Economy Forum )。は2000人、ストリーミングでは6400人が参加しました。

CEに関する様々なテーマのセッション

5月30日(火)、ヘルシンキ市にて「世界循環経済フォーラム(World Circular Economy Forum )2023」が開幕し、100以上の国からリアルでは2000人の参加者があり、オンライン参加者は6400人を超えたと発表されました。

初日は、11時からのオープニングセッションのあと、4つの会場で「ファイナンス」「消費者」「教育」「エネルギー」などのテーマ別に合計8つのセッション、最後は若手のリーダーを集めた「若者が描くサーキュラーな未来」と題したセッションが行われました。各方面からの登壇者は100名以上に上ります。

キーノートセッションでは「自然と経済のためのサーキュラーソリューション」をテーマに、オンラインにてルワンダの環境大臣Jeanne d’Arc Mujawamariya氏、EUのエグゼクティブバイスプレジデント Frans Timmermans氏のスピーチがありました。

ルワンダの環境大臣Jeanne d’Arc Mujawamariya氏。昨年のWCEFはアフリカ開催

(写真左)「自然と経済のためのサーキュラーソリューション」がテーマのパネルディスカッション(写真右)「若手リーダーのサーキュラーな未来ビジョン」のセッションで歯に衣着せない物言いでサーキュラーエコノミーを語る若者たち

サステナブルなイベント運営

1.ペーパーレスで会話中心の展示

サーキュラーエコノミーをテーマにしたWCEFは、イベントの運営もサステナビリティの考え方が貫かれていました。

まず、企業ブース。通常、展示会場といえば、大企業の大きなブースを中心に、中小さまざまなブースが立ち並び、それぞれ工夫をこらした展示を行っていて、パンフレットやチラシ、時には立派な冊子やノベルティが置いてあり、ブース前で配ったりするのが一般的です。しかしWCEFは基本ペーパーレスで、そういったものは一切ありません。ブースのつくりも、椅子、テーブル、会社のロゴのみ。担当者が名刺を配るということもなく、みな最低限しか持っておらず、バッジに印刷してあるQRを読み込んでもらったり、相手の名刺をスマホで撮ったり、リンクトインでつながったりなどが行われていました。展示も、企業によっては大きなパネルやモニターなどを置いてありますが、基本、驚くほどシンプルで、商品を展示しているのは数社のみでした。

ではブースで何をするかというと、ひたすら会話です。訪問者に担当者が丁寧にビジネスや商品について説明し、それに対して訪問者が質問をするので時間も長めになり、各ブースは常に人がいる状態。宣材グッズはないけれど、かわりに会話がたくさんあるスペースになっていました。

2.サーキュラーデザインされたコミュニケーションランチ

講演やパネルディスカッションによる情報提供だけでなく、参加者同士のネットワーキングの場を提供することもこのイベントの大きな目的のひとつ。そのため、イベントの登録は無料であるにもかかわらず食事(ランチ)が提供されます。初日はディナーもあり、お酒(スパークリングワイン)も出されていました。日本の場合、展示会場で飲食が伴う場合は場所を移して行われる場合が多いですが、WCEFではブースが並ぶ展示会場内でいくつかのビュッフェコーナーが設置され、食事が行われます。参加者だけでなく展示者も食事をプレートに取り、ブースで食べながら接客するのです。このスタイルは最初驚きましたが、ネットワーキングという立場で見れば、場所を分断せず時間も節約できるので、とても理にかなっています。

さて、気になる食事の内容ですが、食事の内容は基本ベジタリアンで、例えば初日はグリーンサラダ、代用肉とにんじんのソテー、キヌアのサラダ、パン、フムス(ひよこ豆のペースト)とごくシンプルなもので、「Special Diet(特別な食事)」コーナーではグルテンフリーの素材を使った料理が出されていました。ドリンクはワイングラスに注がれた水。通常ならペットボトルが並ぶところですが、テーマがサーキュラーエコノミーですのでプラスチックは排除されているのです。

2日目のランチ。肉はもちろん揚げ物などもなく、野菜をたっぷり使ったヘルシーなビーガン料理は「美味しい」と好評

ランチタイムの水の提供に使われたおびただしい数のワイングラス

さらに、午後の休憩タイムには、ランチの素材の一部を使ったトルティーヤが出されていました。サーキュラーエコノミーの基本である、廃棄を出さない設計の考え方がここにも活かされています。

コーヒーブレイクにスナックとして提供された野菜のラップ

このフードシステムについて、主催者であるSitraの担当者に話を伺いました。

「大量に食事を提供する際には必ず食品廃棄の問題がつきものですが、WCEFでは、余った食品は、ホームレスなどの支援を行うNGOに届けられます。支援を必要とするホームレスや片親、退職者のために毎日食料を届けている団体です。そこへ配達するのは、学習や就労において特別な教育、個別のサポート、指導を必要とする専門学校の学生たちです。「廃棄物ゼロ」「「弱者のための食事提供」「学習困難な学生のための社会体験」という3つの意味でサステナブルなフードプロジェクトになっています。また、人気がなかった食品、食べきれなかった食品の情報はデータ化されて今後に活かすようになっています」

サステナビリティやサーキュラーエコノミーを発信するイベントで廃棄がたくさん出てしまうのでは本末転倒。ひとつひとつのサーキュラリティを考えてイベント設計が行われていると全体を通して感じました。