「エシカル」ってどういう意味?


「エシカル消費」や「エシカルファッション」といった使われ方をするエシカルという言葉を耳にする機会が増えてきましたが、その意味は意外とみなさんに知られていないものです。
どのような事がエシカルなのか、サステナビリティとの違い、そして私たちが出来ることとは何でしょう。今回は、エシカルコーディネーターである久米彩花とともにエシカルとはなにか説明していきます。

1.エシカルとはなにか

久米 今回は、エシカルをテーマにお話していきたいと思います。まずは3つのポイントをお願いします。

新井 はい。まず1つめはエシカルとは何か。2つめに企業にとってできることとは。そして3つ目に消費者にとってできること、この内容で話していきたいと思います。

久米 よろしくお願いします。近年、サステナビリティやSDGsと並んで「エシカル」という言葉もよく聞くようになりましたが、改めてどういった意味なのか詳しく説明していきたいなと思います。

新井 そうですね。「エシカルファッション」とか「エシカル消費」っていう言葉を耳にする機会が増えた方も多いんじゃないかと思うんですけども、久米さんはエシカルコーディネーターということで、ちょっとエシカルについて教えていただけますか。

久米 はい。まず、エシカルというのは日本語で「倫理的な」という意味で、人や社会、地球環境に配慮しようという価値観や姿勢のことを表します。

例えばファッションの場合、これまでは商品を選ぶとき価格・デザイン・機能というような、買い手にとっていかに利益があるものかという実利が追求されてきました。

一方でエシカルなファッションというのは、例えば環境に良い素材を使っているかどうか、生産者が安全な場所で健康的に働いていて、きちんと適正な価格が払われているのかといった、環境や作り手にとっても良い商品であるかどうかを考慮する買い方をエシカルファッションと言ったりします。

あとは代表的な例として、フェアトレードというものがありますね。生産者からものを買う際に、とにかく安く買い叩くのではなく、お互いにフェアな価格で取引をしましょうという考え方もエシカルの一つかなと思います。

新井 フェアトレードの例として、オランダのTony’s Chocolonely(トニーズチョコロンリー)っていうチョコレートメーカーが有名ですよね。これは子どもに安い賃金で過酷な仕事をさせるというカカオ栽培に係る児童労働問題に対して、それを排除したカカオだけを使っていることを打ち出しているブランドです。国内ではMOTHERHOUSE(マザーハウス)なんかも人気ですね。

久米 そうですね。エシカルって今まではボランティアみたいなイメージが強くて、エシカル自体はすごくいいことだけどビジネスには繋がらないよねとか、価格がちょっと高くなっちゃうから結局売れないよねなんて言われたりしてたんですけど、最近では消費者の嗜好も変化してきて、作り手の顔が見えるとか、ストーリー性のある商品を求めていたりするので、よりエシカルな商品というのが最近広まってきているのかなと感じます。

新井 ちなみに、サステナビリティとエシカルってどう違うんですかってよく聞かれるんですけど、どうなんですか?

久米 私の考えとしては、サステナビリティは直訳そのままに持続可能性という「性質」とか「状態」を表す言葉で、その持続可能な状態を作り出すための「姿勢」とか「価値観」がエシカルだと思います。

新井 なるほど、考え方がエシカルなことなんですね。そう考えると、エシカルとは包括的な大きい概念なんですね。

2.企業にできることは

久米 企業にとって、エシカルじゃない事業活動を続けるというのは今後リスクになっていくのではないかと考えているんですが、企業がエシカルであるために気をつけるべきポイントはどういったことでしょうか。

新井 まずはサプライチェーンの見直しだと思います。製品の生産工程で環境汚染をしてないか、ちゃんと賃金を払ってるのかなどをチェックポイントを設けて確認したりですね。

サプライチェーンがグローバルに渡っているとしても、実際に現地に確認しに行ったりとか、ヒアリングをしたりっていう形でチェックするという企業も増えてきています。

ただし、これはファッション業界が顕著なんですがサプライチェーンが長い場合難しくなってきます。例えばコットンの服であれば、綿花を栽培するところから始まってそれを糸にする会社があって、生地にする会社があって色を染めて…みたいに非常に長いサプライチェーン全てを確認するっていうのは非常に難しいです。そこで、現在はブロックチェーンという技術を使ってデジタルで紐付けていこうという動きもあります。

実際に、売上額で世界最大の企業であるWalmart(ウォルマート)がそれを導入していまして、店先に並んでいる食品とその生産者がデジタル的に紐付くってことがもう実装されているということなので、期待が高まりますね。

2.企業にできることは ~商社が強い日本の場合~

久米 企業がビジネスを成功させるために、商社を通すことが必要とは思うんですが、商社の存在はエシカルの観点で見るといかがでしょうか。

新井 日本の場合は特に商社が強くて、生産者から直接ものを買ってるケースの方が少ないんじゃないかという感じですよね。そのなかで育まれた日本の商社の美学みたいなものがあって、商社で勤めてる友人が言ってたのは「なにがなんでも納期までに必ずモノを届けるのが商社マンなんだ」っていう教育があるらしいです。

もちろん、それは非常に素晴らしい事だし、「お客様のために」みたいな日本的な美点なんですが、それが最優先になってしまうと、やっぱり環境への配慮とか、人権配慮みたいなエシカルな視点が欠落してしまう問題が出やすくなってしまいます。

なので、そこはクライアント側がもう少し柔軟になって、エシカルな視点を持つ世の中にちょっとずつなっていくのかなって気がします。

久米 そうですね、消費者もエシカルに関心を持つ人が増えているので、少しずつ業界側も変わっていくといいなと思います。

3.消費者にできることは

新井 久米さんが消費者として何かエシカルに気をつけることはありますか。

久米 私は、消費のスピードをスローダウンさせることを自分の中で意識していまして、買い物をするときに本当にこれが必要かなとか、長く愛着を持って大切に使うことができるかっていうのを自分自身に問いただしてから、それでも欲しいなと思うものを買うようにしています。

そうすると自ずと買う頻度とか量が少なくなるので、せっかく買うなら社会にもいいもの・フェアトレードのものを選びたいなとか、少し高くてもよいものを選ぼうかなっていうような考え方になって、よりエシカルな買い物になるように心がけています。

新井 私も消費のスローダウンって非常にやっぱり重要かなと思ってます。それって、ものごとを長期的に考えるってことで、例えば2,000円の靴を毎年買い換えるより、50,000円の靴を10年履いたほうが長期的に見るとコスパが良かったりとか、そういうことですよね。

ヨーロッパだと特にそういう考え方が文化として根付いていて、それは地震が少ない等の地理的な条件もあるんですけど、建物にしても建てるときに100年、200年住むものだって考えるので、長持ちするように初期投資額が大きいようです。

一方で、日本だと安く作れるものをスクラップアンドビルドする形になってしまっている。でも、長い目で見たときに資源の面でもお金の面でも無駄が多いことが段々わかってきている気がします。

久米 長期的な視野を持って買い物をしていきたいですね。ありがとうございました。