
物価上昇を身近に感じることが増えてきたが、なぜ今、世界的に物価が急騰しているのか?
その原因を分析すると、意外なことに古紙が関与していた。
今回は物価上昇の主な原因となっている物流とエネルギーに関して解説する。
古紙が原因で物価上昇?

飴屋 最近ニュースとかでも聞きますが、物価が上がってるのはなぜでしょうか?
新井 原因は色々ですが、たとえばコロナ問題やウクライナ問題などがありますが
1つは物流費の高騰、もう1つが化石燃料の高騰ですね。
物流費に関しては特に海上運賃の高騰が大きくて、以前と比べると3倍くらい高くなっていると言われています。
コロナの影響で港湾で作業をする労働者が減ったり、税関の検査が遅れていると言われていますが、実はその裏で古紙が影響してるんです。
飴屋 古紙が物価高騰に影響しているんですか?
新井 実はですね、海上輸送のドル箱路線ってのがありまして、中国の上海とアメリカの西海岸を結ぶレーンが稼ぎどころと言われています。

船会社も優先的にそのレーンにコンテナを回してたんですよね。
中国で製造した家具とか家電製品を、ダンボールに包んでアメリカに輸出するわけです。
次にアメリカから中国に戻るときに、使用したダンボールをはじめとした古紙を輸送することで、物流の循環が成立してたんです。
ところが中国が2021年から古紙の輸入をゼロにしちゃいました。

飴屋 中国に輸送するものがなくなってしまった?
新井 そうなんです、コンテナって空荷では帰れないのでインドとか他のルートに行くしかなくて、船が中国に戻らなくなってしまった。
中国では物を輸出したくてもコンテナが別のところに行っている。
一方のアメリカは物が欲しくても船がブッキングできない。
飴屋 それで海上運賃が凄く上がっているんですね。
新井 中国が古紙の輸入停止をする前は、中国を中心とした東南アジアで活発に資源ごみの取引がされていて、中国も古紙を輸入して輸出のためのダンボールを作成してたんですよね。
ピーク時は3000万トンくらい世界から古紙を買ってたんです。
そのうちの約半分をアメリカから買っていました。
ところが2021年以降、丸々ゼロになってしまい、その影響が大きかったと言われています。

ウクライナ問題とエネルギー高騰の関係
飴屋 化石燃料の高騰も物価上昇の原因なんですか?
新井 ウクライナ問題でロシアへの経済制裁が高まる中で、ロシア産の原油や天然ガス、石炭といったエネルギー資源が流通しなくなりました。
ロシアの世界に占める化石燃料のシェアは高く、特に天然ガスは世界1位で18%といわれていました。※参考:古紙ジャーナル
石炭のシェアも高くて非常に影響がありますね。
それによって化石燃料全体の価格が2020年比で2倍から3倍ぐらいに上がっていて、物価高騰の要因になっています。
飴屋 戦争の影響がこんな所にも関わっているんですね。
新井 それに加えて世界的に脱炭素の機運が高まっていたので、石炭火力の撤退やCO2の排出量が低い天然ガスへの切り替えなどがEUを中心にかなり進んでたんです。
一説によると、全ての化石燃料の高騰を招いたのはロシア産の天然ガスの供給が停止したためと言われています。
特にドイツは脱石炭火力と同時に脱原発も進めていて、天然ガスのもロシアへの依存が高く、非常に大きな影響を受けていますね。
今は石炭火力を一時的に復活させようみたいな流れになっています。

日本のエネルギーミックスは大丈夫?
飴屋 日本も脱炭素を進めてますが、影響ありそうですね?
新井 影響はもちろんありますが、日本は元々資源が少ないので一国に頼りすぎないように分散して資源を輸入したりと事前にリスクヘッジをしていたので、EUよりは深刻ではなかったと言えます。
ただ原油であればサウジアラビアに偏っていたりするので、もしそちらで問題が起こったらどうするのかを考えておかなくてはいけません。
大事なのは化石燃料・再生可能エネルギー・原子力発電といったエネルギーのバランスを考えることです。
飴屋 私たちも考えていきたいですね。ありがとうございました。