欧州の街並みの変化 サーキュラーエコノミーの浸透と日本の目指す先

循環思考メディア「環境と人」では2023年欧州への視察を3度訪問し、サーキュラーエコノミーに関する企業の取り組みを視察、取材を継続して行いました。2023年の「環境と人」のハイライトとして、訪問した4か国のうち、ドイツ、フランス、オランダの現地の生活から垣間見える街や企業の取り組みを振り返ります。また、彼らが見る日本のサーキュラーエコノミーの現状を、「環境と人」編集長新井と久米が考えます。

北欧フィンランドのサステナブルなデザインの思考

1.ドイツ

久米 ドイツは欧州4カ国の中でも、特に生活の身近なところでの再生材の利用が進んでいる印象を受けました。まずドイツの大手ドラッグストアdm(drogerie markt社)を訪れました。dmが手掛けるオリジナルブランドは比較的安価で多くのドイツ人に親しまれています。食器用洗剤の容器をはじめとする日用品のパッケージには決まって100%リサイクルと書かれていて、ボトルの部分が少し灰色がかった再生プラスチックが使用されています。

dmは2025年までのdmオリジナルブランドの容器包材について、「1.包装材の90%をリサイクル可能な素材とする、2.プラスチック使用量を2018年度比45%削減、3.非食用商品のプラスチック包装のうち少なくとも50%が再生材である」という3つの目標を2022年に設定しています。店内を見渡してもこの様な容器包装への取り組みや、内容物の、例えばケミカルフリーやヴィーガン対応など、幅広くサステナビリティに取り組んでいる印象を受けました。

久米 同じくdmで見つけた紙おむつのPampers(P&G社)は、プラスチック包装材に再生材を40%していました。再生材ならではのプツプツとした黒点が視認できます。日本で販売している同商品はプラスチック製容器包装のマークがついており、これは容器包装リサイクル法の対象ですが、同様に再生材で製造されているかは不明です。

新井 ドイツでは既に実際に再生材に関する法規制がありますよね。2022年1月に新容器包装廃棄物法が改定され、「使い捨てペットボトルについて、再生プラスチックの使用割合を2025年には25%以上、2030年には30%以上にする」ことが義務付けられています。さらに、2030年からは、この義務の対象範囲が拡大されます。そのためでしょうか。

久米 Froschというハウスケアブランド(Werner & Mertz社)のボトルは、こちらも100%再生材で、グレーがかったボトルです。この再生材は特に家庭ごみからできているPCR(post-consumer recycled)材です。

久米 Werner & Mertz社が中心となったリサイクルイニシアティブには、大手小売店のREWE Groupやリサイクル業のREMONDIS、印刷業のSiegwerkなどが参画しており、PCR材の資源循環を推進しています。

久米 特にREMONDISはヨーロッパ最大規模の産業リサイクルのセンターを所有し、幅広い資材を扱っています。ここでは回収してきた家庭ごみを選別をしてリサイクルペットを提供しています。生産能力としては90万t/年でリサイクルペレットを作ってるそうです。

新井 相当大きいですね。日本のプラスチック再生拠点の場合は1拠点で5万tくらい。グループでも聞いたことないです。

ポイントはやはり家庭ごみ由来の廃プラが、大手企業が販売する洗剤のボトルに使われているっていうところだと思います。日本でもこの様なイニシアティブがあり同様の実証実験が行われていますが、コストが合わず商業化としてまだ上手く回っていません。家庭ごみは容器包装プラスチックとして回収されているものの、現状物流で使われるパレットや、公園にある擬木(ぎぼく)になり、生活者の手元に戻っていくサプライチェーンにはなっていません。

グレーがかったボトルや黒点のあるパッケージが有名ブランドで採用され、それを消費者が受容している点は文化が違う様に感じます。

久米 ドイツ・エッセンで開催されたプラスチックワールドエキスポでも、使用済みのペットボトルを再度PETボトルに戻すボトルtoボトル(水平リサイクル)のための再生材の確保が主要な議題になっていました。既に欧州内では、再生PETが足りなくなる見込みがあり、価格も上がりつつあります。いかに欧州以外から安定的に輸入するかという観点で競争が始まり、東南アジアや中国の会社からペレットを買い始めていたり、中長期的戦略では、再生材を確保できるように現地リサイクル企業の買収もあるようです。

新井 日本とドイツのボトルtoボトルへの認識がまたここでも違うような気がしますね。日本は高い技術で衛生基準をクリアしたペットボトルなので、もはや見た目ではわかりません。衛生観念の違いっていうのは、再生材の利用という観点では、かなり壁ですね。ボトルが綺麗なのはいいですが、環境との折り合いも重要だと考えます。

2.フランス

久米 2024年のオリンピック・パラリンピックに向けて、セーヌ川を綺麗にする取り組みを行ったり、使い捨てプラスチックを使用禁止する等、着々と街が変わっていく様子がありました。

今回の訪問ではパリ市内に設置されたごみ箱「Bagatelle」を見てきました。パリの街並みに溶け込む美しいごみ箱はデザイナーVincent Leroy氏による。2013年より設置されています。特徴は中身が見えるような仕様と、設置箇所も多いため収集業者が10秒程で取り換えることができるようになっている点です。また中身も見れるので、危険物も一目で分かり、口が狭いので万が一爆発しても広く飛び散らないようです。

新井 観光地では景観を崩さないと言う点は重要ですよね。以前、ごみ拾い活動をされている方から、日本ではごみ箱を撤去する方向に行ってしまったため、植え込みの中など見えない場所にごみが捨てられているケースが多いと聞きました。

久米 回収はsuperという60年以上フランスで一般廃棄物・産業廃棄物共に扱う企業が行っており、街で運搬車をよく見かけました。こちらのごみ袋も再生材を使用しています。

新井 他の欧州の国もそうですが、廃棄時の手分別なしに、資源ごみをまとめて回収して、自治体の選別施設で機械や手選別が行われるシングルストリームという方法ですよね。特に言語や文化が違う人々が集う観光地における街の美化を考えると、分別の限界はありますよね。

ドイツの事例でもあったFroschのボトルなどを見ても、分別回収していないからと言って資源にならないということではありません。分別をして質に拘ることより、開き直って回収量に拘りコストを下げる、シングルストリームを採用するのも合理的です。

もちろん、分別したリサイクル原料の品質は高いので、日本のペレットは綺麗です。この綺麗な原料を海外に売るのではなく、国内で循環させて欲しいです。

3.オランダ

久米 オランダでは特に、限られた資源を有効活用するためのシェアリングサービスの普及が印象的でした。写真は、アムステルダム市内で見かける自転車ですが、その中にタイヤが水色の車種があります。これはSwapfietsという自転車シェアリングサービスで、オランダを拠点にドイツ、ベルギー、デンマーク、フランス、スペイン、オーストリア、イギリスに合計 280,000 人の会員がいるようです。

久米 アムステルダムでは特に学生などがこの自転車のシェアリングを利用しているようで、月額3,000円程で利用可能なため人気で、自転車のうち3〜4割が水色のタイヤという光景でした。

新井 自転車に限らず、物を所有するという概念は、今オランダの人口増加に対して居住地やハードが足りていないという課題があるので、その解決策でもあると思うのですが、総じてシェアリングがきめ細かに進んでいますよね。

久米 また今回アムステルダムから南に60㎞移動しロッテルダムも視察しました。Bluecityというビジネスインキュベーション施設ですが、ここにはサーキュラーエコノミー分野で活動を行うスタートアップが集結していました。

久米 ここは温水プールとして使われていた改築した施設で、オフィスやイベントスペース、研究室が入っています。企業の成長フェーズに応じた施設運営が充実していて、例えば学生起業家のような人がゼロからの構想を建て、ものづくりでは3Dプリンターを使いプロットタイプを生成し、自分たちの機械を入れるようになり、自社工場を作れるようになったら施設を卒業するという、サーキュラーエコノミーの登竜門のようなコミュニティです。

サーキュラーエコノミー新規事業のハブ オランダBlueCityとは

新井 オランダは既存利用が上手い印象がありますよね。似たような施設として、サーキュラーエコノミー型プロダクトデザインジーンズであり、そのシェアリングを行う、MUD JEANSのオフィスも、かつては軍隊が居住・演習に使用していた施設でしたよね。

限りある資源を有効活用するサーキュラーエコノミー型ビジネスを考えると、単純で大きな箱物より、この様なクリエーションが上手く働く施設の方が相性がいいのでしょう。日本でも廃校の活用などがありますが、地域に率先してスタートアップを受け入れてもらえたら面白いと思います。

4.欧州から見た日本

久米 取材の中で、現地の方々に日本の印象についても質問しました。オランダの企業の方は、最近日本企業のサーキュラーエコノミーへの関心が高まっている実感があるそうで、視察などの依頼も増えているそうです。

また、日本の家庭ごみの分別についてよく知られている印象を受けました。シングルストリームをベースとする欧州では、最低限のアイテム別の分別をするもの、デポジットを採用し分別をするメリットを生活者に与えている仕組みです。日本の生活者が負担と感じず分別をする文化を評価し、再生材資源のポテンシャルを感じているようです。

新井 国外から日本のサーキュラーエコノミーがどう見られているか知るのは重要ですね。欧州ではサーキュラーエコノミーを推進するという政策が先導し、企業もついてきたイメージはありますが、日本は逆ですよね。企業が進めているサーキュラーエコノミーをやっと政府が追い始めましたし。

久米 2023年10月のサーキュラーエコノミーに関する首相官邸での車座対話がまさにそうですね。

新井 はい、その点も鑑みると日本はやはり民間主導でサーキュラーエコノミーは頑張っていかないと。もちろん政府にも進めて欲しいですが、やはり一億人規模で政策を変えていかなければならない点で腰が重いです。企業間でいかにコラボレーションをしていけるか、消費者に理解してもらえるか。この点が勝負ですね。ですので、欧州に比べビジネスの規模が小さくなるのは仕方ないですが、たくさんの成功事例を作っていきたいですよね。

久米 まさにそうですね。ありがとうございました。