食品リサイクル率100%を目指すスーパーマーケット・ヤオコーの挑戦

どんな時でも多種多様な食材を提供してくれるスーパーマーケットは、私たちの生活を支えてくれる存在です。しかし、特に季節物や行事物などに見られる食品廃棄、フードロスは毎年ニュースで目にするほど重大な問題となっています。

そこで今回は、新たな資源循環の形で食品リサイクル率100%を目指す食生活提案型スーパーマーケット 株式会社ヤオコーにインタビューを実施しました。株式会社ヤオコーは、以前紹介したリサイクル領域でのスタートアップ アーキアエナジー株式会社と協働を開始。バイオガス発電の技術の活用により、食品リサイクル率の大幅アップに向けて挑戦中です。

埼玉県エリアを中心に、多くの地元民に愛されてきたヤオコーの新たな取り組みや、スーパーマーケット事業のサーキュラーエコノミー実現を目指す小売業の姿について聞きました。

2030年度までに「食品リサイクル率100%=食品廃棄ゼロ」を目指す

ヤオコーは埼玉県を中心に、183店舗を構える食生活提案型スーパーマーケットです。「その地域のことは、住民が一番よく知っている」という考えから、店長がパートナー社員(ヤオコーではパート社員をパートナーと呼ぶ)から意見を汲み上げて、売場つくりや品揃えを決める権限を持っています。そのため、地域のお客さんのニーズに沿った柔軟な対応ができることが、ヤオコーの大きな強みとなっています。

そんなヤオコーは「販売するなら、回収もしてくれたらうれしい」とのお客さんからの声を受け、店舗での資源ごみの回収やプラスチック容器の削減など、幅広い取り組みを行ってきました。

その中でも特に力を入れているのが、食品リサイクルです。食品廃棄物の中には、天候の影響で発注数量の予測が外れてしまったことで出るものや、店の作業場で出る野菜くずなどがあります。

ヤオコーでは、AIを搭載した自動需要予測の活用や季節物の予約販売、食品工場となる「プロセスセンター」の拡充など、食品廃棄物を減らすための取り組みをあらゆる角度で行なっています。

しかしながら、食品廃棄物が出ないように完全にコントロールするのは至難の業です。そこで、発生してしまった食品廃棄物の新たなリサイクル方法として、2022年の夏頃からヤオコーが開始したのがバイオガス発電の利用です。

バイオガスで不可能に挑戦するリサイクルスタートアップ企業

食品リサイクル率が25.5%から49.8%へ。バイオガス発電による新たな循環

アーキアエナジー株式会社との協業により生まれたバイオガス発電を利用した新たな循環には、メタン発酵による「食品廃棄物の堆肥化」と「バイオガス発電により生まれた電気の活用」の2つがあります。

バイオガス発電所の仕組みを簡単に説明すると、搬入した食品廃棄物を破砕分別機にかけ、そこから抽出した生ごみをメタン発酵させます。すると、農業に利用できる堆肥と電気が生み出されるのです。

資源循環のトリプルループとは?進化を続けるバイオガス発電

バイオガス発電所の仕組み

1つ目の「食品廃棄物の堆肥化」では、堆肥を自社のヤオコーファーム圃場で活用し、そこで収穫した野菜を店頭で販売することで、リサイクルループを構築しました。2つ目の「バイオガス発電により生まれた電気の活用」では、電気をヤオコーファームのレタスの水耕栽培に利用する予定です。

2022年の夏頃、青梅今寺店と八王子鑓水店の2店舗からスタートしたこの取り組みですが、この2店舗を始める際に分別を強化する態勢をつくったこともあり、リサイクル率は従来の他店舗の25%と比べて、49.8%と大幅に向上しました。この成果を元に、2023年6月には全15店舗へ拡大しています。

メタン発酵による残渣をヤオコーファームの肥料として活用

この事業の拡大に向けて重要な点が、農林水産省の再生利用事業計画認定制度の認証を得ることです。一般廃棄物のままでは行政に処理責任があり、市町村を越境して運ぶことができませんが、再生利用事業と認定されると、”廃棄物”が”資源”になり越境が可能になります。食品リサイクルでは運搬・再生にかかる費用がまだまだ大きいですが、越境が可能になることで効率的な回収ルートをつくることが可能になります。

産廃にまつわる二大事件から得た教訓

ちなみに再生利用事業計画認定は、一次産業でしか認められないもの。1つ目の「食品廃棄物の堆肥化」は、食品廃棄物が堆肥になり、その堆肥が新たに育てた野菜がお店に並びます。そしてまた店舗で出た野菜くずや余りものを回収し堆肥化する、というように、循環がわかりやすく、すでに認定を得ることができました。

一方、「バイオガス発電により生まれた電気の活用」においては、電気を店舗などに使うという方法では認証を得ることができません。そこで、レタスの水耕栽培に必要なものを「水と電力」とし、その電力を再エネ100%で活用するという方法で、新たなリサイクルループをつくることを計画中です。

再生利用事業の中でも前例のない取り組みとなりますが、水耕栽培は天候にも左右されず安定供給が可能となるため、認定されれば大きな話題を呼ぶでしょう。

バイオガス発電のメリットは店舗にも

バイオガス発電を取り入れることは、ごみを分別する店舗スタッフにとってもメリットがあるようです。アーキアエナジー株式会社の破砕分別機では、プラスチック等のパッケージごと入れても機械の中で容器除去を行なってくれます。

できる限りの分別を店舗で行っていますが、例えばパッケージに入った豆腐やヨーグルトなどは、容器から取り出し水を絞って捨てることはなかなか大変です。そのため分別するのに時間がかかってしまうものに関しては、焼却という選択を取らざるを得ませんでした。

しかし、バイオガス発電の場合は豆腐やヨーグルトもパッケージに入ったままでも受け入れてくれます。他にも売れ残り弁当やパンなど、生ごみ以外でも受け入れの間口が広いため、リサイクルに出しやすくなりました。

その結果、食品リサイクル率の大幅アップの他、廃棄物の重量が減り処分コストが低減。焼却するために発生していたCO2排出量も-115.5トンの削減に成功したのです。

分別指導のためのマニュアル整備や分別しやすい環境づくり、店舗への目標の共有なども同時に進めたことが功を奏したようです。

店舗内の分別スペース

リサイクルコストと搬送コストの課題をどう乗り切るか

昨年からスタートしたばかりの取り組みではありますが、現時点でもさまざまな成果が見えてきているバイオガス発電での食品リサイクル。しかし、いくつか課題も抱えているようです。

ここからは、現在抱える課題と今後の展望について、株式会社ヤオコーの内山誠さんと吉野文男さん、アーキアエナジー株式会社の植田徹也さんに聞いてみました。

まずは、リサイクルコストについて。焼却コストよりもリサイクルコストが上回ってしまう場合、焼却を選ばざるを得ません。そのため、今回の取り組みは事業の将来性を見込んで焼却コストとほとんど変わらないリサイクルコストでの実施に踏み切りました。その背景を植田さんはこのように語ります。

アーキアエナジー株式会社 代表取締役 植田徹也氏

植田:小規模農家さんは、これまで使ったことのない堆肥を利用することに二の足を踏むことが多いものです。しかし「ヤオコーさんが使ってるなら安全だろう」と感じた方が多いのか「うちでも使いたい」と言ってくれる農家さんが結構増えてきているんです。

ヤオコーさんという信頼性の高い会社に先陣を切っていただくことで、利用者が増えゆくゆくはコストが下がっていくはずです。事業の将来性を見込んでリサイクルコストを調整させていただきました。

もう一つの課題としてあげられるのが、搬送コストです。これまで他企業も含めたそれぞれのスーパーマーケットがバラバラに搬送していたところを、連携し最短ルートでより多くの食品廃棄物を集めることができれば、搬送コストの削減につながります。二酸化炭素の削減効果もあるため、現在「日本スーパーマーケット協会」での勉強会を通じて、共同で回収ルートをつくる企業を募っています。

CO2削減に取り組むことは、ヤオコーの未来を守ることでもある

食品廃棄物に頭を抱えるスーパーマーケットは多くあるなかで、ヤマコーは最先端のリサイクル技術を活用しながら目標に向けて歩みをつづけています。改めて、ヤオコーのような小売業者がサステナビリティに向き合う意義とはどんなところにあるのでしょうか?

内山:私たちのようなスーパーマーケットが切実に向き合わなければならない課題の一つに、将来的な炭素税の導入があります。現在のCO2排出量からすると莫大な金額になるリスクがあります。今から二酸化炭素排出量の削減に取り組むことは、私たちの事業の将来を守ることでもあります。

政府は2030年度、2013年度比において、温室効果ガスマイナス46%を目標としていますが、ヤオコーはそれよりも高いマイナス60%を目標に掲げました。2023年3月時点ではマイナス29.6%を達成。2024年3月までにはマイナス50%を目指します。小売業でマイナス50%という数字は、他に例を見ない高い目標となっています。

二酸化炭素の削減以外にも、プラスチックの削減やリサイクル資源の店頭回収強化、余った食品を子ども食堂への寄付するなど、さまざまな取り組みを進めています。

吉野:私たちがサステナビリティを進めてきたのは、「回収してほしい」というお客さんの声があったからだと思っています。小売業は、一般生活者とのパイプ役という役割を持ちます。だから、私たちからお客さんに環境問題について知ってもらう接点をつくることも非常に大切だと思いますね。

しかし、私たちの力だけで生活者の意識を変えていくというのは、なかなか難しいものがあります。例えば「何のためのプラスチック削減してるの?」と聞かれたときに、ちゃんと説明しようとするほど話が小難しくなり耳を傾けてもらえなくなる。生活者に寄り添うはずのスーパーマーケットが小難しい話ばかりしてしまっても、お客さんのためになっているかといえば疑問が残る気がしています。

私たちだけでなく、行政や他の企業とも協力をして進めていかなければならないところだと感じています。

2023.07.10
取材協力:株式会社ヤオコー様、アーキアエナジー株式会社
https://www.yaoko-net.com/
https://archaea-energy.co.jp/

サーキュラーエコノミーの視点から、ビジネスモデル分析

株式会社ヤオコーはAIを活用した需要予測によって廃棄物をできるだけ排出しない仕組み作りやお客様からの資源回収など、様々な環境への取り組みを行ってきました。

さらに、アーキアエナジー株式会社との協働により、店舗で出る食品廃棄物から電気と堆肥を生み出し、自社ファームで活用する取り組みを行っています。

製造業におけるサーキュラーエコノミーのビジネスモデルとして、北欧横断評議会であるNordic Innovationとフィンランドの政府関連団体のSitraが「サーキュラーバリューチェーン」を提唱しています。これらの要素を取り入れることで、資源効率を上げ企業の価値を向上させることができると考えられています。

参照:Circular Economy business models in the manufacturing industries

株式会社ヤオコーは小売業でありながら、2つの要素を組み合わせて食品廃棄物の大幅な改善と業界の改革に挑戦しています。

再生可能

再生可能エネルギー、バイオ原料または再生材の使用及び耐久性があり修理しやすい製品を設計

・AIを活用した需要予測や事前予約によって、廃棄物の削減

・食品廃棄物のバイオガス発電により生まれた電気を自社ファームのレタスの水耕栽培に利用

・食品廃棄物から生まれた堆肥を自社の自社ファーム圃場で活用し、そこで収穫した野菜を店頭で販売

資源効率とリサイクル

廃棄物または副産物から使用可能な資源やエネルギーを回収すること

→アーキアエナジー社と協業し、店舗で出る食品廃棄物をリサイクル

株式会社ヤオコーは将来的な炭素税の導入などを踏まえて、廃棄物やCO2削減の取り組みは「事業リスクの低減」に繋がると考え、いち早く最先端なリサイクル技術の活用に乗り出しました。

廃棄物を最小限に抑えた上で、どうしても出てしまうものも徹底的にリサイクルループに戻すことで、食品のサーキュラーエコノミーの実現に大きく寄与しています。