アパレルブランド注目のサーキュラー素材“Infinna“の未来

企業インタビューVol.3 Infinited Fiber Company

サーキュラーな環境素材であるInfinna™ を開発した「Infinited Fiber Company」社(以下インフィニテッド・ファイバー)はフィンランドのテクノロジー企業で、廃棄物から持続可能な繊維を生産する画期的な循環プロセスを開拓してきました。数十年かけて開発されたその革新的なアプローチは、世界中の主要なファッションブランドから大きな注目と関心を集めています。このインタビューでは、インフィニテッド・ファイバーの成り立ち、直面した課題、パートナーシップのエコシステム、そして今後の戦略について同社CEO  Petri Alava(ペトリ・アラヴァ)氏に聞きました。

長い年月をかけて開発

―Infinna™が誕生した経緯について教えてください。

この分野の技術開発は、1980年代にフィンランドで始まり、NesteやCamiraといった企業が主導していました。その後、この技術は国営のVTT(フィンランド技術研究センター)に売却され、アリ・ハリ教授の指導の下、20年かけて改良が加えられました。しかし、2010年の初めに、まず紙ごみ、次に段ボールごみ、そして3番目に繊維ごみを使うことができることを発見し、そのごみから高級繊維や繊維を生産できることを突き止めました。

そして2010年代初頭、紙や段ボール、繊維などの廃棄物が高級繊維に生まれ変わることを発見し、ブレイクスルーが訪れ、Infinna™ が誕生しました。

―ファッション業界におけるサステナビリティへの関心の高まりは、御社の技術開発とどのようにマッチングしたのでしょうか。

私たちがこの素材を発見したのと同じ頃、ファッション業界、特にファストファッションブランドは、より持続可能なソリューションの必要性を認識し、環境フットプリントを削減するための対策を模索しており、目標が一致しました。そのため環境への影響を変えるためH&M、ラングラー、パタゴニアといったビッグブランドとのコラボレーションの道が開かれ、私たちの技術を採用してくれました。

―あなたの個人的な歩みと、インフィニテッド・ファイバーに関わるようになったきっかけについて教えてください。

私は繊維業界出身ではありません。ロボティクスやバイオマテリアルなど数社のCEOを務め、野菜の成長に必要なバイオマテリアルを提供することに注力してきました。廃棄物処理会社のボードメンバー時代には、EUによる生分解性廃棄物の埋め立て禁止が発表され、フィンランドの動向を注視していました。それ以降、ごみの埋立率が大幅に減少しているのを目の当たりにし、変化を促すには規制当局のサポートが不可欠であることを実感しました。2015年、インフィニテッド・ファイバーの技術について知ったとき、私は、ファッションブランドの環境フットプリントを変革する可能性と、それに対してビッグブランドが絶大な関心を寄せていることに魅了されました。

お話を伺った同社CEO  Petri Alava(ペトリ アラヴァ)氏

求められる生産規模に達することが一番の課題

―新しいタイプの繊維として、顧客を見つけ、業界に受け入れてもらうために直面した課題は何だったのでしょうか。

主な課題のひとつは、当社の繊維を大量に供給するために求められる生産規模に達することでした。また、新しい繊維であるため、メーカー側に取り扱い方法を理解してもらうための学習の時間も必要でした。これらの課題を克服するためには、サステナビリティの提唱者からビジネスリーダーに至るまで、業界のあらゆるレベルの方々からの協力が必要でした。

―政府からの支援や協力はあったのでしょうか。

もちろんです。国レベルでもEUレベルでも、政府とのコラボレーションを積極的に行いました。フィンランドは資本が豊富な国ではないので、私たちの研究開発を重視し、支援するために助成金や援助を提供してくれました。また、繊維廃棄物の回収率を向上させるための法律や取り組みについての議論が行われ、私たちも参加しました。EUのグリーンディール政策や持続可能な循環型繊維のための戦略は、私たちの努力をさらに後押ししてくれました。

廃棄物から生まれた線維Infinna™

―インフィニテッド・ファイバーの技術は、メカニカルリサイクル(分別、粉砕、再粒化など化学薬品を使わないリサイクル)とどのように違うのでしょうか。

Infinna™は、綿の廃棄物を液体セルロースに分解し、新しい繊維に再生するケミカルリサイクルプロセスを採用しています。このプロセスは、繊維が短く弱くなるメカニカルリサイクルのように、綿の繊維を弱めることがありません。

―なぜフィンランドでこのような技術が生まれたのでしょうか。

30~40年前まで、フィンランドは世界の紙の30%を生産していました。フィンランドは長い間、林業の分野で非常に強く、パルプと紙の生産を行ってきたのです。

そして、紙の生産量や販売量が減少し始めた頃、製紙業界は、自分たちが扱えるような新しい製品に目を向け始めました。私たちの技術は、セルロース化学に完全に基づいています。

つまり、フィンランドが長い間培ってきたパルプ産業のノウハウが受け継がれているのです。そのような背景もあり、サーキュラーエコノミーにおけるフィンランドのエコシステムは、繊維分野に集中して強みにする可能性があると見ています。

再生繊維とは思えないほどソフトな肌触りのジーンズ

有名ブランドに採用された服のサンプル

新工場に4億ユーロの投資

―御社のバリューチェーンを形作る企業について詳しく教えてください

私たちのバリューチェーンは、広範かつ多様です。繊維廃棄物の回収業者、選別業者、ブランド、糸紡績業者、生地メーカー、衣料品メーカー、小売業者などが含まれます。私たちは、廃棄物の利用可能性を高め、私たちのプロセスとの適合性を確保し、繊維の性能を検証し、Infinna™を使用した衣服の回収システムを確立するために、これらの関係者と協力しました。全体として、約5,000社あまりの企業と連携しています。

―ビッグブランドからの反応はいかがですか。繊維への関心はますます高まっているのでしょうか。

ビッグブランドからの反応は、非常にポジティブです。私たちは今、新たな工場をフィンランド北部のKemi(ケミ)に建設中です。巨大な工場で、4億ユーロを超える巨額の投資を受けており、私たちのような成長企業にとっては、これは大きな一歩です。そして、ありがたいことに、ブランド側も私たちと長期購入契約を結んでおり、私たちに投資してくれていることです。当社の技術のスケーラビリティに対する信頼がうかがえます。

―今後はどのように展開していくお考えですか。

私たちへの関心はグローバルで、欧州の大手メーカーを筆頭に、スペイン、ポルトガル、トルコなどの地中海地域と、アジア、特にインド、バングラデシュ、ベトナム、タイなどの東南アジアの国々です。日本からの関心も高く、繊維メーカーや製紙メーカーなどの日本企業は、繊維の使用や追加設備への投資に強い関心を示していただいています。

―日本は新工場の候補地になるのでしょうか。

はい、日本はインフィニテッド・ファイバーにとって魅力的な新工場の立地先と考えられています。フィンランドと日本の文化が似ていること、日本企業が将来の投資に関心を示していることなどから、日本は有望な選択肢となります。

Infinited Fiber Company
https://infinitedfiber.com/