
脱炭素やSDGsを達成する上で、環境負荷の高い建築業は改善の余地が多い分野と言われています。そこで各業者間で環境にやさしい素材の使用やZEHなどサステナブルな建築を目指す取り組みが進んでいます。そこで今回は、サステナブル建築に必須でありながら、見落とされがちな視点について紹介します。
1.サステナブル建築とは?3つの条件
久米 今回はサステナブル建築のためのヒントというテーマでお話していきたいと思います。よろしくお願いします。
新井 はい。まずは、1.サステナブル建築とは?3つの条件、2.環境にやさしい建築素材とは、3.サステナブル建築に必要な考え方。これらについて話していきます。
久米 まず、サステナブルな建築ってどういうものだとお考えですか?
新井 1つめがまず長く使うってこと耐久性です。2つめが、誰でも使えるユニバーサル性、3つめが環境に配慮した環境性の3つがあると思ってます。
久米 それぞれもう少し詳しく伺ってもいいですか?
新井 耐久性っていうのは簡単で、100年、200年間住めるものを作るっていうことですよね。2つめのユニバーサル性については、例えば車椅子の動線を確保したりで誰もがWell-beingになるような設計のことですね。

3つめの環境性は色々あるんですけれども、例えば健康を害さない素材を使うことだったり、周囲の生態系に影響を与えないこと、そしてあとは設計から解体までを考えて、廃棄物がなるべく出ないようなデザインにするっていうような要素ですね。
あとは、いわゆるZEH(ゼッチ)みたいな、住んでる時のエネルギー効率みたいなところも考慮されてると、より良いですね。

久米 なるほど、いろいろな観点での工夫が求められてるんですね。今回は特に3つめの環境性について詳しく聞きたいんですけど、建築に使われる素材ってどんなものがあるんですか?
新井 100種類以上あると言われてて、家とは究極の複合素材だっていう話もあるくらいです。とはいえ多いのは、木材と鉄とコンクリートです。
2.環境にやさしい建築素材とは
久米 消費財であれば石油由来からバイオ由来の原料にしましょうとか、食品だとオーガニックにしましょうみたいな、今までのものより環境負荷を下げたり健康にいいものをっていう動きになってると思うんですが、建築ではどんな動きがあるんですか?
新井 多く使われてる木・鉄・コンクリートの3つの素材でいうと、まず木材はそもそも環境負荷が低い素材なんですが、さらにここでFSC認証っていうトレーサビリティを確保した、環境配慮された素材を選ぶ流れであったり、他の動画でも紹介した「CLT」っていう高層ビルも建築できるような新素材を使っていく流れがあったりとかします。


2つめの鉄について、鉄でなく金属っていう括りですけどアルミに関しては、再生アルミを多く配合した製品が増えてきているんですけども、鉄骨、住宅に使われるいわゆるH鋼だと、どうしてもリサイクル鉄が信頼性の面でなかなか使いづらいという課題があります。
3つめのコンクリートも建築資材の中で特にCO2排出量が高い素材として課題になってるんですけど、コンクリに使用されるセメントを代替素材にしてCO2の排出を減らす試みはあるんですけど、鉄と一緒でコンクリートからコンクリートを作る事例がまだまだないのが課題だと言われてます。
このように使用量が多くかつ環境負荷の高い鉄とコンクリートの再生材活用がまだ難しくて時間がかかるので、木造建築が見直される流れがきてますね。
3.サステナブル建築に必要な考え方
久米 環境負荷の低い素材も少しずつ出てきているっていうことですが、先ほど仰っていた通り「建造物は究極の複合素材」なので、どんなに環境に良い素材を使ったとしてもその後のリサイクルをきちんとしないと、全体の環境負荷が下がっていかないと思うんですが、その観点ではいかがですか?
新井 そうですね。廃棄物の観点から言うと、建築由来の廃棄物って量がすごく多いんです。これはもう日本に限らず世界中で課題となっていて、オランダ・アムステルダム市はサーキュラーエコノミーやっていく中で、重点項目の1つに建築廃材の活用をバーンと打ち出してるくらい廃棄物の課題は非常に指摘されているところです。
建築由来の廃棄物って、解体したときに出るものだけじゃなく作るときにもいっぱい出るんです。昔建てたものはしょうがないですけど、解体時の廃棄物を減らすには、これからは建築時に解体のことまで考えて、どこにどんな素材が使われてるか記録してインデックス化(索引可)する取り組みが始まっています。
施工時の廃棄物についてもう1つ、サステナブルな建築・街づくりをしたい企画・設計される方と、実際に施工する現場の方とで、大規模な工事になればなるほど距離があることが挙げられます。
企画側は木を何本植えるとか、どういうエコな素材を使うかっていうところをやるんですけど、現場では納期が迫ってるから、廃材を分けてる時間がないから一気に搬出して埋め立てるみたいなことが起きちゃっているので、現場とのコミュニケーションを増やして、廃棄物に対する優先順位を上げていくプロセスが今後あるといいですよね。
久米 なるほど。特に廃棄物は外から見えづらいので、そこの改善はすごくポテンシャルがあると思います。

新井 そうですね。たとえば「何%の廃棄が出ました」って数値で出てたりするんですが、10トンの現場のうちの1%と、1万トンの現場の1%では全然違うので、しっかり見てもらいたいって気持ちがあります。
久米 ありがとうございました。