
皆さんがものを買うのと同じだけ、日々ものが捨てられています。それらをリサイクルや焼却など処理をしているのが廃棄物業界、ひいては静脈産業です。この仕事ははるか昔から存在するものの、普段人目に触れることは少ないといえます。
今回は、その産廃業界をめぐる変化とこれから先の流れについて紹介します。
1.産業廃棄物は何種類あるの?
久米 今回は、企業のゴミを解決する産業廃棄物業界についてお話していきたいと思います。よろしくお願いします。
新井 1.産廃の種類について、2.産業廃棄物が多い業界・業種について、3.今までの産廃業界とこれからについてお話していきたいと思います。
久米 まず産業廃棄物というのは事業活動によって発生する廃棄物のことで、企業にとって切っても切り離せない存在だと思いますが、実際にはどれくらい種類があるんでしょう?
新井 産業廃棄物はそのまま産業廃棄物と特別管理産業廃棄物に分けられていて、産業廃棄物は20種類に定義されています。

一方の特別管理産業廃棄物は、例えば病院で出る血がついたガーゼや注射器みたいな感染の危険があるものを中心に、別途定義されてます。
大体の企業から出るものは例えば「(06)廃プラスチック類」とかですよね。あとは特定の業種からしか出ないもの、例えば「(19)動物の死体」にあたる牧場等で死んだ牛とか、あとは食肉工場で出てくる内臓のうち不要なものを指す「(16)動物系固形不要物」のように、限られたところからしか出ないようなものもあります。
2.産業廃棄物が多い業界・業種はどこ?
久米 特にごみの発生量が多い業界とか業種はどういったところですか?
新井 業界で言うと建設業。あと電気・ガス・水道のインフラ系です。もう1つが農業・林業なども発生量が多いです。
久米 ごみ問題というとプラスチックのイメージが強いんですけど、そうでもないんですね?
新井 量でいうと多いのは「(18)動物のふん尿」、「(11)がれき類」、「(02)汚泥」です。
特に下水汚泥は全国的にデイリーで非常に多く出ます。ただし下水汚泥のほとんどが水分なので脱水するとかなり容量を減らせるため、見かけの量は多いけれど最終的に処分する量はそこまでではないのと、あとは昔から日々大量に安定た量が発生するのでリサイクルが進んでいます。

用途としては、堆肥化とか建設資材、路盤材にリサイクルされてることが多いです。
3.今までの産業廃棄物と産廃業界
久米 産廃処理は静脈産業とも呼ばれる業界ですが、動脈産業と同じようなサプライチェーン(物流網)は存在するんですか?
新井 あります。
そもそも産業廃棄物処理法という法律では、ごみは排出した企業が自分で処分しなければならないって定められているんです。でも現実的には難しいから、特例として委託契約書を作って委託していいですよということになっているので、要するに産業廃棄物処理業者はもともと動脈産業からスピンアウトした業界なんです。
なので本来は、動脈(ものを作る側)でやらなければいけないことを代行しているというのがポイントです。

次に産業廃棄物をどう処理してるかというと、日本の場合は基本的に、自社で全て処理できる業者はほぼなくて、色々と混ざった状態で受け入れた産廃をまず分別して、例えば木くずなら木くずの専門処理業者とか、金属は鉄スクラップを処理するリサイクル業者に持っていくみたいに、分別したうえで分業するのが基本的な流れです。
じゃあなんで分別するかというと、昔は混ざった産廃をそのまま埋め立てていたんですけど、それじゃまずいよねという事でどんどん法律が厳しくなってきた経緯があります。
分けないと出し先がないというところで、みんな適切に分別するようになってきました。
久米 特にバーゼル条約*によって、今まで未分別の廃棄物を途上国に送っちゃえばいいやっていうのができなくなって、国内でのリサイクルが進んだって経緯がありますよね。
※バーゼル条約…先進国から途上国に輸送されていた有害廃棄物の輸出規制に関する条約
新井 はい。本来法律が謳っている「排出者が全部責任持って処理しなさい」を忘れて、とにかく安くやってくれよって排出側がすごく強い時代が長く続いてたんですけれど、バーゼル条約などの変化によって気軽に海外にごみを出せなくなった流れもあって、排出責任をもっと強くしていく流れに回帰しつつあります。

バーゼル条約の絡みで出し先が少なくなって処分費用も上がっているってこともあり、排出企業側がもっと分別しなきゃいけないっていう流れになってきています。
4.これからの産業廃棄物と産廃業界
久米 となると、これまで量をとにかく稼いで安さで勝負してた産廃業界はどうすればいいんですか?
新井 例えば、分別したり処理したりする過程で出てくる副産物にひと手間かけて、付加価値をつけ収益化しようって企業も出てきています。
環境と人で取材した中でも、焼却時の排熱を使ってバナナを作ってる焼却場とか、廃油を精製する過程で出たグリセリンを洗剤にして販売する事例がありました。


付加価値をつけることで再資源化率が上がるし、再生資源を使った製品をより使っていこうって流れが大きくなるんじゃないかと思います。
久米 今までごみとして処理していた静脈産業が、それを原料にして動脈産業の機能を持ち始めるのはすごく面白い動きですね。

新井 そうですね。元々1つだった産業が動脈産業と静脈産業の2つになっちゃって、それぞれリサイクルだ資源だって努力してたんだけれど、動脈産業側もどっか別モノだって見てたと思うんです。
それが今1つに戻っていく流れの中で、これって自社から出たモノだし、資源じゃんっていうふうにどんどん意識転換が起こっていく。そういう大きな流れの中で、産廃業者と排出事業者がどんどん密接な関係になって、今まで以上にコミュニケーションが増えていくんじゃないかと思います。
久米 もっと面白くなっていきそうですね!ありがとうございました。