常識を疑え!日本の家が短寿命な理由


家屋の解体によって多種多様な廃材が大量に発生します。そしていくつかの事情によってそれらの分別は難しく、多くが埋め立てになってしまうという問題があります。

その対処として1つ「長く住める家を作る」ことが挙げられますが、日本のとある常識がこれを困難にしています。

今回は、建築業界における廃棄の諸問題の原因と、長く使える家がなぜ少ないのかという点を解説します。

1.日本の家の解体事情

久米 今回は、日本の家は寿命が短すぎるというテーマでお話していきたいと思います。よろしくお願いします。

新井 まず1.日本の家の解体事情について、2.国産木材を活用すべし3.材料選びとファイナンスで改善できることについて話していきます。

久米 今回は解体現場・家の廃棄についてですが、解体というと大きなショベルカーで一気にガーッと取り壊すようなイメージがあるんですけども、その後っていうのはどのように処分されているんですか?

新井 家の解体には相当な量の廃棄物が出ます。色々なパターンがあるんですが基本的には解体廃棄物を得意としている産廃屋さんに持ち込まれる、もしくはそのまま埋立場に行ってしまうパターンもあります。これがどう決まるかは解体業者の判断が大きいです。

久米 家は鉄も木も廃プラも、いろんなものが雑多に混ざると思うんですけど、それはどう分別されるんですか?

新井 本当に色んなものがあるのでフタを開けてみないと分からないっていうことが多分にあるんですが、ある程度決まっています。例えば木造であれば木・廃プラ・畳とか、鉄筋コンクリートであれば鉄筋コンクリートがらとか、金属系とかですね。

解体系を得意とする産廃屋さんはそれらを分別できるような機械を入れていて、ふるいにかけてというような分別をしていて、木は木くず処理をしてる専門業者、瓦礫であれば砕いて埋め立てする業者に回したりします。

ただやっぱり、鉄筋コンクリートの場合はコンクリに鉄筋がくっついちゃって分離するのが難しかったり、あと石膏ボードもリサイクルが難しくて問題になってます。

久米 石膏ボードは、壁の中に入ってるものですか?

新井 住宅って骨組みに石膏ボードを貼ってその上に塗装したり壁紙を貼ったりしているので、壁紙がくっついちゃって剥がれないとか、そもそも石膏ボード自体がいろんな材質を何重にも重ねているのでリサイクル設備が限られているので埋め立てに行っちゃうといった側面があります。

だから現場で分別してから運び出すパターンだと時間がかかるんです。ただしその分、時間をかければコストを抑えられるんです。

けれど、解体って納期が非常に短いことが多くてそれも難しい。というのも、建設現場って完成の日付が決まってるので、そこから逆算すると解体を2日でやって~みたいな事が多く、とにかく一緒くたに全部運び出しちゃわないと終わらないので分別できない事情があったりします。

久米 分別という視点だと、現場である程度分別してから運び出すのが効率的?

新井 そうです。一度モノが混ざると、その後分別しても質が落ちちゃったりするので、現場できれいに分けるのが一番ですよね。

ただ、家によって使われてるものって全然違うので大変なんですよ。

2.国産木材を活用すべし

久米 環境と人のインタビュー先で、家屋由来の古木を活用した事業をされている方々がいらっしゃったと思うんですけど、そこから得られるヒントはありますか?

新井 それは「山翠舎」っていう古木を使う会社さんですね。今から80年前以上の木造建築で使われてる木材を古木と定義して、解体するときにきれいに外し、そのまま新しく店舗のしつらえとかに使う事業をやられているところです。

古木と古民家の価値を広める 山翠舎が考えるサーキュラー建築

そこの社長が仰っていたんですが、なぜ80年前かというと戦前の日本の家は良い木材を使っているので、1,000~2,000年保つからです。

久米 スギとかヒノキとか?

新井 はい。こうした良質な材は、柱として加工した後にすごく長い時間をかけてだんだん硬くなっていい感じの材料になるので、戦前の古木は今からすぐ作ることができないエイジングが入っていたり、新材ではとうてい出せない味になります。

逆に、戦後の住宅はずっと使い続けられるほどの材をそもそも使っていないので、そうはなりません。大量生産・大量消費型の経済に組み込まれて、質がどんどん落ちてしまいます。

久米 劣化でなく、むしろ硬くなって良くなっていくっていうのは衝撃ですね。

3.材料選びとファイナンスで改善できること

久米 材料選びは良質の材を選んでいきましょうということですね。もう一方のファイナンスはどういった意味ですか?

新井 ファイナンスっていうのは、要は家にいくらかけられるかっていうことです。

仮にいい材料で長持ちする家を建てようとすると当然、初期コストが高くなってしまいますね。一般的な2,000~3000万円の35年ローンっていうパッケージに対して、1億円ではなかなかローン自体を組めませんよね。

ですが山翠舎の社長は「そもそも35年じゃなくて良くないですか?」と。良い家を建てて、孫の代まで住んで返済していく。そうすると木はどんどん味が出て価値が高まるっていうお話をされていました。

そう考えると、いまの日本の住宅はサイクルが短くなりすぎてるんじゃないでしょうか。35年ローンで家を買うっていうのが常識になっているけど、本当にそうなんだっけっていうことを今こそ考えるべきなんじゃないかと思います。

久米 そもそも、なんで35年なんですか?

新井 30歳で家を買って、65歳で定年するまで返済していくっていうライフモデルを元に金融機関が決めたものです。一人が働ける期間で返せる額で家を建ててねっていう。

そうなると、家はせいぜい40年間保てばいいから、結局スクラップアンドビルドになる。それって、長期的に見ると効率が悪いんじゃないかな、そしてそういう価値観がだんだん言われ始めているのが日本の今なんじゃないかと思います。

一方で欧州をみると、当然、地震が少ないとかの地理的条件があるものの100~200年住む前提で家を建てるので、初期投資が高くできるっていうお話を伺って、その方が家のあり方としていいんじゃないかと思います。

久米 ありがとうございました。