商品の機能性とリサイクル性 両立は可能か?


食品パッケージなどに「環境に優しい」「SDGs」と書かれた商品をよく目にするようになってきました。それ自体はすばらしい事ですが、作る時だけでなく捨てた後に正しくリサイクルされているかどうかでいうと、そうでないことが大半です。

今回は、リサイクルを前提にしたものづくりは可能なのか、そしてリサイクル性と利便性は相反するのかについて考えていきます。

1.リサイクルしやすいものとは

久米 今回は、リサイクル性と機能性は両立できるのかというテーマでお話を伺っていきたいと思います。よろしくお願いします。

新井 はい。まずは1.リサイクルしやすいものについて、次に2.リサイクルしづらいものについて、3つ目、機能性とリサイクル性のバランスについてお話をさせていただきたいと思います。

久米 1つ目のリサイクルしやすいものについて、どんなものが挙げられるでしょう。

新井 まずリサイクルのしやすさっていうのは2つあって、分別のしやすさ単一素材かどうかっていうことがあります。これを両方持ってるのがダンボールで、片方だけ持ってるのがペットボトルなんです。

ダンボールでいうと、誰が見てもダンボールってわかる。だから集めやすいし、回収しやすい。さらにダンボールって単一の素材なので、リサイクル処理しやすいっていうところがあります。

もう1つのペットボトルについては、これもやっぱりわかりやすいですよね。ペットボトルも集めやすいし、分けやすい。ただ、実はキャップとラベルとボトルって全部別のプラスチック素材でできているので、単一とは言えないんです。

ただし、回収先の工場でこれらを剥離する技術があるので、ある程度ライン工で処理できるんです。リサイクルの処理っていうのは単価がやっぱ低いので、大規模化が必要なMass(量)の商売みたいなところがあるんですね。

なので、たくさん集めてたくさん処理するっていうのが事業性を保つポイントなわけで、集めやすいとか、単一素材で処理しやすいってことはリサイクル性が高いっていうところに繋がってきています。

2.リサイクルしづらいものとは

久米 ペットボトルはたくさん発生するので、工場で剥離するっていう工程を踏んでも、それなりの量が集まると思うんですけれども、逆にリサイクルしづらいものっていうのはどういったものがありますか?

新井 そうですね。「複合素材」と言われるものはリサイクルしづらいです。食品のパッケージなんかはプラスチックと金属が複合の素材になってることが多くて、例えばポテトチップスの袋って、あれ何気ないですけれど非常に薄いアルミの蒸着のフィルム層がまずあって、その上に何層かプラスチックがあって…みたいに研究開発が重ねられた技術の粋みたいな品なんです。それはつまり中身の商品を長持ちさせるっていう機能性を持たせた上で、コストとの両立を追求した結果なんです。

ただ、これはリサイクル側に回ってきたときに非常に困りものになってるんです。ようは、いろんな素材がくっついちゃっているので、分けられない。なので逆にリサイクル側から見ると、あまり価値がないものになってしまいます。

あとは、紙もいろんな金や銀のゴテゴテした装飾をつければつけるほど、作る側としてはおそらく価値が高いものになるんですが、それがリサイクル側に回ってくると逆に価値が低くなってしまう。逆に、何もプリントしていない白い紙が一番価値が高いという状況になります。

久米 そうなんですね。機能性やデザイン性と、リサイクル性が相反してしまうところがあるということですね。

新井 はい。蒸着がされてしまっているものは、実質もう焼却するしかないです。複合素材のパッケージは現状だと焼却してしまうことがやっぱり多いので、リサイクルを進めていく上では課題となっているところですね。

3.機能性とリサイクル性の両立は可能か?

久米 一方で動脈側、ものを作ったりとか使う人から見た際には、機能性のあるものの方がより便利だったりとか、食品であれば保存期間が長いことで食品ロスを減らすことができるっていうプラスの面もあると思うんですけれども、そこはどのようにお考えですか。

新井 そうですね、食品は長持ちさせた方がフードロスを減らせますよね。そうした利便性っていう面で、機能性を重視するべきところは絶対的にあります。リサイクルする側はどう考えているかというと、この間プラスチックのリサイクルの専門家が集まる会合でそういった話が出たときには2つの意見がありました。

動脈側、つまり生産者側にもデザインや機能から複合素材を減らしてリサイクル性を考えてほしいっていう方と、いや、そういった素材を全部受け入れて動脈側に戻していくことが我々リサイクル側の責務だっておっしゃっているような方の2つの意見があって、なかなか面白いなと思いました。

私自身の意見としては、デザインの部分は、作る側に静脈産業の知識があることで解決できる課題が結構あるんじゃないかと思っています。機能性によってリサイクルしにくくなるのはある程度しょうがないし保持すべき部分があるんですが、デザインっていうのは変えていけるんじゃないかと思っています。

というのも、持続可能性について秀でている欧州のデザイン学校では、改めて「サステナビリティとは」とかを教えなくても、みんな当たり前にサステナビリティとデザインっていうのが大元で1つの概念として融合していると感じたからです。

北欧フィンランドのサステナブルなデザインの思考

無駄なデザインや環境負荷を高めるようなデザインは、当然のように排除していくっていう流れが教育段階でできていると言われていますので、日本もこれからそういった流れを取り入れていく必要があると思います。

久米 はい。

新井 一方で、今まではごみになっていた複合素材をうまく剥がしてリサイクルする技術が日本で生まれてきているので、生産側・リサイクル側の両面で出来ることがあると思っています。特に、日本の場合は分別っていう優れた文化がありますので、複合素材もうまく分別した上で新技術を使えれば、世界でも戦っていけるスキームを作り出せるんじゃないかというふうに考えています。

日本は世界一の「分別細かい大国」?日本は世界一の「分別細かい大国」?

久米 別の動画で、今後再生プラスチック素材を取り合う競争が始まるという話もありましたが、今までリサイクルに回ってなかった物をリサイクルできる仕組みができれば、より多くのプラスチックを救うことができそうですね。

廃プラスチックの奪い合いが始まる?廃プラスチックの奪い合いが始まる?

新井 そうですね。経済合理性を伴った原料の確保っていう面でも、こうした新しい動きに期待したいところですね

久米 ありがとうございました。