「処理困難金属」とその処理方法


金属のリサイクルについては以前紹介しましたが、中には技術的な問題があって処理が困難な金属というものが存在します。そうしたものの大半は埋め立てられ、二度と資源として利用することができなくなっているのです。
今回は、その原因と解決策の1つである「溶融炉」について紹介していきます。

最も循環する金属「鉄」の仕組み最も循環する金属「鉄」の仕組み

処理困難な金属とは

久米 以前の動画で「鉄」は特にリサイクル率が高い素材だとお伺いしてましたが、困難な金属っていうのはどんなものですか?

新井 例えば乾電池は、実はリサイクルできる施設が国内だと2ヶ所しかないんです。

久米 2ヶ所しかないんですね!じゃあ、私達が燃やせないゴミとして出している乾電池は、もしかしたらその2ヶ所のリサイクル施設に届いてない可能性もある?

新井 ありますね。あとは、よく言われるのはコイルが中に入ってるスプリングマットレスです。

このコイルは金属なのでいい原料ではあるんですが、分解が難しいということで処理困難と言われています。

あとはレトルト食品などのパッケージですね。中身はアルミ蒸着でプラスチックとの複合材みたいなものは分離できないので、なかなかリサイクルが難しいと言われてます。

久米 そういったリサイクルが難しい金属製品はどういうふうに今処理されてるんでしょうか?

新井 基本的には焼却もしくは埋め立てに回ってしまっていることが多いですね。

先ほどの乾電池にしても、不燃ゴミとして出てても2ヶ所のリサイクルルートに乗らなくて埋め立てられてしまうパターンとか、マットレスで言えば手で解体している所もあるんですけれども、一つ一つのコイルを手でむいているので非常に手間がかかって多くが焼却に行ってしまったりします。これはアルミ蒸着のパッケージも同じですし、最近だとソーラーパネルも問題になっています。

今設置されてるものが2040年に一斉に廃棄になる「2040年問題」っていうのがあって、ちょっとずつリサイクルの施設が増えてきてはいるんですけれども、まだまだ足りないという状況なので、現状では埋め立てられてしまうことが多いんです。

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処理困難な廃棄物はどう処理される?

久米 埋め立てられているっていうのは衝撃です。私達が知らないだけで、埋め立てって沢山されてるんですか?

新井 はい。基本的には焼却されるケースが多いんですけど、焼却炉でも全部燃えてなくなるわけじゃなくて、中には燃え切らない金属とか瓦礫、石とかそういったものが燃えがら(焼却された後に残ってしまう堆積物)として残るんです。

体積はすごく減ってはいるけど、これ以上燃やせないのであとは埋め立てるしかないものになります。

久米 なるほど。より良い処理方法にすることはできないんでしょうか?

新井 一つは「溶融炉」を使って金属としてリサイクルする方式があります。これは、製鉄メーカーの中でもスクラップという、リサイクルされた金属をまた溶かして鉄を作る、いわゆる「電炉」っていう設備を持っているところなんですが、一部の電炉メーカーではそういった処理困難な廃棄物を受け入れて、製鉄原料としてリサイクルしているところがあります。

久米 乾電池もそれでリサイクルできますか?

新井 はい。通常のごみ焼却炉が800℃くらいなんですが、溶融炉っていうのは、1600℃まで熱するんですね。この温度になると、もはやもう全てなくなる。全て溶けてしまって、有害なものとかも基本的に無害化されます。そこから金属だけ取り出してあげたりして、基本的には100%再資源化ができるという設備になります。

久米 つまり、今埋め立てに回ってしまっているものも、電炉の技術を使えばリサイクルできるっていうことですね。

新井 そうですね、その可能性はありますし、ものによっては処理コストも圧縮できる可能性があります。
何よりも、埋め立ててしまうと電池にしてもアルミ蒸着のパッケージにしても、二度と取り出せなくなってしまうので、資源を循環させるっていう意味では有効なのではないかと思っています。

現状把握と解決策

久米 廃棄物を出す業者さんはどこを見れば、現在の廃棄物の処理状況を知ることができるんでしょうか?

新井 企業の場合、産廃として出したものは基本的にマニフェストという制度を使って最終処分までを追跡できるようになってるので、その伝票の記録を見れば何トンの廃棄物を出して何トンが埋め立てられたかを追えるようにはなってます。

久米 それをチェックして、もし埋め立てが多いようなら、電炉の所に出そうとか検討できるってことですね。

新井 はい。埋め立て量を減らすことは企業にとって、ESGの観点からも求められているので、仕方ないものだと諦めてしまっているものがあるとすれば、1回そういう手段があるということを考えていただければ、埋め立てを減らせる可能性はあります。
ただし、「最終的に溶融炉を使えばリサイクルできるからいいや」ということではなくて、設計の段階から処理困難と言われない製品を作っていかないといけないと思ってます。

久米 そもそも分別ができれば、処理困難というカテゴリに入らずにきちんとリサイクルできるんですよね。

新井 そうです。最近のよい事例としては、ニトリが「解体しやすいマットレス」を出していて、今までは袋を1つ1つ開けなくてはいけなかったところを、ビッと一気に開いて鉄は鉄、プラスチックはプラスチックって5~6分で分別できるようなものが出ています。こうした事例はかなり参考になるんじゃないかと思いますね。

久米 各企業がごみを減らしたり、分別しやすい製品づくりが進むと嬉しいですね。ありがとうございました。