
食品のうち多くが食べられず廃棄されている、いわゆる「フードロス(食品ロス)」について耳にした方は多いと思います。では、どこから生ごみが発生しているのか、問題の本質はどこなのでしょうか。それに加え、日本が今すぐ取り組むべき「もったいない」以外の理由についても解説します。
フードロスはどこから出ている?
飴屋 新井さん、フードロスってなんですか?
新井 フードロスっていうのは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のごみのことで、日本では年間で570万トン出ています。
この量は世界で難民支援などに贈られている食糧物資の1.4倍と言われています。
飴屋 ものすごくありますね。やっぱりそのごみは家庭から出るごみがほとんどなんでしょうか?
新井 家庭から出てくるごみと、レストラン・居酒屋や食品工場などの事業系と言われるものから出るごみとで、だいたい半々くらいになっています。
家庭から出てくるものは主に食べ残しなどの生ごみや、未開封で腐ってしまった食品です。これは、スーパーでモノを買うようになってから飛躍的に生ごみが増えたと言われています。
飴屋 それはなぜですか?
新井 例えば、ニンジンとか3本セットでしか売ってなかったりするじゃないですか。そうすると1本使いきれずに腐らせてしまったり、あとは3つ買うと1つ無料みたいなキャンペーンで「どうせなら貰っておこう」ってなって結局消費できなかったりしますよね。
飴屋 確かに、いらないけど「安いなら・タダなら」って理由で購入してしまう気持ちはすごく分かります。

新井 そういった理由で必要以上に買ってしまうことが多くなったと言われています。
事業系の方でいうと、レストランから出る食べ残しっていうのはある程度しょうがないとは思うんですけれども、例えばホテルのビュッフェとかって終わったら余ったものって全部そのまま捨ててるんですよね。これはやっぱり提供の仕方に問題があるんじゃないかというふうに考えてます。
食品はリユース・リサイクルできるの?
飴屋 食品のリユース・リサイクルは難しいですか?
新井 リサイクルだと、2001年に「食品リサイクル法」が施行されたことによって、事業系のものに関しては結構進んでいます。
例えばパックのサラダを作るためにひたすら野菜を切ってる工場とか、あるいは冷凍食品作ってる工場、コンビニ弁当を作ってる工場など、ある程度まとまった量が出てくるものに関しては、95%ぐらいリサイクルされています。
飴屋 ほとんどリサイクルできてるんですね!
新井 そうですね。
リサイクルには二種類あって、一つは肥料や飼料にする「堆肥化」と、もう一つが発酵させて発電する「バイオガス化」です。
まず堆肥化に関しては、いわゆるコンポスト(堆肥をつくる容器)ですね
飴屋 ガーデニングされてる方が庭に置いているものですね。

新井 そうです。発酵を促進するような微生物が入っていて、かき混ぜながら発酵・分解していくと、いい具合に粉々になり乾燥し、それが肥料になって野菜や果物を育てるんです。
あとは最近だと、コンビニの弁当やソイジョイみたいな袋に入った食品を未開封のまま機械に投入して中身だけ自動的に出し、破砕されて油絞って家畜の飼料にしてリサイクルする技術もあります。切れ目を入れて、風で袋を飛ばす仕組みになっているみたいです。
飴屋 それは面白いですね!
新井 これが食品リサイクルの堆肥化の部分ですね。
もう一つのバイオガス化は、わりと最近の技術なんですが、これも微生物を使って生ごみを一定の環境下に置いて発酵させるんです。そうするとメタンガスが出てきて、そのガスを使って発電をする仕組みになってます。
飴屋 まさか食品がそんなリサイクルされてるとは思ってなかったです。
ちなみにリユース(再利用)は難しいですか?
新井 食品は腐ってしまうものなので、リユースはやっぱり難しいですね。
でも最近だと、ヨーロッパの方や日本でも一部であるんですが、飲食店で余った食材をピックアップ(回収)してくれる人を探したり、お得な価格で買い取ってくれる人を見つけられるようなアプリがあったりします。
飴屋 食品のマッチングをするアプリってことですね。
新井 あとはオランダの例で、その日に出てきた余り食材だけを調達し、その食材だけでメニューを考えるレストランがあって、すごい人気になっています。
もともと高級ホテルで働いていたシェフが、毎日自分たちが使った食品がどんどん廃棄されてるのに耐えられなくなり、そういったレストランを立ち上げたんです。
「もったいない」だけじゃない!取り組むべき理由
飴屋 食品がリユース・リサイクルされてることはわかったのですが、そもそも日本って食料自給率が低いじゃないですか?それは大丈夫なんでしょうか?
新井 そうなんです。4割くらいしかないんです。
これだけ輸入に頼っているのに捨てちゃってるものがあるのは非常に問題ですね。
例えば円安が進んだりとか、ウクライナ問題で小麦が高騰したりとか、そういった世界的な動きがあると輸出国は積極的に自国民の方に回すので、買えなくなる・買い負けちゃうということが起きるわけですよね。
仮に今、日本が食料の輸入を止めたとしたら、イモと味噌汁と米みたいなものしか自給できない戦中・戦後の頃の日本に戻ってしまいます。

飴屋 思っているより結構深刻な問題だったんですね。
新井 ちなみに余談なんですけれども、家庭から出る生ごみはほとんどリサイクルできなくて、大部分は焼却されてしまってるんです。実はこれ、もったいないって話だけではないんです。
生ごみはほぼ水分なのでめちゃくちゃ燃えにくいんです。今までは燃えやすいプラごみが結構あったので、そういうのを混ぜて焼却していたんですが、今はプラスチックをリサイクルしようという流れがあるじゃないですか。プラごみが実際減っていった場合、生ごみだけが残ると燃えなくなってしまうので、燃料を余計に足したりしなきゃいけない問題があります。
焼却場を運営している人たちからすれば、プラごみを減らさないでみたいな話もあるくらいなんです。
飴屋 色んな方向から難しい問題が集まってるんですね。
新井 そうなんです。
だから生ごみであれば、水分をできるだけきって軽くすることがめちゃくちゃ大事ですね。

飴屋 私たちはしっかり意識を持って捨てなければならないですね。
新井 そうです。
あとは家庭用のコンポストも最近は使いやすいものが増えてきているので、肥料にまでできなくても、乾燥させて質量を減らす・水分を飛ばすだけでもごみの輸送効率も上がるし、燃えにくいっていう問題も解決します。ですので、そういったものは積極的に広めていってもらいたいと思いますね。
飴屋 ありがとうございました。