災害で出ちゃった廃棄物ってどうなってるの?


地震や津波といった自然災害は日本各地で起こっているが、災害によって生じた大量の廃棄物をニュースなどで目にしたことはないだろうか。
あれら大量の廃棄物が復興後にはきれいさっぱり消えているが、あの災害廃棄物はどこへ行き、そしてリサイクルは可能なのか、解説していきたい。

「分ければ早い、混ぜたら遅い」分別の重要性

飴屋 地震とか災害時に出た廃棄物って、どうなってるんですか。

新井 災害廃棄物の処理には2つポイントがありまして、

1つ目が「誰がどんなフローで処理するのか」2つ目が「どのくらいリサイクルできて、どのくらい埋め立てられるのか」です。

まず「誰がどんなフローで災害廃棄物を処理しているのか」というと、家庭ゴミと同じで自治体が責任を持って処分するという決まりになっています。

なので、それぞれの自治体ごとに災害廃棄物の処理計画を策定しているところが多いです。

飴屋 自治体で決まってるんですね。

新井 その計画に沿ってまずは集めて、分別をして、処理設備に持っていく流れになっています。

飴屋 最初はごみを集めるところからでしょうか?

新井 そうですね。

集めるのはボランティアさんなどの力を借りて、家や道路から廃棄物をかき出します。次に地域の土建屋さんとか、個人で軽トラを持っている人がトラックに積み込んでいきます。

そしてトラックなどで「仮置き場」っていうところに持っていくんです。

仮置き場がどこになるかは自治体の処理計画で決まっていて、どこかのグラウンドや川辺など、広いところに集めて置いておきます。

その仮置き場で種類ごとに、例えば畳と木くず、瓦、家電、あとは可燃ゴミみたいに

ざっくり分けていくんですね。

そして最後に仮置き場から処理設備に持っていきます。

災害の規模にもよるんですが、処理設備っていうのは自治体の焼却場で処理するのが基本です。

飴屋 普通のごみと同じような流れですね。

新井 フローはほとんど同じですね。

ただ、災害廃棄物も処理しながら、普段の生活ごみも捌いていかなければならないので、交通整理が必要なんです。

そこで重要なのが仮置き場でのごみの分別です。燃える/燃えないはもちろんのこと、どんどん廃棄物が運ばれ来てくる中で、キチンと分けて効率よく燃やしていかないと捌けなくなります。

例えば、畳や布団などは腐り始めるんですよね。

だから次は腐りそうなごみを優先して処理しなきゃいけないとか優先度をつけていくんです。

ですが、混乱している中だと個人でとりあえず仕分けずに処理場に持ち込んじゃう方とかもいて、そこで分別する手間が発生しちゃって、かえって処理が遅くなる。やっぱり分別することが重要なんですよ。

実際に「分ければ早い、混ぜたら遅い」ってスローガンを出して分別の重要性を周知したりしています。

こういったごみ処理の交通整理も自治体の仕事になります。

災害廃棄物リサイクルに欠かせない意外な会社?

飴屋 次にどのくらいリサイクルされてるのか教えてもらえますか?

新井 実は、災害時のリサイクルは進んでます。

諸説あるんですが、ある調査によると、東日本大震災で出た災害廃棄物は全体で約2,000万トンですが、そのうちの1,600万トン(約82%)ぐらいがリサイクルされたというデータがあります。

※環境省:「東日本大震災に係る災害廃棄物等処理について」

飴屋 思ったよりリサイクルされてますね!緊急時だから「埋め立てちゃえ」ってなりそうですが。

新井 そうならないのが日本というか、進んでますよね。

日本は埋め立てる場所がないので「埋め立てない!」「何とかしよう!」ってのがあります。

飴屋 でも、どうやってそんなにリサイクルするんですか?

新井 災害廃棄物のリサイクルに大きく関わったのが、セメント会社です。

セメントって作るときに半分ぐらい廃棄物を入れられるんですよね。

焼却場で燃やし終わったあとに出る「燃えがら」つまり焼却灰なんかをセメントに混ぜたり、ガレキみたいなモノを細かく砕いて混ぜたりすることが可能なんです。

セメントの廃棄物利用率が大きく寄与したことで、、サーマルリサイクル(廃熱利用)も含めてですが1,600万トンという数字になっています。。

飴屋 セメントって優秀なんですね。

新井 そうですね。

再利用できなかった廃棄物のうち、単純に焼却されたのが200万トン(12%)ぐらいで、埋め立てられたのが133万トン(約6%)と言われています。

【燃やすリサイクル】サーマルリサイクルってなんですか?【燃やすリサイクル】サーマルリサイクルってなんですか?

ウクライナ問題で出たガレキについて考えること

飴屋 ちょっとずれますが、ウクライナとかもガレキがすごいですよね。あれってリサイクルされてるんですか?

新井 自分もニュースなどを見るたびに少し気になるところではあるんですが、若い人たちが音楽イベントもしながら、ガレキもどんどん片付けようみたいな動画もあったので片付けは進んでいるのかなって思います。

飴屋 廃棄物の処理は進んでいるっぽいですね。

新井 そうですね。ただウクライナのリサイクル率って元々そんなに高くないらしいんですよ。

なので廃棄物の片付けは進んでも、大半は埋め立てられているのかなって感じました。

その点、日本は災害も多いし、埋立地が少ないという背景から、災害廃棄物の処理はかなり進んでいると思います。

飴屋 復興の際はリサイクルの知恵も活用されるといいですね。

今回のまとめ、2つは覚えておいて!

飴屋 話がちょっとそれましたが、今回のまとめをお願いします。

新井 今回は2点ですが、まずは「どこかで誰かが片付けている」ということです。

地域の人たちが、または日本のどこかで誰かが、災害時の廃棄物処理をしている。いろいろな人や自治体、会社が協力してやっているということです。

飴屋 色んな協力あってのリサイクルですね。

新井次に「意外にリサイクルできている」「セメントすごい」ってことです。

災害廃棄物のリサイクルは進んでいるし、セメントが貢献していることは覚えておいてもらいたいと思います。

飴屋 思った以上にリサイクルできてたし、セメント凄い!覚えておきます!

新井 ちなみに余談なんですけど、南海トラフ地震が起きた場合どのくらい廃棄物が出るのか予測もされていて、東日本大震災の10倍ぐらい、量にして3億トンぐらい出るんじゃないかって言われてます。

飴屋 相当な量ですね。怖いです。

新井 そうですよね。怖いですが備えましょう。

飴屋 備えあればですね。ありがとうございました。