中国が資源輸入をいきなりやめた理由


習近平氏がある1本の映画を見たことで、資源の国際循環の形は大きく変わりました。
今回は、中国の驚くべき「決定力」にもたらされた結果と、学ぶべき教訓についてです。

中国を変えた1本の映画

飴屋 今回は中国が古紙なども含めて、全ての資源輸入をやめちゃったって聞いたんですが、そのあたりを詳しくお伺いできればと思います。

新井 中国がなぜ資源輸入をやめたかというと、習近平さんが1本の映画を観たからだと言われてます。

飴屋 なんていう映画ですか?

新井 「プラスチック・チャイナ(塑料王國)」というドキュメンタリー映画です。

これは実際輸入した廃プラの分別現場といったリアルを映した映画で、中国は廃プラの中でもごみが非常に多く混じっているものも買っていたんですね。

それを人海戦術で使えるもの使えないものを分別するのですが、子供たちまでがすごい劣悪な環境でやってたような状況なんです。それを観た習近平さんは「もうこんなことやってんじゃねえ!」と激昂して、ごみ由来の資源輸入を一切やめるとなったと言われてます。

飴屋 そんなに環境が悪かったんですか?

新井 そうですね。
特にヨーロッパとかアメリカから入ってきたものは分別が全然できてなかった。日本は比較的綺麗だとは言われてたんですけど、欧米の巻き添えになったというか、一緒くたにされて全て駄目になってしまったんです。

飴屋 巻き込まれてしまった形ですね。

誰もが驚いた中国の決定力

飴屋 急にやめちゃうってなったら、みんな困ったんじゃないですか?

新井 はい。めちゃめちゃ困ったし、それは無理じゃないかっていうのを誰もが思ったんですね。それぐらいの世界の資源ごみの売り先といえば中国一辺倒だったんですよ。

それをゼロっていうのはいくら何でも無理だよと、出してる我々も買ってる中国側もそう思ってたんです。
ただこれはもう実際に言った通りに、粛々と実行されてゼロになったんですね。

その後どうなった?

飴屋 結局その問題はどうやって解決されたんですか?

新井 今まで売れてたものが突然行き場がなくなっちゃったんで、焼却するごみと埋め立てるごみが世界的にめちゃめちゃ増えました。

今までは企業側もある程度分別してなるべくごみの処分費を減らそうとやってたところを、中国がどうやら買ってくれるらしいってなって、分別せずにどんどん中国に売っていたんです。

飴屋 それがもう一旦無くなってしまい、これどうするのってなったわけですね。

新井 それで国内の産廃屋さんに処理してくれないかってなったのですが、そんなふうに一斉に来られるとキャパシティがいっぱいいっぱいになってしまったんです。結局資源ごみの行き場がなくなり、処理費が3倍くらいに跳ね上がったりしてしまいました。

飴屋 その後はどうなったんですか?

新井 またなるべくごみが出ないような形で分別をしっかりやるようになったりとか、あとは、東南アジアなどに向け先を少しずつ変えていき、段々と影響が均されているのが現状ですね。

飴屋 海外への輸出に頼らず、少しでも自国で減らすように進めているところなんですね。

新井 その通りです。この20年間ぐらいで中国の経済成長を背景とした資源ごみの国際化時代があったんですが、その中国によって強制的に終わらされたんです。

これによって、海外への輸出に頼るのはリスクであること、なるべく国内で循環させるのが良いという教訓が世界的に得られたのかなと思っています。

飴屋 急に大変なことになりましたけど、結果的に良い教訓を得られた出来事だったんですね。

新井 そうですね。この教訓を生かさなければならないですね。

飴屋 ありがとうございました。