ガラスびん水平リサイクルとサーキュラーエコノミー

約50年前は、ガラスびんはリユースすることが当たり前で、びんを返却し詰め替えるのが当たり前の資源循環の形でした。しかし、時代とともに返却・詰め替えではなく、回収・リサイクルするワンウェイびんが増えてきました。

そこで、大手企業各社と提携しガラスびんリサイクルに向けたワンウェイびん回収を始めたのが株式会社 三裕の創業者 秋田勝彦さんです。先代の意志を受け継ぎ、ガラスびんのみならず、様々な素材のリサイクルに取り組まれています。そこで今回は、サーキュラーエコノミーのお手本ともなる、ガラスびんのリサイクルの歴史や具体的なリサイクルフローについて、社長の村瀬さんのインタビューをお届けします。

ガラスびんの仕入れルートは「業務用酒販店」と「清掃業者」が中心

ー事業内容を教えてください。

弊社は主に「ガラスびん」のリサイクルをやっています。

その中で最も多いのが、飲食店向けにお酒を卸している「業務用酒販店」から集めたガラスびんです。彼らは商品搬入の際、同時にビールや日本酒、ワインボトルなどの空きびんを回収しており、それを当社で受け入れています。

集めたガラスびんは色選別をして、多くはもう一度ガラスびんの素材となる「びん to びんの水平リサイクル」に回しています。それに適さないものは、建材として需要のあるグラスウールや路盤材などにリサイクルされます。

もう一つの主要なルートは清掃業者(事業系一般廃棄物処理業者)で、清掃業者が色々な企業や店舗などから集めて、色や素材ごとに選別したものが弊社に持ち込まれています。

また、コロナ禍で飲食店ともども大きな打撃を受けて、別事業を模索している中でペットボトルの回収・受入れも開始し、現在では「ペット to ペットの水平リサイクル」も加え業務にあたっております。

ーガラスびんのリサイクルは自社で行っていますか?

当社の機能は基本的には回収と選別です。その後は再生カレット原料としてカレット業者に納入し、そこで更に細かく選別・洗浄・破砕により再資源化され、それがびんを作るメーカー等によって再商品化されるというのが、びん to びんの水平リサイクルです。2016年より当社でもカレット化設備を新設し、主にグラスウール向けの再資源化を行っています。

高速で流れるびんは人の手によって色選別されている。

ー選別はどのように行っているのでしょうか?

一般的な基準だと「透明」「茶色」「その他」の3色ですが、弊社では「透明」「茶色」「緑」「黒」「その他」の5色に選別します。

この業界ではびん to びんが主流のリサイクルですので、選別数を増やすことでそれに適さない「その他」が数%しか出ないため、リサイクル率を高めることができます。色で分けるのは、それがそのまま再生びんの色になるためです。例えば「茶色」は茶色びんの原料になり、「透明」は何色でも作れるので価値が高いのです。4色に分けると4色それぞれのびんの原料になります。

かなりの量を扱うので、選別ラインのコンベアはすごいスピードで流れています。それを素早く的確に捌く技術がとても重要なんです。同時にやはり、そもそも不純物が入らないよう排出元で事前に分別いただくことも大事です。

1973年創業の老舗企業「株式会社 三裕」の創業ストーリー

ー創業に至った経緯を教えてください。

株式会社三裕は、1973年にワンウェイびんの回収事業から始まった会社です。創業のタイミングで、サントリー社の「オールド」というウィスキーが爆発的に売れました。それまではワンウェイびんは少なく、回収・詰め替えをして繰り返し使用するリターナブルびんが圧倒的に多かった時代です。

洗って何度も使う「リターナブルびん」とは 容器の資源循環を考える

しかし、ワンウェイびんが使われていたオールドが大ヒットしたことで、大量の空きびんが市中に溢れる事態となりました。当時、ワンウェイびんを専門に回収できる会社はなく、サントリー社から依頼を受けて創業者の秋田勝彦が回収事業を開始しました。

ワンウェイ容器回収システム開発の功績を讃えサントリーから授与された感謝状

ー最初はサントリー1社のために空きびんを回収していましたか?

はい。最初は、サントリー社専属の回収業者として、業務用酒販店からワンウェイびんを回収してリサイクルに回していました。

当時は高度経済成長に伴って廃棄物処理が追いつかない状態でした。ワンウェイの空きびんは大半が破砕して埋め立てられていたため、この回収システムは画期的だということで、サントリー社の2代目社長である佐治敬三社長から感謝状をいただきました。

そして、5年ほどかけて他のメーカーの空きびん等も回収できるようになり、ワンウェイびん回収の専門業者として業務用酒販店からまとまった量を集めるようになってきました。

そもそもガラスびんはどうやって作られるの?

創業社長の秘書からキャリアをスタートし、現在は代表取締役社長を務める村瀬さん

ーそもそもガラスびんの原料は何ですか?

珪砂(けいしゃ)とソーダ灰と石灰石がメインで、主原料は珪砂です。これらを高温で焼成することでガラスができあがります。珪砂は、世界中どこでも取れる安定した資源なので資源価値は低く、今後も上がらない見込みです。古紙や金属などと比べても市場価格は低いため、プレーヤーも少ない業界となっています。

コストや加工のしやすさから飲料容器としては優秀で歴史もあるのですが、重いため輸送効率が悪く、使い捨て用途では扱いやすいアルミ缶やペットボトルにその地位を譲ってしまいました。ちなみに窓ガラスや自動車内装のガラスは、色々な手法で機能や付加価値を高めた製品ですのでガラスびんとは同時には扱えません。

ー今、日本で使われているガラスびんはどの程度再生カレットが使われていますか?

食品や飲料で使うびんの原料はほとんどが再生カレットで、約73%が国内回収、輸入しているバージン原料は残りの20%程度です。

バージンだけでびんを作ろうとする場合は、温度をかなり高くしないと溶けません。一度ガラスになったリサイクル素材を混ぜることで、再びガラスびんを作る時の温度を何百度も下げられます。これが大きなコストメリットとなっており、汎用品に再生カレットが使われている理由です。一方で薬品を入れるびんなどはバージン原料で作ることが一般的です。他にも硬質ガラスや耐熱ガラス、フラスコ、ビーカーなどはバージンで作られることが多いです。

ーびんに色の違いがあるのはなぜですか?

太陽光が中身に与える影響を軽減するためです。あとはデザイン性ですね。例えば高級シャンパンなどは窪みにLED電飾が入っていて光るものがあったりします。見た目はきれいですが、リサイクルはできないのでこれを取り除く選別が大変なんです。

その他、ガラスびん以外の容器(陶器製のカメや焼酎瓶・樽酒など)も受入れしますが、陶器は路盤材、樽酒は手作業でしめ縄などを外し木製チップ(家具などの原料)のリサイクル業者へ納入し、リサイクルされます。

ー先ほど自社で行われていると仰っていたグラスウールとはどんなものですか?

グラスウールはガラスを繊維状にほぐしたもので、建物の断熱材や吸音材として使われます。簡単にいうと綿飴を作るような作り方で、弊社はざらめに当たる部分を作っています。

製造工程では異物を全部とって、決められた粒度にガラスを細かく砕きます。グラスウールで使われる素材は100%リサイクル材ですが、建物の解体時などに出たものは埋立処分になることが多いです。

グラスウール to グラスウールは技術的には可能とは思いますが、ガラス自体が素材として付加価値があまり高くないため、現状はあまり行われていないと思います。

グラスウール向けカレット化設備の前処理工程

ガラスはリサイクルしやすい優秀な素材

ーびん to びんの水平リサイクルは、仕組み化が完成していますね

はい、ガラスのリサイクルに占める割合は最も大きいです。リターナブルびんによるリユース、びん to びんの水平リサイクルともに可能な素材は実はあまり多くありません。ガラスは間違いなく最も環境に優しい素材の一つだと思いますし、近年ではLOOPなど新たなリユースの仕組みも出てきていて、その価値が見直されている面もあります。

ー処理業者として消費者やメーカーにお願いしたいことはありますか?

ガラスびんについては歴史も長く、酒販店やメーカーとも連携が取れているので特にはありません。一方でペットボトルを例に取ると、最近増えてきているノンシュリンクボトル(ラベルレス)は非常にいいなと思いますが、買う側からすると少し不便だという声もありますよね。

処理業者の立場から言わせていただくと、ラベルやキャップを取れば、マテリアルリサイクルが可能で、再びペットボトルに再生できます。メーカー側が努力や工夫をすることも大事ですが、やはり消費者が一手間かけて分別することが一番大切だと思います。

コンビニや自販機横のごみ箱にペットボトルを捨てる時にも、飲み残しが入ったまま捨てられたり、ラベルやキャップがついたまま捨てられていたりと、まだまだ改善の余地は多くあります。

ペットボトル飲料は安く売られているからこそ、雑に扱いがちですが、一人ひとりができることを少しずつでもやっていただければ、さらにリサイクルが普及する社会になると思います。

取材にご対応いただいた代表取締役社長 村瀬二重様(左)と常務取締役 油谷征伸様(右)

ー最後に今後の展望について教えてください。

酒販店から排出される可能性のある廃棄物は、全て弊社で適正な許認可を持って処理できるようにするという目標があります。本来びんだけであれば運搬にも処理にも行政の許可は不要ですが、混じってくる陶磁器などは判断が微妙なものもあります。同じ役所の人でも専ら物だという人もいれば、産廃だという人もいるので、産廃の許認可をとる必要があります。

産廃にまつわる二大事件から得た教訓

そのため、今後も必要な許可は適正に取得しつつ、お客様にご提供できるサービスの質を上げていきたいと思っています。また、弊社で働いてくれている従業員の方々にはとても感謝しているので、働く環境の整備にももっと力を入れて、少しでも働きやすい環境づくりを進めたいです。

ーありがとうございました。

2023.05.11
取材協力:株式会社三裕
http://www.sunyou-group.co.jp/