
個人でできる環境への貢献は、日常の小さなアクションだけではありません。住宅をサステナブル(持続可能)なものに変えるのもひとつの手段といえます。今回は、サステナブル住宅の代表例であるゼロエネルギーハウス(ZEH)とは何か、そして環境だけではないさまざまなメリットを紹介していきます。
1.ゼロエネルギーハウス(ZEH)とは?
久米 今回はサステナブル住宅、ゼロエネルギーハウスについてお話をしていきたいと思います。ではまず三つのポイントからお願いします。
新井 まず一つ目がゼロエネルギーハウスとは何か、二つ目はゼロエネルギーを実現する手段、三つ目がインフラ・災害対応としての重要性についてお話させていただきたいと思います。

久米 ずばり、ゼロエネルギーハウスっていうのはどういった住宅なんでしょうか?
新井 Zero Energy Houseの頭文字をとって「ZEH(ゼッチ)」と呼ばれたりするんですけれども、簡単に言うとエネルギーの収支をNET(正味)ゼロにする住宅です。
つまり、電気を使うことをマイナスとすると、そのぶん太陽光パネルとかで発電してプラス分を作って、相殺して合計ゼロにしましょうというのを実現する住宅のことですね。
久米 なるほど、カーボンニュートラルと似た言葉なんですね。
2.ゼロエネルギー達成の手段
久米 先ほどは太陽光パネルでの発電が例として挙がりましたが、ZEHを達成するために他にはどんな手段があるんでしょうか?
新井 創エネ、断熱、省エネの3つがあると言われています。
創エネはエネルギーを作ることです。太陽光パネルを設置して発電したり、なんならそれに加えて蓄電池を設置して電気を貯めて家庭内で使うみたいに、エネルギー収支のプラスを作ろうってことですね。
次に断熱っていうのは極端に言うと、エアコンなしで過ごせる空間にしましょうということです。壁をしっかり断熱して外気の寒さ・暑さをシャットアウトすることで、部屋の中を一年中過ごしやすい気温に保つ空間にしようみたいな意味ですね。

東北地方とか欧州の北の方では断熱住宅がすでに一般的になっているんですけれども、しっかりとした断熱住宅は、たとえ真冬でもTシャツで過ごせたりするくらい温かいんです。これはつまり、エネルギー効率がいいということになります。
久米 断熱材を積極的に使うっていうことですか?
新井 そうですね。断熱材を壁と壁の間にしっかりと入れることは重要です。あとは窓ガラスをペアガラスにするだけで、かなり断熱効果が違うと言われてます。
久米 なるほど、エアコンを使わなくていいとなると経済的にも良さそうですよね。
新井 はい。それに、冷房で体調を崩したりもしにくく健康に過ごせるということで、最近特に注目されています。
最後の省エネについてですが、シンプルに、最新の省エネ家電を使おうって話ですね。日本は特に省エネ技術が進んでいますので、エアコンにしても冷蔵庫にしても、最新の省エネ家電に変えていきましょう、そしてそれを長く使っていきましょうということです。
久米 省エネと断熱によって使うエネルギーを極限に減らしつつ、そこでマイナスになった部分を創エネで補っていくということですね。
新井 そうです。
ちなみにZEHってオール電化が基本ではあるんですが、それ以外にエコキュートっていう省エネシステムが昔からあります。オール電化じゃない家は都市ガスを燃やして給湯器でお湯を温めているんですが、エコキュートはただ温めるだけじゃなく、その時の熱で発電もできるシステムです。なので、こういうものを組み合わせると、さらに省エネが進んで経済的にもいいし、よりサステナブルになっていくと言われています。
3.災害対応としての重要性
久米 私の創エネについての考えなんですが、環境とか経済的なメリットはもちろん、災害時に自分たちで電力が作れるというのはすごく災害対策になるのでいいなと思っています。
新井 おっしゃる通りです。災害といえば「水」も大事ですね。水資源が豊富な日本では普段あんまり意識しないですが、災害時などに断水した時にどうするかは、エネルギーと別軸で問題になりますから。
久米 世界全体では水資源不足と言われてもいますね。

新井 はい。そうした中で企業にも対応が求められていて、ESGの評価指標の中でも気候変動と同列に水資源の管理についての項目があるくらいです。
久米 日本で暮らしていると、蛇口をひねればいつでも飲用可能なレベルの水が出るので、私たちには意識しづらいですよね。
ですが、私の地元である静岡市は昨年(2022年)9月末に台風15号によって断水してしまいまして、長いところだと1週間以上も断水が続きました。そのため、地域内のスーパーでも水が売り切れて困ってしまったことがあったんです。東京にいた私は急いで車に積めるだけの水を買って地域に持ってくっていうことがあったんですけど、やはりその災害を通して水の有り難さを改めて感じました。
太陽光パネルでエネルギーが作れるという創エネの話がありましたが、一方で水を作り出す仕組みとか機械って意外とないんだなっていうのも思い知りましたね。
新井 雨水を貯めて使う機構は昔からありますが、一般的なのはそれくらいかもしれませんね。それから、水を作るだけでなく、限りある水を大切に使う「水のカスケード利用」という考え方があります。
これは、洗濯に使った水をまたトイレを流すのに使うみたいに、汚くなってもいい用途に段階的に下げていく仕組みが住宅の中にあってもいいんじゃないかなっていうのは思ったりもしますね。今後の住宅には、エネルギー収支だけでなく水資源の利用っていう面も必要になってくるかもしれません。
久米 なるほど。先ほど触れた水のカスケード利用を仕組み化できれば、災害に対する対策が高まって、それが結果として豊かな暮らし・安心できる暮らしに繋がりそうですね。ありがとうございました。