
再生可能エネルギーを普及させるために2012年に開始した「FIT制度」によって、太陽光パネルをはじめとした再エネ事業者が急増した。
しかし、後工程についての検討を宙吊り状態のまま進めたことで、来る2040年に太陽光パネルが大量廃棄される未来が予測されている。
今回は太陽光パネル大量廃棄問題について解説する。
「太陽光パネルの大量廃棄問題」とは
飴屋 再生可能エネルギーってすごく推されてますけど、何か問題とかありますか?
新井 そうですね。太陽光パネルの大量廃棄問題がありますね。
2012年に日本でもFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)ができましたが、これは太陽光パネルや風力などの再生可能エネルギーで作った電気を国が一定の価格で買い取る制度です。

再生可能エネルギーを普及させるための制度で、制度が始まったらいろんな発電事業者が参入してきてどんどん太陽光パネルを買って設置をしたんですが、それらの太陽光パネルの寿命が2040年頃って言われています。
たくさんの発電事業者が一斉に太陽光パネルを設置したので、壊れるのも一斉に起きて、壊れた太陽光パネルが大量に廃棄されるだろうと予測されています。
そしてその大量に廃棄された太陽光パネルをどう処分するかが問題になっています。
太陽光パネルをリサイクルしづらい理由①
飴屋 廃棄される太陽光パネルってリサイクルできないんですか?
新井 技術的にはリサイクルできるんですが、現実的にはそのまま破砕されて埋め立てられるケースが多いです。
理由は2つあり、まず1つ目は太陽光パネルのリサイクルは専用設備が必要なんですが、その設備が国内には少ないんです。

太陽光パネルはガラスや発電シート、アルミフレームなどの部品や発電シートには銀などの材料が使用されています。これらをガラスはガラス、アルミはアルミって感じで綺麗に分離すればリサイクルは可能なんです。
ただ太陽光パネルのリサイクルができる設備は増えてはいるんですが、まだまだ少ないのが現状です。
設備が少ないため通常の産廃屋に太陽光パネルを持ち込んだりしても、産廃屋はそのまま砕いて埋めるしかないんですよね。
あとは廃棄量が多いと設備があっても、さばききれないみたいな問題がありますね。
太陽光パネルをリサイクルしづらい理由②
飴屋 リサイクルしづらい2つ目の理由ってなんですか?
新井 2つ目の理由は製造メーカーの規格が統一されていないことですね。
規格が揃ってないのでこのメーカーのものはこの機械ではリサイクルできるけど、他のメーカーだとこの機械ではリサイクルできないといった問題です。
国内メーカーだったら規格について問い合わせすることもできるんですが、中国製のものとかになると聞くことも難しかったりするわけです。
中国製の太陽光パネルもたくさん入ってきて設置されているので、規格がバラバラという問題は解決できないですね。
また、ある程度綺麗で規格もわかっていればリユースやリサイクルもできるんです。
少し手直ししたり掃除したりして海外に輸出するリユース・リサイクルの業者もいるんですが、いろんな規格の太陽光パネルがあるので全ての太陽光パネルをリユースするのは現実的ではないですよね。
飴屋 このまま2040年を迎えるとどうなりますか?
新井 大量に廃棄されるのは少し先の話なのでそれまでにリサイクル設備が十分に増えればいいんですが、対応できるほどのリサイクル設備がないと、埋め立てることになりますね。

でも埋め立てってすごいコストがかかるんですよ。
太陽光パネルを設置した発電事業者が2040年ごろまで残っていればいいんですが、廃業してたり残っていても処理費用を払えないとか、払えないから逃げたり不法投棄したりとか、すでに色々な問題が指摘されています。
飴屋 設備を増やして十分に対応できる未来にしたいですね。
教訓:せっかくのエコも、後先考えねば害がある
新井 FITによって「なんか儲かるらしい」ってノリで参入しちゃった事業者もたくさんいるんですが、全部の事業者が先のことまで考えて参入したのかっていうと、そうではなかったのは問題があったと思います。
飴屋 後先考えずやっちゃった感じはしますね。
新井 そうなんですよね。そして最後は税金使いましょうとかって話になって、国民の負担になるわけですよね。
太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーにバンバン参入させるのはいいけど、その先のことも考えて参入してもらわないといけないよねってことです。

そうならないためにも「リサイクルどうする?」「廃棄どうする?」「最初に規格を統一しよう!」「回収するシステムを同時に作ろう!」みたいな議論を同時に考えてくださいよってことはもうちょっと言っていきたいですね。
飴屋 後処理までちゃんと考えていきたいですね。ありがとうございました。