脱炭素とカーボンニュートラルって何?


脱炭素、カーボンニュートラル、炭素税、カーボンクレジット…地球環境を巡る議論では難しい専門用語が用いられがちである。

知らない方はなんとなく知っていても説明はできないという方も多いかと思う。

今回は環境問題でよく使われるワードを分かりやすく解説する。

カーボンニュートラルってなに?

飴屋 最近脱炭素やカーボンニュートラルってよく聞きますが、どのようなものですか?

新井 カーボンニュートラルとは「地球の生き物などが排出した二酸化炭素の量」と「森林や海、地面が吸収する二酸化炭素の量」これを差し引きしてプラスマイナス0にするという概念です。

飴屋 今はプラスマイナス0じゃないんですか?

新井 今は大気中の二酸化炭素が増えている状況です。

2015年にパリ協定という国際協定が成立しました。

これは地球温暖化のためにアクションをしようという協定で、今世紀後半までにカーボンニュートラルを地球規模で実現することを目標にしていて、世界の86%ぐらいをカバーする非常に大きな協定となっています。

脱炭素ってなに?

飴屋 もう一つの脱炭素ってなんですか?

新井 脱炭素はよく誤解されがちですが、脱化石燃料のことで石油・石炭・天然ガスを減らしていくということです。

カーボンニュートラルを目指すのに、排出量を減らす考え方と吸収量を増やす考え方があり、どちらで達成してもいいのです。

極端な例で話しますと、例えばミドリムシを死ぬほど培養して吸収量も異常な量まで高めれば、それで達成できます。

もちろん現実的ではないので、ひとまずCO2の増加の主な原因とされている化石燃料を減らしていこうというのが脱炭素で、カーボンニュートラルを目指す手段の一つという位置付けです。

飴屋 なるほど。脱炭素を進めるとカーボンニュートラルになるということですね。

具体的にどうやってCO2排出を減らしてる?

飴屋 脱炭素とカーボンニュートラルを進めるにあたって、具体的な取り組みは何かありますか?

新井 まずは、CO2を出さないクリーンな再生可能エネルギーでの発電を増やすことが挙げられます。太陽光発電や風力発電ですね。

そして、これらを推進するために定められたFIT(再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度)という制度があります。

元々、発電事業者は火力発電や原子力発電を大規模にやっていますよね。

なので新規事業者が太陽光発電で発電事業に参入していくのはハードルが高く、価格面でどうしても負けてしまう。

ただ、それだといつまでたっても再生可能エネルギーの導入が進みません。

そこで国が電力価格の差額分を一定期間補填し、その間に設備投資や効率化で価格競争力をつけてください、という制度になります。

この制度のおかげで日本でも再生エネルギー事業者がすごく増えて、導入量がかなり進んでいます。

飴屋 なるほど。他にはどんなものがありますか?

新井 あとは炭素税とカーボンクレジットがあります。

炭素税とは、気づいてないかもしれないですが、日本の場合、既に国民全員に一律にかけられています。

飴屋 私も払っていますか?

新井 はい。電気代に含まれる形で払っています。

電気代には地球温暖化対策税や再エネ賦課金という形で、二酸化炭素排出量1トンに対して一律289円(2022/07/08時点)の税金がかけられています。

これは先ほどのFITの原資になったりもしています。

炭素排出をお金でやりとりする時代

新井 もう一つのカーボンクレジットは日本ではあまり導入が進んでいないですが、世界では取り入れている地域も結構ある制度です。

これは国が特定の業界や地域に対して、ここまでならCO2を出していいですよっていうボーダーラインを決めます。

それに対して対象となる各企業が再生エネルギーへの転換など脱炭素を進め、CO2排出量を減らしていくわけです。

ただ減らせる量というのは企業によって違いますよね。

仮にすごく減らせた企業と、ボーダーラインを超えた企業があったとして、減らせた企業はそのボーダーラインを超えて減らせた分を他社に排出権という形で販売できます。

どうしても超えてしまう企業はそういったところからお金で買って、全体で言えば、ボーダーラインに収まりますよ、という制度です。

この炭素税とカーボンクレジットを総称して「カーボンプライシング」といいますが、二酸化炭素に対して価格を付けるという意味で、そう言われています。

飴屋 「カーボンプライシング」わかりやすいですね!

日本はどのくらいCO2出してるの?

飴屋 ところで、世界と比べて日本はCO2をどれぐらい出しているんですか?

新井 世界5位で、3.2%出しています。

飴屋 多いのか少ないのかよくわからないですね?

新井 そうですよね。このランキングでは上位5位が約半分を占めており、1位が中国で29%、2位がアメリカで14%です。

ただ人口当たりで割ると、日本は世界3位なので、かなり出していると言われています。

出典:EDMCエネルギー・経済要覧2022年版

新井 ただこのカウント方法は難しいところがあります。

例えば中国に工場を持っているアメリカの企業の排出量はどちらにカウントされるのか?

カウント方式によっては中国にカウントされますので、いくら中国がトップでも上位を占めているすべての国が考えていくべき問題ではありますよね。

飴屋 やっぱり日本も脱炭素を頑張らないといけないですね。

新井 当然進めていくべきです。

ただこれは持論ですが、二つのことをバランスよく考えるべきだなと思っています。

まずは「脱炭素」っていうパワーワードに引っ張られすぎないということ。

もう一つは化石燃料ともうまく付き合っていこう、ですね。

というのも、「脱炭素をすべきだ」「化石燃料は悪だ」「再生可能エネルギー100%にすべきだ」こういう極端な話がよく聞かれるようになってきました。

そうなると次に「火力発電は撤退しましょう」みたいな話が出てくる。

すると今度は電力ひっ迫みたいなことがずっと続いてしまったりする。

さらに原発はどうするという議論も置き去りになっています。

飴屋 ずるずると色々な課題がでてきますね。

新井 エネルギー政策の話ですから、極端に振り切ってしまうと生活や安全に支障が出ますよね。

そしてもう一つの「化石燃料とうまく付き合っていこう」っていうのは、今まで化石燃料で活用してきたインフラやコスト面なども多面的に捉えて、カーボンニュートラルに向けた手段の一つとして脱炭素を考えようということですね。

総じて、極端にならずバランスをとっていくことが大事なんじゃないかなと思います。

飴屋 バランスよく考えていきたいですね。ありがとうございました。