環境配慮をしたい人が、バイオプラスチックを使ってはいけない理由

台湾製のバイオマスプラスチック。代表的な原料はキャッサバなど。

最近、近所のスーパーで、「当店のレジ袋はバイオマス原料を25%使用しています」という表示を見かけるようになりました。

店側は、それが「いいこと」だと思うから書いているのでしょう。

しかし、本当にそうなのでしょうか?

確かに、生物資源(バイオマス)を原料につくられるプラスチックなら、燃やしてもCO2は増加しません。

ただし、それは単純に燃やすことを前提とした話です。

普通のプラスチックとバイオプラスチックが混ざるとどうなるか

実は、レジ袋は焼却処理を減らすため「容器包装プラスチック」として、法律でリサイクルが推奨されています。袋の製造者や提供するスーパーなどが、使用量に応じてコストを負担する仕組みです。

リサイクルのコストは、回収と選別です。

一口に「容器包装プラスチック」と言っても、例えばレジ袋(PE)・食品トレー(PS)・ペットボトル(PET)は全て違う樹脂でできています。

これらを一括で集めてくるため、樹脂ごとに選別しないとマテリアルリサイクルはできません。

では、PEだと思って使おうとした原料に、25%のキャッサバ入りレジ袋が混入するとどうなるのでしょうか。

実際に廃プラスチックのリサイクルを手がけるプロに話を聞きました。

「全く売り物にならなくなっちゃいます。弊社で製造しているLLDPEの再生ペレットはごみ袋に使われることが多くて、薄くするときに異物が混じってると、そこから破けるんです。」

田上新九郎 株式会社ファーイーストマテリアル代表取締役/ 千葉県佐倉市の事業所で廃プラスチックの有価買取と再生ペレットの製造販売を行う。自社車両によるストレッチフィルムの回収も対応しており、排出した廃プラスチックを使用した製品の納入によるリサイクルループの構築など、廃プラスチックに関する総合コンサルティング事業も手がけている。https://fareastmaterial.com/

見分けのつかない新素材はリサイクルの問題児

同じようなことが昔、古紙でもあったことを思い出します。

紙の代替素材という触れ込みの「ユポ」というプラスチック製の紙が、印刷工場から損紙として廃棄される際、普通の紙と混じってしまう問題がありました。

プラスチックなので当然、古紙と一緒に処理してしまうと設備や製品に支障をきたします。

選別するにしても、ユポは見た目が紙そのものなので、見分けるのはほぼ不可能です。

古紙の選別現場。国内で発生する古紙の約50%は印刷関連工場から発生する。

印刷工場側で対応してもらうしかありませんが、現実的にそこまでできない現場もあります。

ユポ自体は理想的な素材で、サーキュラーエコノミーの原点とも言われる著書「サステイナブルなものづくりーゆりかごからゆりかごへ」でも取り上げられています。

しかし、全ての紙がユポに置き換わりでもしない限り、リサイクルがシステムとして社会に実装されている紙のような素材では、中途半端な新素材はシステムの阻害要因になることもあるのです。

バイオプラスチックを正しく理解する

冒頭のスーパーの例だと、25%のバイオマス原料を使用しているレジ袋は、焼却処分する前提であれば、25%分はカーボンニュートラルと言えるでしょう。

しかし、紙と同様に既存のプラスチックを前提としたリサイクルシステムに混入した場合、問題児となります。

積極的にリサイクルを進めている自治体や業者にとっては、負担が増える話です。

そもそも、「バイオプラスチック」という用語は、「生物原料もしくは生分解性、またはその両方の性質を持つプラスチック」の総称で、海外ではあまり用いられない言い方です。

正しい分類を以下の図に示します。

気候変動問題にはバイオマス由来のプラスチック」「海洋プラスチック問題には生分解性プラスチック」という具合に、目的に応じて使うのが正しいでしょう。

ただし、現在の生分解性プラスチックでは海洋プラスチック問題は解決しません。

前述の田上社長はこう言います。

「今の生分解性プラって、例えば土に埋めて半年経ったら分解されますっていうものなんで、実際に川とか海に飛散して環境がコロコロ変わっていく場合、ちゃんと分解されているかというと、してないはずなんですよ。」

実際、農業マルチ用途などでは非常に意味があり、普及が期待されていますが、本来は上記のような環境変化の中でも分解されるプラスチックの開発に期待している段階です。

安定的なリサイクルとは出口を広げること

まとめると、

  • リサイクルするなら石油由来プラスチックをしっかりルートに乗せる。
  • 焼却するならバイオマス由来プラスチックを使う。
  • 化石燃料消費を減らすならバイオマス由来プラスチックを使う。
  • 現在の生分解性プラスチックは海洋プラスチック問題とは関係ない。

理想は「バイオマス由来プラスチックをリサイクルする」ですが、既存のシステムを考えると難しいのが現実といえます。

前述の田上社長は、現状必ず出てきてしまう廃プラスチックから作った再生ペレットをまず使うべきと主張します。

マテリアルリサイクルを安定的に回すには、出口を広げないといけないんです。国内の再生ペレットの需要を喚起するような後押し、法制度とか、使用した人に対してのメリットなどのサポートがあれば、もっと早く循環型社会への移行が進むと思います。」

インタビューに応じてくれた株式会社ファーイーストマテリアル田上社長。

石油であれバイオマスであれ、新しく作る前に再生ペレットの使いみちを広げ、価値を高めることでリサイクルの経済がうまく回るのではないでしょうか。

2021.04.20

取材協力:ファーイーストマテリアル株式会社