最新マシンの導入によって産廃業界の人材不足打破へ繋げる

株式会社首都圏美化センター インタビュー②

東京23区における事業系廃棄物の回収・運搬・中間処理を行う株式会社首都圏環境美化センター。前編では、廃棄物回収における現状や課題を中心に、今後静脈産業がどのような方向に進むべきかについても伺うことができました。後編では、さらに廃棄物の選別における人材不足とともに、それを解決に導く最新技術についてご紹介していきます。

あなたのオフィスビルで出ているごみ、その行き先を知っている?

光学選別機が廃棄物分別の現場を変える

―回収後、選別するのが大変だというお話しがありましたね。弁当ガラの中に割り箸やお手拭きが入っていたり、廃プラスチックの中に金属くずが紛れ込んでいたりするのを、一つひとつ取り除いていかなければならないと。想像するだけでもとても大変な作業です。

由泰氏 まず袋を破り、人の目で見ながらライターや電池を除去していくので、とんでもなく時間がかかります。

―そこで導入されたのが光学選別機になるわけですよね。光センサーを利用して、ペットボトル材質や色を選別し、不純物の除去などをする機械だと聞きました。導入によってどのような変化がもたらされましたか?

由泰氏 まさに省人化です。もともと当社の第1RCという飲料容器の選別施設の処理能力としては1日全体で5トンほどで、そのうちペットボトルが2トンほどだったんです。それが光学選別機にかけることで、スペックとしては5倍、25トンほどの処理ができるようになりました。ただ、作業的に間ができるなどの関係で今は20トンほどの処理で抑えています。それでも実質値で4倍ですから、すごく効率は上がっています。

由勝氏 光学選別機の導入前は分別で10名ほどの人数を要したのですが、今では3、4名でよくなりましたし、作業的にもすごくラクです。もともと持っていた施設をひとつ動かさなくていいぐらい、早く処理できるようになっています。

―これまで選別に必要だった人数を、ほかの作業に回せるというのはかなり大きい変化ですよね。

由勝氏 ええ、もともと人手不足でしたからね。光学選別機の導入前は人数がいなくて量をこなせなかったのが悩みだったのですが、人がたくさんいなくて良くなったことで生産量が安定しましたし、今いる人数でなんとかこなせるようになりました。それに、ペットボトルを素早く処理してリサイクルに回す、ということについては飲料メーカーさんの期待感もすごくあるので、その期待に応えるためにも生産量はもちろん、品質も上げなければいけません。そうなると、やはり光学選別機に頼らざるを得ないのではないかなと思います。

由勝氏 (光学選別機の作業写真を見ながら)ちょっと見ていただきたいのですが、これは光学選別機で処理しきれなかったペットボトルを人の手で仕分けているところなんですね。最終確認の段階で人の手が必要ではありますが、すでに大量のペットボトルを処理し終わっているので、漏れたもののみをぽいっぽいっと投げるだけで負担がそれほどありません。導入前は、選別中はずっと体を動かし続けなければならず、体力的にもかなり厳しかったのですが、そういったキツさがほとんどなくなったといえます。

ペットボトルのラベルは剥がすべき?

―投資額はどのくらいなのですか?

由勝氏 今回の第1RCについては光学選別機を含めた選別ラインだけだと1億4千万円ほどです。ただ施設の基礎などをやりかえたりしたので、2億ぐらいにはなっていますね。

―決して少なくない投資額ですが、それでも導入する意義は確かにあると。

由勝氏 もちろんです。(光学選別機の作業風景を見ながら)見てください、投入すると自動で袋を切り取り除きます。取り除ききれなかった袋を人の手で取っていく作業は確かにあるものの、驚くほど早いですよね。あとは取りきれなかったアルミ缶やスチール缶を手で取っていくぐらいですが、作業量的にはほとんど半減しています。だいたい7名で16トンほどは処理できるようになりました。

―すごい、もはや別の事業をやっているぐらいの違いですね。

由勝氏 そうなんです。

―ちなみに、ペットボトルのラベルはどうされているのですか?

由勝氏 ラベル剥離機というものがあるのですが、正直なところ、剥がしても剥がさなくてもさほど変わらないといいますか。

―そうなのですか。ラベルは剥がすべし、という認識の方も多そうです。

由勝氏 例えば2万本のペットボトルがあったとして、そのうち10本でもラベルの剥がしていないものが混ざっていると、我々の先のペットボトルのリサイクル施設では2万本全てラベル剥離機から投入することになります。ですので、剥がしたものも剥がしていないものも、同じ工程を辿る場合が多いのです。

もちろん全てのペットボトルにラベルがないと確認できれば、ラベル剥離機をスルーして途中の工程から入っていけるので、ごみも出ませんし品質もいいものができます。そこは確かにそうではあるのですが……というところですね。

―ここも排出元の意識の違いによって、いろんなパターンがありそうですよね。「ラベルは剥がすべし」と統一しているオフィスビルもあれば、別に気にしていないオフィスビルもあるわけで。

由勝氏 オフィスビルであれば、可能な限り「ラベルは剥がす」と統一していただいた方がいいとは思います。剥離機というのは回転するカッターで本体ごとラベルを切り裂き、エアーでラベルだけ飛ばすという仕組みなので、どうしても本体の破損によりリサイクルの効率が悪くなってしまいます。一方で、ペットボトルキャップというのはリサイクル素材として非常に使いやすいものですので、そちらはぜひ分別していただけたらと思っています。

リサイクル率を上げるために行動しなければならない

―廃棄物はすべてリサイクルに回していると伺いました。

由泰氏 はい、埋め立てはゼロで何かしらの形でリサイクルはしています。

―お客様もそのあたりに魅力を感じておられるのではないでしょうか。

由泰氏 そうですね、ご説明すると「全部埋め立てているものだと思っていた」というお客様もいらっしゃるので、「いや違うんですよ」とお話ししています。すると、「じゃあその先はどうしたらいい?」というような話にもなってきて、特に最近は「SDGsに取り組めと言われているのだけれど、具体的にどうしたらいいだろう」とのご相談をいただくこともあります。

―そういった場合はどのように回答されているのですか?

由泰氏 「まずはペットボトルキャップの分別と古紙の脱シュレッダーから始めませんか?」とご案内しています。古紙もシュレッダーしてしまうと繊維が短くなり、リサイクル効率が悪くなってしまうんです。その次の段階で、「お弁当ガラなどはすすいでから捨てるようにしてください」とお伝えするようにしています。

―オフィスビルの管理会社さんもSDGsへの意識は高まっているのですね。

由泰氏 そうですね。「何か取り組めと言われているのだけれど、廃棄物の量を減らせないだろうか」などとご相談をいただくこともありますので。けれど、人が仕事や生活を営んでいく中でごみを減らすのは難しいと思うので、「そうではなくてリサイクル率を上げましょう」という話をしています。

―管理会社さんが分別している場合もあるのですか?

由泰氏 いえ、各オフィスから出てきた廃棄物をそのまま集積場に持っていくパターンが多いです。けれども当社としては分別を日々呼びかけているので、「リサイクル率を上げるためにも、各オフィス一軒一軒一緒に回るので伝えていきませんか?」とお伝えしています。

―まだまだリサイクル率は上げられそうですか?

由泰氏 はい、そう思います。一般廃棄物を見てみると、リサイクルできる紙がまだまだたくさん入っているので、そこを分けるだけでもリサイクル率は高まるなと思いますね。

紙ストローは果たして本当にエコといえるのか

―最後に、課題についても教えてください。

由勝氏 廃プラスチックのリサイクル率をいかに上げていくか、ということかと思います。業界に限らず人手不足な中で、いかに光学選別機などの高性能な機械に頼って処理量を上げられるか、そこにかかっている気がしています。

―マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルと3種類のリサイクル方法がありますが、貴社で圧縮した後には、どのようなリサイクルをするのが望ましいとお考えですか?

由勝氏 いちばん望ましいのはもちろんマテリアルリサイクルですが、現実的にはケミカルリサイクルかなと思います。マテリアルは均一で綺麗な廃棄物原料が求められるので、当社のように雑多なものを同時に回収して処理するような会社だと、そこまでの品質にするには相当なコストがかかります。たとえ高品質の原料を集めたとしても、市況によって必ず買ってくれるとは限らないので、余って倉庫に積み上がることにもなりかねない。そうなると、需要と供給のバランスがあまりにも合わなさすぎるよねと。全体で考えていけば、ケミカルリサイクルで資源化してプラに戻す、またはサーマルを併用していくのがベターかなと思います。

―マテリアルリサイクルであれば、ある程度の規模や物量がないと難しいと。

由勝氏 とくに当社のような、オフィスビルで回収する廃プラスチックだと、お弁当ガラやフィルム類、テイクアウト用コーヒーのフタなど、たくさんのモノが混ざっているので、より難しいのかなと思います。一方で、製造メーカーさんの工場など、廃棄物の種類がある程度決まっているような場合には、マテリアルリサイクルが向いているとは思いますね。

―バイオプラスチック*などはどうですか?

由勝氏 今のところはバイオプラも一般的なプラも変わらない扱いですね。それよりも、紙コップにプラスチックのふたをして、紙のストローをさすのはどうかなと思います。それなら全部を紙にするか、もしくは全部をプラスチックにするほうが、まだリサイクルしやすいですから。

バイオプラスチックって知ってる?バイオプラスチックって知ってる?

―紙ストローが一般化してきたけれど、それならフタも紙にしないと意味がないと。そういう意味でも、何がリサイクルにとって有用なのかしっかり発信していくことが必要だと感じます。

由泰氏 先日も、日経新聞さんが主催する「日経SDGsフォーラム」というイベントで、廃プラスチックの中間処理について登壇させていただいたのですが、そのようにして皆様にお伝えしていくことが重要であると痛感しています。当社をはじめ同じ業界で広報の機能を持っている会社さんってほぼないので、新井さんが運営されている「環境と人」のような外部のメディアを活用させていただきながら、何かしら伝えていかなければならないなと感じています。

2022.12.06
取材協力:株式会社 首都圏環境美化センター
https://www.shutoken-env.co.jp/