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再生可能エネルギーが持続可能ではない理由

地球温暖化をはじめとする気候変動が世界を揺るがすなか、地球環境を守り、住みよい世界を後の世に残すためにSDGsが急ピッチで進められている。中でも期待が高まるのが、環境に優しい次世代のエネルギー、いわゆる「再生可能エネルギー」だ。太陽光発電、EV車(電気自動車)、風力発電などさまざまな技術の普及推進に期待が高まる分野であるが、果たして再生可能エネルギーと呼ばれるもの全てがSDGsに適うものなのだろうか。今回は、再生可能エネルギーがはらむ負の影響について見ていきたいと思う。

再生可能エネルギーとレアメタル

化石燃料からの脱却のため、将来的にはEV車が主流となる予定だ。それは消費者の要望からではなく、政府によって新たな縛りができていることが大きな理由と言える。例えばEUは2030年までに自動車の排気ガスによる二酸化炭素の排出量40%削減を打ち出しており、産業全体がこの基準を順守しなければ厳しい罰則を受けることになる。つまりは、政治的な決定によってEV車の開発は義務付けられていると言っていい。なぜならば、EV車はCO2を出さず環境に優しいからだ。

しかし、EV車は一般の人が思い描くほどクリーンな存在ではない。その理由の一つが、製造に必要となるレアメタルだ。現在、EV車の製造のため、各国が血眼になってレアメタルを買い求めるようになっている。例えばネオジムはバッテリーの中で磁場を発生させて車の動力を作っており、ネオジムなしではEV車は動かない。他にも、バッテリーにはリチウムやコバルトなど、多種多様なレアメタルが不可欠だ。EV車一台には、なんとガソリン車の4倍の貴金属が使われている。

EV車だけではない。再生可能エネルギーを作るには必ずレアメタルが必要となる。風力発電に使うタービンや、太陽光パネルの発電シートにも使われている。世界中が再生可能エネルギーへの転換を推し進めており、いずれレアメタルなしには電力の恩恵に与れない世の中がやってくるだろう。これに伴い、石油の需要にとって替わるように、レアメタルの需要は指数関数的に膨れ上がっていく。

そんなにも重要なレアメタルだが、一体どこで産出され、どこから運ばれてきているのか。「どこかの鉱山で掘られて輸送されてきた」というのは容易に思い至るが、その実態を正しく想像できる人は驚くほど少ない。世界中に数ある鉱山のうちの1つである、ボリビアのリチウム鉱山をめぐる経済事情について見てみよう。

 

ボリビアの鉱山から見る不均衡

南米ボリビアの南西、標高3,300mの高地には有名な景勝地「ウユニ塩湖」があり、一面に広がる美しい景色で知られるが、それと同時に全世界の50~60%のリチウムが埋蔵する地でもある。

そんな世界一のリチウム産出国であるボリビアの政府は、リチウムでの利益をなるべく多く自国に還元させて国を豊かにする事を夢見ている。しかし、ボリビアは中南米の最貧国の1つであり、単独でのリチウム鉱山開発は難しい。大国間の激しい獲得競争の末、2019年に中国がパートナーシップを握り開発を行うこととなった。このように途上国で鉱山開発を行う際は外資系企業が関わることが多いが、外資系企業とボリビア政府との力関係から必然、利益の大半は企業側に流れる。

リチウムから生まれた資本が他国へと流れ出る一方で、開発による環境破壊は現地に暮らす人々に直撃する。ボリビアではすでに金や銀などの採掘により、鉱山周辺に流れ出す重金属による水質汚染と土壌汚染、空気中に漂う有害な粉塵による大気汚染などの問題が既に発生しており、リチウムでも同じ問題が発生するだろう。ボリビアだけではない。世界のコバルトの60%を産出するコンゴ民主共和国も似たような状況だ。しかしながら、レアメタルの鉱山開発に係るこうした環境被害と人的被害は、生み出す莫大な利益の前では些末なことなのだ。

EV車や風力発電、太陽光パネルは究極の目標として人々に広められた。特に政府は、EV車が世界を救う為にどれだけ有用なものなのかを大きく取り上げた。しかし実際の状況は崩壊してると言わざるを得ない。政策が推進されて以降も温室効果ガスの排出量は増え続けており、EV車が増える事で良い変化が起きる事はなかった。CO2を排出しない環境に優しいEV車も、製造過程まで遡れば依然として環境に負荷を強いており、ガソリン車との違いは単に「途上国へ負荷を押し付けている」という点だけだった。

 

廃棄の問題

こうして途上国の犠牲のもとに作られた「環境に優しい」バッテリーやタービンだが、耐用年数が過ぎれば当然使えなくなる。しかしながら、使えなくなった廃棄物の処理に関して対処できていない。2040年に一斉に寿命を迎える太陽光パネルの問題がその一例だ。レアメタルについても、できる限り回収・再利用しようという動き自体はあるものの、リサイクルの効率的なスキームが出来上がっているものはほとんどなく、再利用するための方法さえ見つかっていないものも多い。

 

私たちはどうすればいいのか

こうして見てきたように、これまで政治主導で進められてきた再生可能エネルギーへの転換は、世界規模での検討が不十分で多大な問題を含んだまま走り出してしまったと言え、とうてい持続可能なものではないのが現実だ。

果たしてこの現実を解決するのは、新しい科学技術なのだろうか。ここから先は、夢の新技術を期待するのではなく、産業の見直しと、地球規模の視野を持った正しいSDGsに立脚して改善を考える必要があるのではないだろうか。

エネルギー資源は経済や政治の手に委ねてはいけない。人々は、成長や資源の恩恵を諦められるだろうか。今こそやり方を見直し、資源の乱用を止める必要がある。

 

リサーチ:TOKYOVISION

  • 新井紙材株式会社
  • メディア事業部
  • 映像ディレクター・エディター

Yuji Arai

AIMS VIDEO(新井紙材株式会社 メディア事業部)
2015年から映像制作に従事。福島県のテレビ局で2年、東京の映像制作会社に3年勤務ののち2020年よりAIMS VIDEOに所属。

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