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アプリで食品ロスを解決?世界でサービス拡大中のスタートアップ「TGTG」とは

世界で深刻な問題となっている食品ロス。我が国の食品ロスは年間約570万トンあると言われており、これは10kgのお米が5.7億袋分の計算になります。

食品ロスの問題を解決するためには、もちろん私たち消費者が正しい知識を持って「もったいない」「まだ捨てるべきではない」と自ら商品を評価・判断し、意識改革をしていくことが重要ですが、飲食店やスーパーにおける食品廃棄についてはできることが限られているのが現状です。

食品廃棄への取り組みはさまざまな形がありますが、今注目を集めているのは若手起業家による、テクノロジーを用いたアプローチ。

この記事では、フードロス削減に貢献するロールモデルとして注目されているデンマーク発の「Too Good To Go」のサービスを取り上げながら、今一度食品ロスの問題について考えていきたいと思います。

食品ロスの現状

(出典:農林水産省HPより)

日本では、まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」は570万トン。これは、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料援助量(2020年で年間約420万トン)の1.4倍に相当します。

これらは莫大な費用をかけて廃棄処理されており、環境負荷がかかりながらも経済的にも非合理的な現状と言えるでしょう。

私たち日本の消費者は、生食を好んで食べてきた文化が影響しているせいもあり、こと食品において厳しく品質管理を求める傾向があります。つまり、食品流通において厳しいルールを課すことで、食品廃棄物を増やしてしまったと言えるのです。

その代表的な例が「3分の1ルール」。3分の1ルールとは、製造日から賞味期限までの合計日数の3分の1を経過した日程までを納品可能な日とし、3分の2を経過した日程までを販売可能な日(販売期限)とする商慣習的なルールのことです。

下図は、仮に賞味期限6ヶ月の食品の場合の3分の1ルールを図にしたもの。

(引用:日本もったいない食品センターHP)

まだ賞味期限まで3分の1の期間が残っているにも関わらず、撤去・廃棄されているという現状。徐々に改善に向けた動きは出てきているものの、私たち消費者の意識が変わらない限り、すぐにルールの見直しが行われることは難しいと言えるでしょう。

 

何気なく捨てられている食品ロスは埋め立てや焼却処理されることになるわけですが、処理の過程で排出される温室効果ガスが地球温暖化の原因になっているということも認識しなければなりません。

TGTG(Too Good To Go)とは?

(出典:Too Good To Go Instagramより)

フードロスに対する取り組みにはさまざまな形がありますが、今注目を集めているのが若手起業家によるテクノロジーを使ったアプローチです。その中の一つであるデンマーク発の「Too Good To Go」(以後TGTG)は、フードロス削減に貢献するロールモデルとして注目されるアプリ。

TGTGでは、店舗でその日に廃棄される食品数点を詰めた「ハッピーバッグ」を、アプリを通して低価格で個人向けに販売しています。2016年のリリースからこれまで約9,840万袋のハッピーバッグが廃棄処分を免れたそう。これは実に約24万トンの二酸化炭素の削減に相当します。

アイデアはどこから?

TGTGが生まれたきっかけは、20代の企業か5人が外食した際、閉店間際のレストランで手つかずの料理が大量に処分されているのを見かけたこと。2016年にアプリをリリースし、デンマークで初となるフードレスキューが始まりました。

現在では世界中に約1200人の従業員を擁するまでに成長し、フードロス削減を通じて「社会的影響力のある企業」を目指しています。アプリはデンマークに加え、ヨーロッパ、アメリカやカナダなどを含む17か国で展開され、ダウンロード数は4,680万回を超えるそう。

ちなみに「Too Good To Go」とは、捨てるのに(To Go)良すぎる(Too Good)、つまりもったいないという意味。

アプリの仕組みは?

TGTGは以下のような仕組み。

参加している店舗は、個人経営のレストランやカフェ、ベーカリーから、スターバックスのような大手チェーンのカフェ、スーパーマーケットまでさまざま。アプリには多種多様な店の食事や食品が、元の値段&オファーの値段と共に掲載されます。

発祥の地デンマークでは参加企業は約4,000にものぼり、アプリのダウンロード数と人口から換算するとデンマークの約4割の人がアプリを利用している計算になります。

価格はさまざまですが、市価の1/3~1/4程度で購入できるものが多く、コロナ渦で在宅勤務になった働き盛りの世代から学生まで、幅広い世代に支持されているよう。

アプリは直感的に操作できる使いやすい仕組み

TGTGのアプリはシンプルで使いやすい仕組み。初めてでも直感的に操作することができます。

まずアプリをダウンロードしたら、自分が使う国とエリアを指定。自分の位置情報をONにしておけば、今いる場所から近いエリアでピックアップできるお店が表示されます。

マップ表示は、「緑→在庫5個以上あり、オレンジ→4個以下」など色分けされていてわかりやすく、気になる店をお気に入り登録しておけば食品ロス予備軍が出た時にすぐに気づくことができます。

商品を選んだら予約をタップし、注文内容や引き取り時間などを確認して事前決済支払い。引き取る時に注文番号が表示された画面をスタッフに見せると、商品を受け取ることができます。

協働する企業にとってのメリットは?

利用者にとってメリットの多いTGTGですが、協働する企業にとってもメリットはあります。参加企業にとってのメリットは以下の3点。

・見た目が悪いなどの理由で販売できない食品も活かすことができる

・完売するのでスタッフのモチベーションが上がる

・環境保護やフードロス削減のために活動しているというPRの一環になる

TGTGでは売り上げの2/3が店、残りがTGTGという割合なので、決して大きな利益を生むわけではありません。しかし、単に売れ残りを無くす以上の意味があると言えそうです。

利用場所はユーザーから近い場所でないと意味がない

TGTGは、環境保護やSDGsへの関心が高まっても何をすればよいかわからない個人にとって手軽に始められる手段として有効です。しかし、このアプリを利用することが目的になっては本末転倒。

TGTGはユーザーが各場所に商品をピックアップしに行くシステムなので、徒歩圏内の近い場所で利用するのがベスト。自宅から離れた場所まで車で取りに行くというのでは、環境に負荷がかかってしまうことになり、せっかくフードロス削減に貢献するアプリを利用している意味がなくなってしまいます。

商品受け取りの際にも水筒や食事を入れるためのケース、エコバッグを持参するなど、環境に優しい配慮を忘れないようにしたいところです。

日本にもある食品ロス削減アプリ

日本にもTGTGのようなフードシェアリングサービスは存在します。例えば株式会社コークッキングのフードロス解決アプリ「TABETE」は、TGTGと同じように飲食店や販売店で廃棄の危機にある食品を掲載してユーザー(食べ手)に知らせ、ユーザーは通常よりも安く購入できるという仕組み。

全国各地の掲載を受け入れているものの、現状は東京23区付近を中心とした首都圏、金沢市、大阪市、福岡市、名古屋市などを始めとする各都市圏の店舗が中心。ユーザーは50万人、登録店舗は2000を超え、これからますます拡大していくことが期待されています。駅や住所から検索できるので、興味のある方はぜひ登録してチェックしてみてはいかがでしょうか。

フードロス削減への関心を持つきっかけに

筆者もかつて飲食店に勤務していた際、食材の廃棄に関して考えさせられる点が多かったのを覚えています。

このようなシェアリングサービスを利用することなく、店舗内で食材を余らせずにうまく活用できればそれに越したことはありません。ただ、個人店ではなく、システム上廃棄せざるを得ないような飲食店やスーパーなどにおいては、ぜひ積極的にこのようなサイトに登録して少しでもフードロスを削減すべきだと考えます。

TGTGのようなアプリは、経済的な理由から利用するユーザーにとっても、フードロス削減に関心を持つきっかけになっているに違いありません。その関心をどう広げていくかは私たち消費者の意識にかかっています。

フードロスへの問題意識を持ったら、次は自発的に行動してみること。例えば地元産の食材、形が悪い野菜や賞味期限の迫った値引き商品を積極的に購入する、冷蔵庫の食材は余らせることなく使い切るように心がけるなど、無理なくできることから始めてみると、いつの間にかそれが習慣になりフードロス削減に貢献することができます。

アプリをただの便利なツールで終わらせるのではなく、その先を見据えて行動に移すことが、未来を変える第一歩になるのではないでしょうか。

環境と人 編集部

このメディアは、「ごみ問題を解決する」ことを目的として、サステナブルな社会と、自然と調和したライフスタイルに関する情報を発信しています。
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