和食を食べて持続可能な未来を目指す!?心を体と地球を健康にする日本食の知恵とは

ここ最近、「SDGs」や「サステナブル」という言葉を毎日のようにメディアなどで目にしたり耳にしたりするようになりました。『環境問題や社会問題を解決し、持続可能な未来を目指す』と聞くととても壮大なことのように感じられ、自分一人が何かしたところで何も変わらないのでは?と尻込みしてしまう方も多いかもしれません。

しかし、気づいていないだけで、実は私たちが毎日していることの中で変えられることはたくさんあります。その中で最もシンプルで実践しやすいのが、毎日の食事に意識して和食を取り入れること。

伝統的な和食は、体に優しくヘルシーであるだけでなく、世界でも注目を集める「サステナブルフード」でもあるのです。

そこでこの記事では、改めて和食の特徴や魅力を確認することで、和食を食べることがなぜサステナビリティの実践に繫がるのかについて考えながら、食の問題を解決するためのヒントを探っていきたいと思います。

現代の日本人が抱える食の問題

日本は豊かな国ですが、同時に食に関する深刻な問題を抱えているということをご存じでしょうか。日本の食料自給率は先進国の中では最低の水準で、世界最大の食料純輸入国である一方で、食品産業や家庭内での食べ残しや期限切れなどによる廃棄は増加傾向にあるというとてもアンバランスな事態に陥っています。また、世界では人口増加に伴う食料不足が懸念されている中、国内では担い手のいない耕作放棄地が増加しているという状況もあります。

(出典:農林水産省HPより)

農家離れや環境問題のほか、私たちが伝統的な日本食を食べなくなったことも、食料自給率を下げることに繫がっているという点も見逃せないポイントです。

個人の栄養バランスに注目してみると、孤食が広がり、低所得者層ほど手軽で満腹感を得やすいコスパ重視の食生活を送る傾向にあり、健康格差の問題も指摘されています。

持続可能な形で適切な食生活を送ることができる社会は、どのようにつくっていけばよいのでしょうか。

和食の魅力を再確認してみよう

食の問題と言われても、自分にできることなんてないのでは?…と思われるかもしれませんが、身近な日本の食文化に目を向けてみると、食の問題解決のためのヒントが数多く隠されています。

和食は「プラントベースフード」

2050年には世界人口が100億人近くになるという予想もある中、代替肉などの新しい分野の食料が注目を集め、プラントベースフードという言葉もよく耳にするようになりました。

実は昔ながらの日本食は「プラントベース」に近い内容。江戸時代まで肉食を禁忌とした歴史をもつ日本では、米(雑穀)、大豆を中心とした豆類、野菜、海藻、そして魚が中心でした。畑のお肉と呼ばれる大豆は、日本人にとって重要なタンパク源であり、味噌や豆腐、納豆といった加工物にして上手に取り入れてきたのが和食文化なのです。

プラントベースの食事は、食肉の供給不足によるタンパク質危機を回避できるだけでなく、畜肉の増産に伴う穀物や水資源、自然破壊のリスクを軽減したり、CO₂の排出量を減らすことができるなど、環境の負荷を抑えたサステイナブルな食事として期待されています。私たちが昔ながらの和食を意識して取り入れることが、自然にサステイナブルな食事に繫がるのであれば、実践しない手はないでしょう。

素材の味を活かした調理法

その土地ならではの地形や気候を活かして生産された日本で採れる多くの食材は、自然のままが美味しいということを私たちの祖先は知っていました。和食では、素材の味を活かした調理方法を取り入れているのが魅力の一つです。

また、和食は「旨味」をとても大切にしており、かつおや昆布からとる出汁の旨味を上手に利用することで、素材の味を生かしながら深みのある味わいを作り出してきました。旨味を使うことは、動物性油脂を抑えた食生活の実現にも繫がり、肥満防止にも効果的です。

「発酵食品」は世界に誇る日本の食文化

日本人の食事は、味噌や醤油といった調味料から漬物、納豆などの食材まで、発酵の力に支えられています。例えば漬物だけでも約1700種類もあるというから驚き。

日本にこれほど発酵食が多い理由としては、発酵に適した素材の多さと、周りを海に囲まれていることにより発酵に欠かせない塩が豊富であったことが挙げられます。

発酵食品には以下の4つの特徴があります。

  • 発酵させることで腐りにくくなる
  • 体にいい
  • 発酵前とは味や匂いが全く異なる
  • 究極の自然食品である

発酵させることで保存がきくようになり、発酵微生物や発酵菌が免疫力を高めてくれます。発酵させることによって味や香りのバリエーションが広がり、食の豊かさにも繫がります。先人の知恵が詰まった発酵食品を普段の食生活に積極的に活用することは、私たちの体を健やかに保ってくれるだけでなく、フードロス削減にも有効です。

「和食を食べてサステナビリティを実践する」とは?

日本食の素晴らしさはわかったけれど、それがなぜサステナブルに繫がるのかピンと来ないという方も多いと思います。この章では、和食を食べてサステナビリティを実践する、具体的な方法について見ていきましょう。

地産地消で環境への負荷を減らす

海に囲まれた南北に長い国である日本は、その土地によってさまざまな食材や食文化があり、地産地消を実践しやすい環境にあると言えます。

生産地から食卓までの距離が長いほど輸送にかかる燃料やCO₂排出量が多くなるため、食料の消費が環境に対して大きな負荷を与えることになります。また、ハウス栽培などで季節を無視して生産することもまた、エネルギー消費に繫がります。

昔ながらの和食は、その土地の旬の食材を使ったものがほとんど。旬の時期にその土地の旬のものを食べる事は新鮮で美味しいだけでなく、生産に必要なエネルギーが少ないことから環境にも優しい食べ方でもあるのです。

発酵食・保存食でフードロスを削減

前章で紹介したように、日本の食事は発酵食品に支えられています。また、出汁に使われる鰹節や昆布、煮干し、干し椎茸、切り干し大根、高野豆腐、海苔やわかめなどの乾物類などの保存食品も和食には欠かせない食材と言えるでしょう。

発酵食品や保存食品には栄養価や美味しさを増す効果があるだけでなく、食材を無駄なくかつ活用する知恵が詰まっています。これらの食品は、旬に採れた食材を無駄にせず、形を変えることで一年を通して上手に食事に取り入れることを可能にしてくれるのです。

発酵食品や保存食品を積極的に活用することは、フードロス削減にも貢献できると言えるでしょう。

「一汁三菜」という食の知恵を受け継ぐ

伝統的な和食の基本は「一汁三菜」。ご飯と味噌汁と3つのおかずがあれば和食は成立するという意味です。元々は「一汁一菜」が基本で、この一菜は漬物でしたが、この「一汁一菜」の中に味噌と漬物という2つの発酵食品が入っており、きちんと栄養面にも配慮されていたことに先人の知恵を感じます。

いつもは朝食にパンを食べているという人も、たまにはご飯と味噌汁にしてみるとか、夕飯に豪華なご馳走ばかり食べるのではなくたまには野菜や大豆製品、魚を中心としたシンプルな和食にするなど、無理のない範囲で日本古来の食文化に立ち返ってみることが、健康や環境にとってよりよい未来を叶えることに繫がります。

食べることで持続可能な未来を叶える

日本では、日々多くの食料が廃棄され、それと同時に多くの食品が海外から輸入されています。食の欧米化が進み深刻な和食離れが進んだ我が国では、自然の生態系に逆らった食生活が生活習慣病の大きな原因にも繫がっています。

都会に暮らしていると自然を感じる機会は少ないかもしれませんが、私たちの身近にある日本食文化には、健康だけでなく地球環境を良くしていく知恵が詰まっています。危機的状況にある環境問題、近い将来直面するであろう食料危機への対策として今すぐ私たちができることは、食習慣を見直すことではないでしょうか?

  • 米食を心がける
  • 肉よりも魚を選ぶ
  • 地元の食材を購入する
  • 発酵食品や乾物、大豆製品を積極的に取り入れる
  • 毎日味噌汁を飲む

このような習慣を心がけるだけでも、持続可能な未来への一歩に繫がります。和食の知恵を取り入れた食生活で、健康な体と美しい地球を手に入れましょう。