地下鉄の座席ソファから紐解くアップサイクル、エシカルの視点

日々、多くの人々が利用する地下鉄。例えば東京都内であれば、東京メトロがありますね。地下鉄の車両には、乗客が移動時間を快適に過ごせるようにふかふかの座席が用意されています。

長年使われている車両の座席は、どんどん傷んでしまいので定期的に交換を行います。「Sanyoトラフィコ株式会社」さんは、この古い車両の座席に注目しました

痛みが激しいシートは処分し、状態がいい物は「もったいない」の精神で保存。この座席を使い、新しいソファとして再生したのです。

「Sanyoトラフィコ株式会社」さんが作り上げたソファの座席は神戸市営地下鉄・山手線の車両で使用されていたとのこと。レトロでカワイイ見た目と、長年使われた布の渋さが合わさって唯一無二の存在感を醸し出しています。

さて、このように廃棄される素材を活用して新しい物を生み出すことを「アップサイクル」と言います。…あれ?これって「リサイクル」では?そう思ったあなた、いい所にお気付きです。

この座席ソファが持つ独特のよさを味わうために、「アップサイクル」に対する理解を深めましょう。

 

リサイクルを超えるリサイクル?「アップサイクル」って何?

「アップサイクル」という言葉を耳にしたことがある人もいらっしゃるのでは。ベースとなる考えは「リサイクル」に通ずる部分があるので、言葉の意味を深く理解していない方も多いと思います。

「廃棄されるモノを活かして、新たなモノを再生する」…これが「リサイクル」の根本的な考え方です。そして、「廃棄されるモノに独自のアイデアを詰め込んでデザインし、新たな付加価値を持ったモノに生まれ変わらせる」…これが、「アップサイクル」です。

すなわち、「リサイクル」を超える「リサイクル」と言える上位概念が「アップサイクル」なのです。先程ご紹介した地下鉄の座席ソファも単なる「リサイクル」ではありませんよね。こだわり抜いた木組みの素材と組み合わせて、デザイン性の高いソファに生まれ変わっています。だからこそ、「アップサイクル」と呼べるのです。

デザイン性などで高い付加価値をつける「アップサイクル」ですが、当然、それだけでは世の中は回りません。紙・鉄・プラスチックといった大量の廃棄素材を大量に処理し、安価な原料として再生させる「リサイクル」が基礎となり、世界の資源循環を支えています。

参考記事:スカイツリー1,000本の資源を循環させる人たち

環境配慮をしたいなら、再生プラスチック製品を選ぶだけでいい

アップサイクルは理想的ですが、手間がかかる故に高単価となり、現実的に日々再生される素材を消化するほどの需要はありません。その代わりに、オンリーワンの魅力が際立ちます。

その証拠に、このソファは「Sanyoトラフィコ株式会社」さんのサイトにて、300,000円のお値段で販売されています。「ちょっと変わったソファが欲しい」という方や、「ヴィンテージ家具が好き」という人に刺さる独自の魅力を持ったアイテムへと生まれ変わっているのです。

こうして、捨てられてしまう予定だった物を活用する「アップサイクル」。ここからは、アップサイクル商品の中でも、特に注目を集める商品についてご紹介したいと思います。

 

トラック、メカジキ、赤レンガ…様々な形のアップサイクル

ここからは、「アップサイクル」の中でも特に注目したい商品をピックアップしてご紹介したいと思います。選んだ内容は、①アップサイクルの代表例、②こんなモノが「アップサイクル」の材料に?!、③「モノ」には〇〇も含まれる?!…といったテーマに沿って。ぜひ、「エシカル消費」の参考にしてみてください。

トラックの幌(ほろ)を使用したバッグが大人気「FREITAG」

近年のアパレルシーンで、しばしば話題に挙がるのがこの「FREITAG」。「アップサイクル」を語る上で欠かせない製品です。

時は1993年。スイスのチューリッヒから物語は始まりました。トラックの荷台を雨風や砂埃から保護する防水布である「幌」や、自動車のシートベルトなどの資材を活用して、自転車を乗る人たちにぴったりのカバン作りがスタートしたのです。

トラックに乗せた物を守るための布ですから、その強度は確かな物。この布でかばんを作ることは、丈夫な商品を作るという上で理に適っています。その上で、ダニエル・フライターグさんを始めとするデザイナーさんたちは、優れたデザイン性にもこだわりました。

スタイリッシュな「FREITAG」のバッグは間も無く世界中のおしゃれ好きを虜に。今では、日本のセレクトショップでも、しばしばその姿を見掛けます。

布・糸の原料、その常識を壊した「メカジキデニム」

お次は、こんなモノが「アップサイクル」の材料に?!というちょっと驚きの製品をご紹介します。それは、とあるジーンズなのですが…。

なんと、材料は「魚」なのです!魚からジーンズを作るのは、宮城県・気仙沼から始まった「メカジキデニム」。その名の通り「メカジキ」が材料ということですが、一体何がどうして魚がジーンズに「アップサイクル」されるのでしょう?これは、なかなか不思議です。

メカジキは唐揚げがおいしいですよね!お刺身でもいただいたことがありますが、しっかりとした身が印象的でした。東北の海の幸に間違いはありません。しかし、そんなメカジキにも、食べられず捨ててしまっている部位があるのです。それは、メカジキと言えば!という部位でもある立派な「角」です。この角は、「吻(ふん)」とも呼びますよ。流石に、あの角を食べるのは難しいですよね。

「メカジキデニム」さんは廃棄されてしまっている角を高品質のオーガニック・コットンと合わせて紡績を行い、独自の生地を作りました。その他、ジーンズに必要なボタンは椰子の木が原料の物を使い、縫い方を工夫してリベット(ジーンズ本体にポケットを取り付ける際に使う金具)を使わないなどの取り組みも。なんと、すべてが土に還るように作られているのです。

また、世界的なジーンズブランドの復刻モデルを作る際に生地が採用されるなど、そのブランド力とデザイン性は高く評価されています。リサイクルを超えて、「アップサイクル」へ…を体現している日本を誇るジーンズです。

なんと、〇〇まで「アップサイクル」の対象に?横浜みなとみらいの「赤レンガ倉庫」

さて、こんなモノまで「アップサイクル」?という煽りで始まりましたが、早速ネタバラシとしたいと思います。その答えは「建築」です。「リサイクル」や「アップサイクル」という言葉を耳にすると、小物や衣服をイメージすることが多いと思います。建築なんて大規模なモノまで「アップサイクル」できるんでしょうか…。はい、できるんです。それを実現しているのが、横浜みなとみらいの「赤レンガ倉庫」なのです。

赤レンガ倉庫については、その存在を知っている人も多いと思います。しかし、「アップサイクル」の事例である…という視点で捉えたことは少ないのでは?実は、この倉庫は元々1911年に竣工された保税倉庫(関税の徴収が留保された外国の貨物を保管するための倉庫)でした。しかし、その役目を終えてからは建物だけが残り、落書きをされるなどその場が荒れ始めてしまったのです。

そして、1992年。横浜市が立ち上がり、倉庫を活用した「赤レンガパーク」計画をスタートさせると、みるみる地域の治安は安定。多くの人々が訪れ、今では横浜有数のデートスポットとしてその名を知られています。

さて、赤レンガ倉庫によって実現した「アップサイクル」の注目すべきポイントは何でしょう。もちろん、「建築」という大規模での挑戦という点も含まれますが、地域全体を「アップサイクル」したというのが赤レンガ倉庫の輝かしい実績なのです。

古びた廃墟をよりよい建築に。結果、地域がよりよい環境へと「アップサイクル」。「アップサイクル」、そして「エシカル」な思考が世界を変えるということを実感できる事例であると言えます。

参考記事:「ガイアの夜明け」にも登場“リノベーションの鬼才”に聞く「家の再生・街の再生・地域の再生」

 

「アップサイクル」の展望は…あなたが何を消費するかという選択次第。

さて、「地下鉄ソファ」からスタートして様々な「アップサイクル」製品をご紹介しました。一言に「アップサイクル」と言っても、扱う資材・テーマ・成果物は異なります。

どの製品も作り手はもちろん買い手がいなければ始まりません。モノを大切に、環境を大切に…という「エシカル」な視点を持つ消費者がいるからこそ、「アップサイクル」製品が世の中に広がるのです。

ぜひ、あなたも「エシカル」な製品選びに挑戦してみてはいかがでしょうか?あなたの選択が世界を変える…というのは、赤レンガ倉庫の実績を踏まえれば一目瞭然、本当にあり得る話なのです。