“循環”がキーワード。廃棄ゼロを目指すサステナブルなお店が教えてくれること

自分の体に取り入れる食材には気を遣っても、その食材が包まれている包装がプラスチックだったら?オーガニックカフェに入ったら、コーヒーがプラスチックカップとプラスチックストローで提供されたら?それを当たり前に思ってしまったら、それは使い捨てプラスチック文化に慣れすぎてしまっている証拠。

これからの地球がどうなっていくのか、未来ある子供たちに明るい「将来」を残せるかは、今私たちがどのように暮らすかにかかっています。

そこで今回は、「自分にとっても地球にとっても自然で健やかなこととは何か」を考えるきっかけをくれるいくつかのショップの取り組みをご紹介しながら、これからの私たちのライフスタイルのあり方について考えてみたいと思います。

日本は環境に優しい選択肢が少ない

日本は使い捨てプラスチックの利用が多い国。それと共に、環境に優しい選択肢が少ない国でもあります。

実際、2018年のUNEP(国連環境計画)による報告書『シングルユースプラスチック』によると、日本人1人当たりのプラスチックごみ発生量はアメリカに次いで世界第2位となっています。

あなたは日々の生活の中で、普通に暮らしているだけなのにうんざりするぐらいのプラスチックごみが出る現実に疑問を感じることはありませんか?目の前の現実に疑問を感じ、例えば環境に優しいアクションを起こしたいと思っていたとしても、日本にはそれを行動に移せる選択肢が少ないのです。

食材を買う時、量り売りやプラスチック包装なしのお店を探すことも困難だし、コーヒーを買えば当たり前のようにプラスチックストローが刺されています。

作り手の顔が見える食材が揃い、自分が用意した容器を持参して必要な分だけ購入できるお店があったら、そのようなショップで買い物がしたいと思っている人はたくさんいるのではないでしょうか?決して需要がないわけではないのに、なかなか脱プラスチックが一人ひとりに浸透していない日本の現状は、決して楽観視できるものではありません。

無駄のない暮らし方を提案する「ゼロ・ウェイスト・キョウト」

老舗の茶舗や古美術商が軒を連ねる京都・寺町通にある食のセレクトショップ「ゼロ・ウェイスト・キョウト」は、有機野菜や米、味噌など、作り手の顔が見える安心安全な食材を、昔ながらの量り売りで購入できるお店です。

客が容器や空き瓶を持参することでゴミの削減を、必要な分だけ購入することで食品ロスをなくすことを目指しています。また、併設のカフェでは、店内で販売する生鮮食品などが無駄にならないよう、惣菜や保存食に調理して提供。昔からある知恵をベースに新しさも取り入れた、楽しい循環型ショッピングが楽しめるショップです。

豆腐や納豆は器を持って買いに行く

昔、お豆腐はお鍋を持って買いに行きました。納豆売りの声で軒先に飛び出して買いに走ることも。そんな昔ながらのスローなショッピングが楽しめるのもゼロ・ウェイスト・キョウトの魅力です。

また、納豆のサブスクリプションもスタート。食品のタグにスマートフォンをかざすと、詳しい情報やレシピのヒントが取り出せるユニークな仕掛けで、食生活をサポートしてくれます。

無添加の旬野菜は惣菜に転用

個包装しない分、傷みの早い有機野菜や大豆製品は、ハーブやスパイスを効かせた惣菜に変身させ、無駄にならないよう提供します。写真はクスクスとトマトスープ、惣菜が付いた「クスクスランチプレート」。

規格外の野菜は保存食や調味料に

規格外の野菜は、「自家製ハリッサ」や「塩レモン」などの保存食や調味料に変身させます。瓶は再利用するのでラベルレスという徹底ぶり。

他にも山田製油のねり胡麻、喜右衛門の丹波黒大豆と有機米を使った味噌、中華の名店『大鵬』の豆板醤など京都で製造されている美味しい物がズラリと並びます。

「Mottainai」レストラン

「ゼロ・ウェイスト・キョウト」に協賛する様々なジャンルの生産者、シェフ達が、期間限定で「Mottainai(勿体ない)」をテーマに登場するワクワクするような企画も。

日本初のゼロ・ウェイストなスーパーマーケット「斗々屋 京都本店」

この夏、京都・上京区にオープンした「ゼロ・ウェイスト」なスーパーマーケット『斗々屋』京都本店は、「ごみゼロ」をコンセプトに掲げる新しいスタイルのスーパーマーケット。生鮮食品や惣菜、調味料、乾物、お菓子、アルコール飲料、洗剤など約700品目を揃え、ユーザーが持参した容器に食材を入れ、重さをはかり、購入することができます。

斗々屋では、電子はかりやモーションセンサーなどで構成された国内最先端の量り売り販売の機械システムを導入しており、来店者がスムーズにストレスなく買い物ができるのが特徴。日々の買い物を通して必要なものを必要なだけ、再利用できるものは再利用するという「地球1個分の暮らし」を根付かせ、持続可能な未来のための消費や生活のあり方を全国に広げていくことを目指しています。

有機栽培へのこだわり

斗々屋は、農薬や化学肥料に頼らない農家との取引を行っていますが、その中には有機JAS認定を取得していない農家もあります。有機農業を志す小規模な農家や新規就農者にとって、有機JAS認定の取得は時間的にも費用的にもハードルが高いため、認定取得を断念する人も多いのです。

認定を取得していなくても、地球環境や生産者の健康を害さない方法で栽培を行っている農家はたくさんあるので、斗々屋ではそのような人たちや農業を応援したいとの想いから、あえて「有機JAS認定の取得」を取引の条件にはしていないのだそう。

フェアトレードへのこだわり

斗々屋では、開発途上国で生産された農産物に関しては、フェアトレードを重視しています。なぜなら、開発途上国では児童労働が深刻な問題となっているから。

その数は約1億6,000万人、世界の子供の10人に1人にあたり、私たちが日常的に口にしている嗜好品(チョコレートやコーヒーなど)がその温床であることが明らかになっています。

動物福祉へのこだわり

斗々屋では、家畜に対して残酷で、人間の健康にも良くない集約家畜の食品は取り扱っていません。それには、“現在の日本には、殺生を前提とした家畜飼養についての新しい倫理原則の形成が必要である”というメッセージが込められています。

ゼロ・ウェイストへのこだわり

斗々屋では、仕入れた商品すべて「個包装なし」の量り売り。それは、環境に配慮したライフスタイルを広く社会に提案していくにあたって、家庭ごみの約半分を占める容器包装ごみを減らすことが必要不可欠だと考えているからです。手間をかけて栽培する有機農家にとっても、量り売りは梱包の手間が省けて都合がいいし、何より地球環境や未来を考えて有機栽培された食材が使い捨てプラスチックに入れられて売られるのは矛盾しています。このように、斗々屋は取引先と共にごみの出ないサステナブルな仕入れに取り組んでいるのです。

環境に配慮したライフスタイルの発信地

販売する食材を使い切り、食品ロスをなくす工夫を凝らした“ゼロ・ウェイスト・レストラン”では、おすすめのコース料理が楽しめるほか、昼間はカフェとして飲み物を提供し、惣菜をイートインして食べることも可能。

変わった形状のショッピングカートは、量り売りをしながら買い物をするのに最適な台付きで、専用の丸型天板を乗せると立食用のテーブルに早変わり。夕方にレストランが開店した際には、カートをテーブルにして食事やワインが楽しめるユニークな仕組みです。

斗々屋で買い物することは、継続的に人にも環境にも優しい取り組みに参加するということ。生産者や協力業者、そしてユーザーを巻き込んだ斗々屋の挑戦は、まだまだ始まったばかりです。

コーヒーショップの新たな可能性を探る「Isla Coffee Berlin」

移民系のショップと、若い人をターゲットとしたおしゃれなカフェやショップが混在するユニークなエリア、ベルリン南西部のノイケルン地区。そんな多国籍な雰囲気が漂う地区の一角にあるのが、「持続可能性」に取り組むカフェ「Isla Coffee Berlin(イスラ・コーヒー・ベルリン)」です。一見シンプルでスタイリッシュないまどきのコーヒーショップですが、実はゴミを限りなくゼロに近づける行動を実践している地球に優しいカフェ。

このカフェで提供されるコーヒーは、使用済みのコーヒー豆のカスから作られたリサイクルカップ。テイクアウト用にももちろん土に還る素材によるパッケージを使用しています。

さらにユニークなのは、ミルクも「リサイクル」していること。通常エスプレッソマシンでミルクをスチームすると機械にミルクの一部が残りますが、同店ではこれを廃棄せずに集めて、そこからヨーグルトやチーズを自家製造し、デザートやブランチメニューに登場させています。

他にも、ネギの硬い部分はネギオイルに、レモネードを作った後のレモンの皮はレモン胡椒にするなど、とことん廃棄を出さない工夫が。こうして生み出される料理をきっかけにフードロスの存在に気付く食べ手が多いというのも納得です。

Isla Coffee Berlin創設者でありオーナーのPeter Duran(ピーター・デュラン)さんは「持続可能性な取り組みが特別なことではなく、ごく当たり前のことになることを目指しています」と語ります。しかし、自分たちのポリシーを主張しすぎることなく、パッケージやインスタの投稿にさりげなく示す程度。その姿勢が、入りやすい雰囲気につながっているのかもしれません。

人と環境に優しいショップがサステナブルな暮らしのヒントに

今回紹介したお店は、単なる量り売りのショップやゴミを出さないカフェというだけではありません。人の心を動かしたり、同じ思いの人を繋げたり。ライフスタイルの発信基地としての役割も担っているように思います。

「地球一個分の暮らし」が可能になるライフスタイルを、と言うととても難しいことのように思えますが、例えば「スーパーで個包装された野菜を買うのをやめて、商店街の八百屋さんで包装されていないものを買う」というたった一つの行動にも、大きな意味があります。

限りある環境資源に配慮した持続可能なスパイラルを完成させるためには、私たちもそのスパイラルの一部にならなければなりません。

まずは日々の買い物がどんなことに繫がっているのか考えるところから始めてみてはいかがでしょうか。