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サーキュラーエコノミーってどう評価すればいいの?

Circularity Gap Reportによれば、現在の世界経済の資源循環率は8.6%とされています。

つまり、全世界で90%以上の資源が循環せず、廃棄されていることになります。

 

極端な話、どんな資源も廃棄物も、宇宙に飛ばさない限りいつかは循環すると言えますが、そこまでの年月や引き起こされる物質の偏りが、生態系に悪影響を及ぼすことが問題視されています。

 

この状況を改善するため、資源の廃棄をやめて循環させることで持続的な社会を目指すのがサーキュラエコノミーという考え方です。

 

気候変動やSDGsの文脈においても、世界規模で求められているリニアエコノミー(大量生産・大量消費・大量廃棄)からサーキュラーエコノミーへの転換ですが、これは容易なことではありません。

なぜなら個々の企業努力だけでなく、生産から廃棄までのバリューチェーン全体にわたって資源を循環させること、つまり企業による上流から下流にまたがる協力が不可欠だからです。

 

客観的に循環を定義する試み

そこで、各企業がサーキュラリティの目標を設定できるような、共通言語としての指標が求められています。また、業界全体もしくは社会全体が、それらの指標と評価に対する共通認識をもつことが前提となります。

そのひとつ、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)によって2020年1月に提唱された、サーキュラリティを評価するツール(CircularTransition Indicators:以下、CTI)を紹介します。

 

CTIはサーキュラーエコノミーに取り組む企業や、製品やサービスを選択する消費者にとって、次のような課題を解決します。

 

・自社もしくは製品がどのくらいサーキュラリティに貢献しているのか?

=生産する際に投入した資源量と循環できる資源、廃棄される資源に基づいた評価方法

 

・循環経済移行にあたり、実際に何をすればいいのか?

=評価を高めるための個別の指標の提示

 

・循環活動を継続するにはどうすればいいのか?

=指標のモニタリングと最適化の方法

 

CTIは開発中の指標ですが、将来的にISOやJISなどと同様、国際標準となる可能性があります。

個別の指標について細かく見ていきましょう。

 

循環による収益向上がポイント

 

CTIの指標は以下の3つに分類されます。

 

(1)資源の移行進捗を評価する指標

(2)資源を最適化する指標

(3)資源の生産性を評価する指標

 

いかに新規で投入する資源を減らし、循環させた資源に置き換えていくかを目的として、そのプロセスを可視化するのがこれらの指標です。

 

(1)資源の移行進捗を評価する指標

資源を消費し、最終的に廃棄していた分を、技術開発によって回収可能にしたり、原材料や部品をリサイクル可能な資源に置き換えるなどの方法で循環させます。

 

消費資源が循環資源となった際の指標として、CTIが解決することは以下の通りです。

 

・投入する資源量と再生資源量の割合

・実際に回収された資源量の割合

・水の循環率

・再生可能エネルギーの使用率

 

実際にこれらを算出するには、大量のデータ収集が必要になります。

たとえば、洗濯機に使用される部品をすべて分解し、それらがリサイクル、修理などの方法で循環可能かを判断します。

 

(2)資源を最適化する指標

資源効率の最大化に関係する指標は以下の2つです。

 

・クリティカルマテリアルの割合

・回収可能な資源の割合

 

クリティカルマテリアルとは、近い将来に枯渇する可能性があり、他のもので代替することが難しい原材料です。EUでは、コバルトやリチウムなど電池材料となる希少金属をはじめ、27の原材料 が挙げられています。

米国では35の鉱物を挙げています。アルミニウム(ボーキサイト)、マグネシウム、チタンなどの工業材料の他、EUと同様に希少金属も含まれています。

これらが製品に使用されている割合を指標として算出します。

 

回収可能な資源の指標は、資源がどのように回収され循環するかを示します。

たとえば製品のリユースや修理、リサイクル、または生分解/堆肥化という形で回収された資源の内訳を表します。

 

(3)循環資源の生産性を評価する指標

循環資源の生産性は、投入資源質量単位当たりの収益を示します。

この値が大きいほど、従来のリニアエコノミーから脱却しているということになります。

 

この評価が、企業が持続的にサーキュラーエコノミーに転換できるかの重要な視点になります。

また、「サーキュラリティに取り組むことで収益性が向上する」ことが外部から判断できれば、他の企業の参加を促すことが期待できます。

 

最新の詳細なプロセスについては「サーキュラー・トランジション・インデックス CTI V2.0」(英語版)を参照してください。

日本語版(旧版)に関しては「サーキュラー・トランジション・インデックス CTI V1.0

 

実際にCTIを利用した事例

最後に、実際にCTIを利用した事例を紹介します。

Whirlpool

従業員:92,000 人

業種:コンシューマープロダクト・サービス

年間売上高:210億ユーロ(約2.6兆円)

定量的なサーキュラリティ測定に興味もった理由

 

ワールプール社では、温室効果ガスの排出量やプラスチック廃棄物の削減など、社内や製品レベルでのサステナビリティ目標を掲げています。CTIは、全社的なサステナビリティ目標を達成するために、サーキュラリティパフォーマンスを継続的にモニターし、改善するための指標です。

 

主要な課題 とソリューション

 

主な課題の一つは、CTIツールが必要とする詳細レベルのデータを入手できるかどうかでした。たとえば洗濯機の生産工場のサーキュラリティ評価では、すべての投入資源は洗濯機に関連し、部品表の中には、サプライヤーから購入する部品や組立品があります。

 

実際の分析では、多大な労力がかかるため特定の製品に絞りました。また他社製品と比較するために、他社製品の分解分析を行いました。その結果、重量、使用材料や化学物質の種類や構成など、非常に詳細な情報が得られました。

 

分析の結果、当社製品の一部はリサイクル可能な材料を使用していますが、高い使用率でリサイクル材料を使用しているわけではありませんでした。最優先課題は、循環性を高めるための再生プラスチックの開発に注力し、公約に掲げた製品の再生材使用量の向上を達成することです。

 

 

Royal DSM

従業員:23,000 人

業種:化学

年間売上高:100億ユーロ(約1.3兆円)

 

定量サーキュラリティ測定に興味もった理由

 

DSMは、限られた天然資源からより多くの付加価値を引き出すことに力をいれています。サーキュラリティについては、お客様やパートナーにサーキュラーソリューションを提供できるように活動し、循環型経済への移行重点に貢献します。定量的なサーキュラー測定を用いたのは、循環型経済への第一歩としつつ、活動評価をするためです。

 

主要な課題 とソリューション

 

循環型経済に移行するためには、企業は生産に使用されるすべての材料とプロセスを把握し、管理する必要があります。DSMでは、CTIのフレームワークを使用して、生産データの収集、循環データ(製品、サービス、技術)の収集を行っています。

 

DSM内の各部門でCTIの「スコア」を分析した結果、組織全体の考え方を変えるきっかけとなりました。また業界、地域、製品の用途、バリューチェーン内の自社の立ち位置を把握できました。結果として自社に最も関連性の高い課題を把握し、 サーキュラリティの実現することができました。

環境と人 編集部

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