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プラスチックごみからは逃げられない!再認識すべき地球への深刻な影響とは

大量に生産されるプラスチックは、そのうちの約3分の2が廃棄され、地球上の陸や海、

川は今やプラスチックごみで溢れている状況です。プラスチックごみがもたらす環境への影響について、少なからず意識している方も多いのではないでしょうか。

ただ、プラスチックは、目の前のごみだけでなく、それと同じくらい深刻な“目に見えない汚染”をもたらしていることをご存じですか?驚くことに、プラスチックは風や雨の中にも含まれ、私たちが吸っている空気の中にも漂っています。

そこでこの記事では、プラスチックによる水や空気の汚染、気候変動や生物への影響についてわかりやすくご紹介します。

プラスチックはライフサイクルのすべてのポイントでCO₂を排出している

プラスチックの問題は、プラスチックごみだけではありません。プラスチックはライフサイクルのあらゆるポイントで、気候変動をもたらすCO₂を排出します。

プラスチックの生産量は、今後も増え続けることが予想されています。プラスチックがライフサイクルの中で具体的にどのくらいCO₂を排出するかについては、すべて調べるには情報が少ないため推定で出された数字が多いのですが、例えば世界経済フォーラムの資料によると、「2012年で3億9000万トン」のCO2が発生したと予想されています。また、Plastic & Climate: The Hidden Costs of a Plastic Planetという資料においては、「1MTのプラスチック生産によって1.89MTのCO2が発生している。2015年のプラスチック生産が3.8億トンなので、プラスチック生産による二酸化炭素発生量は7.2億トンと推定される」と記載されています。

今のペースで増え続ければ、2050年には世界の炭素排出量の15%という莫大な量になると指摘する専門家もいます。

製造におけるCO₂排出

プラスチックのライフサイクルは、大きく分けて製造、転換、廃棄の3段階。この中で製造によるCO₂排出量は、全排出量の約6割を占めています。原料の化石燃料を採取、輸送する時や、化石燃料を精製してプラスチックに転換するプロセスにおいてCO₂が大量に排出されます。

転換におけるCO₂排出

プラスチック原料を製品に転換する段階で出るCO₂は全体の約3割程度。大半は工場を稼働させるエネルギーによるものです。

廃棄におけるCO₂排出

出典:国連環境計画 国際環境技術センター 「SINGLE-USE PLASTICS:A Roadmap for Sustainability」

プラスチックの廃棄段階で生じるCO₂は、全体の約1割程度。埋め立て、リサイクル、焼却の3つの廃棄方法のうち、CO₂排出量が一番多いのは焼却です。廃棄されたプラスチックのうち焼却されるものは12%ですが、全体量を考えると小さな数字とは言えません。

プラスチックはカーボンシンクを破壊する

プラスチックはカーボンシンクを破壊します。カーボンシンクとは、排出されたCO₂を吸収・貯蔵する森林、緑地、海などの自然環境のこと。地球最大のカーボンシンクは海であり、産業革命以降、海は主に海洋プランクトンによって大気中のCO₂の3~5割を吸収してきました。しかし、海がプラスチックで汚染されてしまうと、植物プランクトンが光合成によって炭素を固定するプロセスが阻まれる可能性があります。実際、小さなプラスチック粒のせいで植物プランクトンが炭素を吸収できなくなっており、海中で炭素を循環させ輸送する動物プランクトンもまた、生存が危ぶまれる事態に。

つまり、プラスチックはCO₂を排出するだけでなく、自然環境のCO₂吸収を邪魔している可能性があるということになります。これは間違いなく、地球温暖化を食い止めようとする取り組みに深刻な影響を及ぼすことになるでしょう。

海は海面から海底までプラスチックだらけ

2050年には、海には魚よりもプラスチックの方が多くなっていると言われるほど、プラスチックごみの海洋汚染は深刻です。産業別に見ると、プラスチックごみを最も多く出しているのは、パッケージ産業。2015年の段階で、製造されたプラスチックの35%以上はパッケージに使われており、ごみの量は1億4,100トンでした。

パッケージごみの多くは回収も処理もされず、1秒ごとにトラック1台分が海に流れ出ているといわれています。そして、浜辺、海面、海底の至るところにとどまり、その場所によってさまざまな影響を及ぼしています。

浜辺のプラスチックごみ

浜辺のプラスチックごみと聞くと、打ち上げられたプラスチックごみを想像する方が多いと思いますが、実は事態はさらに深刻です。ハワイでは、プラスティグロメレート(plastiglomerate)と呼ばれる、プラスチックが燃えてできる新種の岩が見つかっています。これはプラスチック、火山岩、砂、サンゴ、貝殻などが混ざり合った岩石で、おそらく溶岩や森林火災、キャンプファイヤーなどによってプラスチックが溶けてできたものと考えられます。

出典:海洋環境科学センター MARE

さらにポルトガルの沿岸部では、プラスチクラストと呼ばれる、プラスチックが付着した岩も発見されています。青と白のポリエチレンごみが殻のように覆いかぶさり、岩場の生態系にも影響を及ぼしているのです。

海面のプラスチックごみ

プラスチックには浮かぶものもあれば沈むものもあります。ポリエチレンやポリプロピレンのように、海水よりも密度が低いものは浮かび、ナイロンのように海水よりも密度が高いものは沈みます。プラスチックは半分以上がポリエチレンかポリプロピレンなので、プラスチックごみの多くは海に浮かぶと考えていいでしょう。

プラスチックごみは海面にまんべんなく分布しているわけではなく、集中している区域がいくつか存在します。地球最大の集積区域は「太平洋ごみベルト」と呼ばれる区域。

出典:NOAA

「太平洋ごみベルト」は北太平洋に浮かぶごみの渦。風向きや海流、潮汐などがあいまって勢いよく渦巻く水の流れを作っています。流動的なので大きさは測りにくいものの、およそ160万km²くらいではないかと見られています。この区域に浮かぶプラスチックごみの9割以上がマイクロプラスチック。その数は推計1.8兆個というから驚きです。

海底のプラスチックごみ

理論的には海水よりも密度が高いものが海底に沈むわけですが、浮かんでいたプラスチックが海底に沈むこともあります。なぜかというと、もともと浮かんでいたものに藻やフジツボが付着し、海水よりも密度が高くなるからです。

マリアナ海溝は世界一深い海溝ですが、そんな中でも生命体はプラスチックを消費しています。最近の生態調査では、海溝の生き物の70%がプラスチックを食べていることがわかりました。海底の生物がプラスチックを摂取することによる影響は明らかになっていませんが、少なくとも何らかのダメージを与えていることは間違いないでしょう。

プラスチックが生物にもたらす影響

海は隅々までプラスチックで汚染されており、そこに暮らす生き物に影響を及ぼします。極端なプラスチック依存のしわ寄せは、顕微鏡でなければ見えないような小さな生命体から大型動物に至るまで、大きさや種類に関係なくすべての動物に向けられているのです。

魚への影響

プラスチックごみの魚への影響は、単に魚がプラスチックを食べてしまうというだけにとどまりません。小さな魚は大型の魚やウミガメ、海鳥などの食料源なので、食物連鎖によって被害が広がっていくことは明らか。

珊瑚への影響

珊瑚にプラスチックごみが付着すると、珊瑚は病気になってしまいます。なぜなら、プラスチックごみは細菌の住処だから。特にホワイト・シンドロームという致命的な病気は、ビブリオ菌という細菌による感染症と考えられています。

海鳥への影響

地球上の鳥の中で今一番減少のスピードが速いのは海鳥であり、その主な原因の一つが海洋プラスチックだと言われています。プラスチックを大量に飲み込んでしまうことだけが原因とは限らず、たとえ少量でも腎機能の低下やコレステロール値の上昇など健康に重大な影響が出ることがわかっています。

ウミガメへの影響

ウミガメもまた、プラスチックごみによって重大な影響を受けています。レジ袋をクラゲと間違えたり、細長い形状の黒や緑のプラスチックを海藻と間違えて食べてしまうことがあるのです。また、ゴースト・ギアと呼ばれる漁網などの漁業道具に絡まって溺れるケースも。

クジラへの影響

浜に打ち上げられた、死亡したクジラを検死すると、胃の中からは信じられないほどのプラスチックが出てきます。例えば2019年にスコットランドの浜に打ち上げられたマッコウクジラは、胃の中に100kgものプラスチックを蓄えていました。プラスチックを飲み込んでしまうと、プラスチックに消化が阻まれて栄養を吸収することができず、餓死してしまうケースが多いのだそう。

陸上生物への影響

陸上生物がプラスチックごみの影響を受けないかというと、そうではありません。海の生物に関しては調査が行われ、徐々に実態が明らかになってきていますが、陸上動物に関してはまだそれほど調査が進んでいないというのが実情です。

しかし、インドで死亡した象を検死した結果、プラスチックを大量に摂取したことによる内出血と臓器不全であることが判明した例もあり、その影響は陸上動物にも及んでいることがわかります。

プラスチックごみからは逃れられない

プラスチックは雨の中にも含まれ、私たちが吸っている空気の中にも漂っています。米科学アカデミー紀要に発表された、ユタ州立大とコーネル大の研究者による調査によると、アメリカでは毎年推計2万2,000トンのマイクロプラスチックが堆積していることが判明したそう。

また、人が日常的に摂取しているマイクロプラスチックの量は、食物と呼吸による摂取量がほぼ同じであるという推計もあります。

大気中のプラスチックによるリスクとして考えられるのは以下の3つです。

・健康リスク

・温室ガスの発生

・水の循環への影響

健康リスク

WHOは、マイクロプラスチックを飲食によって体内に取り入れてしまったとしても、基本的には排出されるため心配することはないとしていますが、呼吸によって肺の奥に入ってしまった場合の危険性は未知数。繊維状のマイクロプラスチックであれば、アスベストと同じような症状をもたらす可能性があります。

温室ガスの発生

プラスチックが分解される過程で温室効果ガスであるメタンが発生するという報告があり、地球温暖化への影響が危惧されています。

水の循環への影響

プラスチックは水を弾く性質がありますが、マイクロプラスチックにPAH(多環式芳香族炭化水素)という有害物質が表面に付着すると、氷を作りやすくなるという実験結果が報告されています。大気中マイクロプラスチックに微生物が付着してコロニーを作り、プラスチックを分解していくと、プラスチックの水を弾く性質が失われていき、マイクロプラスチックが雲を作る核になりやすくなります。大気中マイクロプラスチックが雲の発生量や雲粒の成長過程に影響を与えているとすると、地球全体の水の分布や循環に影響を与えることになります。

プラスチックごみの8割は街から

自分が捨てたごみがどこに行くかは私たちにはわかりません。しかし、私たち一人ひとりが意識を変えなければ、美しい自然を守ることは不可能なことは明らか。

北極海の氷から孤島の浜辺まで、プラスチックは世界中を汚染しています。この深刻な問題を解決するには、大がかりな組織レベルでの解決策と合わせて個人レベルの小さな解決策を実践することが必要不可欠。魚よりごみの量が多くなる日が訪れる前に、まずは私たち一人ひとりができることから始めてみませんか?

 

環境と人 編集部

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