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マイクロプラスチック入門

私たちの身の回りにはプラスチック製品があふれています。プラスチックは安価に生産でき、加工しやすいため、生活には欠かせない重要な素材となりました。

しかし、近年ではレジ袋有料化やプラスチックストローの廃止といった、脱プラスチックの動きが国内外で行われています。

プラスチックは自然分解されないため、自然環境に流出すると対応が困難です。そこで本記事では、海洋プラスチック問題とマイクロプラスチックについて紹介します。

海洋プラスチック問題の現況

一般社団法人の日本能率協会による「令和元年度 新たな種類の JAS 規格調査委託事業 調査報告書」では、1950年以降生産されたプラスチックは83億トンを超えていると報告されました。

このうち63億トンがゴミとして廃棄されており、現状のペースでは2050年までに120億トン以上のプラスチックが埋め立て、自然投棄されると言われています。

また、このプラスチックゴミによる海洋汚染は人間の生活圏だけではなく地球規模で広がっており、北極や南極でもプラスチックゴミが観測されました。年間で800万トン以上の流出があるとされ、2016年のダボス会議にて、2050年までには魚の総重量よりもプラスチックゴミの総重量が多くなると試算されました。

しかしながら、日本の流出量は2〜5万トンです。G20や先進国のなかでは比較的少なく、上手く対応していると言えます。行政によるプラスチックゴミの回収が進み、埋立地も適切に管理されているからです。しかし、それでも河川からマイクロプラスチックと呼ばれる極小なプラスチックゴミが検出されており、完璧とは言えません。

一方で、環境省の「海洋プラスチックごみに関する状況」によると中国および東南アジアからの流出が多いとされ、管理不十分による多くのマイクロプラスチックが海洋に流出していると考えられています。同資料では2010年に1,270万〜4,800万トンのプラスチックゴミが海洋に流出したと発表されました。

マイクロプラスチックとは

海洋プラスチックの問題で取り上げられるマイクロプラスチックは、直径5mm以下のプラスチックゴミのことです。プラスチックはいつまでたっても自然分解されないため、細かな欠片として海中に堆積していきます。

マイクロプラスチックは発生源によって2つに分類される

マイクロプラスチックは発生源の違いにより、一次マイクロプラスチックと二次マイクロプラスチックに分類されます。

■一次マイクロプラスチック

一次マイクロプラスチックは、生活排水などから直接発生したプラスチックゴミです。

例えば、洗顔料や歯磨き粉などには、これまでスクラブ剤と呼ばれる小さなプラスチックの粒が含まれていました。また、現在でもポリエステルのようなプラスチックの合成繊維を使った服を洗濯すると、細かな粒子として流れ出ます。

それらのマイクロプラスチックはかなり小さく、排水溝を流れて下水処理場のろ過装置をすり抜けてしまいます。非常に細かいため、一度海洋に流出してしまえば回収は困難です。

■二次マイクロプラスチック

二次マイクロプラスチックは、海洋でもっとも多いプラスチックゴミと言われています。

海洋に流れ出たプラスチック製品が、太陽の紫外線や風といった外的要因が原因で細かくなり、マイクロプラスチックとなります。例えば、ポイ捨てされたビニール袋やペットボトル等店タバコのフィルター、タイヤなどです。

また、プラスチックに使われる人体に有害とされる添加物は、マイクロプラスチックになっても残留します。石油から作られるプラスチックは汚染物質を吸着しやすく、誤飲した海洋生物や生態系に悪影響を及ぼします。

実際に、魚の胃からプラスチックゴミが発見された例もあったり、サンゴと共生関係にある褐虫藻(かっちゅうそう)が減少したり、生態系のバランスが壊れている事例(※)も確認されました。

現在、マイクロプラスチックによる健康被害があったという報告はありません。

しかし、人間は食物連鎖の頂点にいるため、「生物凝縮」となり影響があると考えられています。また、環境ホルモンを取り込むことで人体に影響があると言われています。

※日本財団ジャーナル:

【増え続ける海洋ごみ】マイクロプラスチックが人体に与える影響は?東京大学教授に問う

マイクロプラスチックの回収について

マイクロプラスチックの厄介なところは、小さすぎて回収が困難な点にあります。

特に、製品化したあとの対策やナノレベルのマイクロプラスチックになると、自然環境中での回収はほぼ不可能です。東京大学大気海洋研究所の道田教授によれば、海中を漂っているのか、それとも海底に沈んでいるのかもはっきりしておらず、各関連機関で実態調査が進められているとのことです。

自然界に存在する物質ではないので、人間が焼却しない限り自然分解されず、自然環境中に残り続けます。水や紫外線で細かく粉砕されますが、自然分解されないため微細化だけが進行し、回収はますます困難になっています。

自然に還る生分解性プラスチックとは

海洋プラスチック問題を解決するための希望が、生分解性プラスチックです。生分解性プラスチックとは、自然に還る特性を持つプラスチックで、例えば海藻から生分解性プラスチックを生産する研究開発(GSアライアンス株式会社のプレスリリース)などが進んでいます。

自然に分解される従来にはないプラスチック

生分解性プラスチックは自然界に存在する微生物の働きで、水や二酸化炭素に分解される特性を持っています。

ただし、近年よく聞くバイオマスプラスチックとは、必ずしも同じものではありません。バイオマスは植物由来の成分で作られていますが、生分解性は高くありません。

一方で、生分解性プラスチックは、材料によらず自然環境の中で分解されるかどうかという観点から作られています。すなわち、石油由来のプラスチックもあるのです。

したがって、生分解性プラスチックと生分解性の低いプラスチックを混ぜて、リサイクルといった後処理をしてはいけません。特性が混ざってしまうことで、生分解性の機能が失われてしまいます。

なお、バイオプラスチックについて、株式会社ファーイーストマテリアルの田上社長にインタビューを行いました。詳しくお話をいただいておりますので、興味がおありでしたら下記の記事をご覧ください。

>>環境配慮をしたい人が、バイオプラスチックを使ってはいけない理由

従来のプラスチックから生分解性プラスチックへの置き換え

自然界で分解されるとはいえ、従来のプラスチックを全て生分解性プラスチックに置き換えるのが正解とは言えません。

生分解性プラスチックは、従来のプラスチックより耐久性が低いと言えます。したがって、分解してはいけないものは、従来のプラスチックを使用したほうがよいでしょう。

また、生分解性プラスチックを使用したほうがよいものとして、耐久性が必要なく使用後に回収しづらいものが挙げられます。例えば、釣り糸や漁網といった自然環境へ流出する可能性があるものです。

一方で、パソコンや家電製品に使われるプラスチックで分解されてはいけないものや、現在しっかりと回収できているものは従来のプラスチックを使い、引き続き適切な回収や処分をしていくことが必要とされています。

生分解性プラスチックの技術開発はまだまだこれから

現在の生分解性プラスチックは、循環型社会に適したプラスチックとは言えません。それは環境によって、機能が発揮されない場合(三菱総合研究所)もあるからです。

たとえば、高温多湿や土壌環境、水環境などが挙げられます。自然界に存在する微生物の働きによるので、環境が違えば当然生息する微生物も違います。すなわち、生分解性プラスチックの分解されやすさも異なるのです。

すでにいくつかの生分解性プラスチックが開発されていますが、水環境で分解されるものはまだまだ多くはなく、分解されるまである程度の期間が必要です。

さらに自然環境は常に変化するので、変化に対応して分解されていく生分解性プラスチックが求められ、今後の開発が期待されています。

マイクロ波化学株式会社の取り組み

出典:PR TIMES

マイクロプラスチック問題に対し、独自のマイクロ波技術による研究を進めているのがマイクロ波化学株式会社です。

マイクロ波化学株式会社は、マイクロ波によるプラスチック分解技術のPlaWaveを開発、小型実証設備を完成させました。

あらゆるプラスチックに適用しており、従来の技術と比較して、省エネや設備のコンパクト化にるコスト低減が可能です。現在は1時間あたり5kgの処理能力を有していますが、2025年頃までに段階的にスケールアップする計画を立てています。

また、マイクロ波化学株式会社は、三井化学株式会社と連携し、PlaWaveを用いて廃プラスチックを原料のモノマーにケミカルリサイクルする技術の実用化を目指した取り組みを開始しました。将来的に使用するエネルギーを再生可能エネルギー由来の電気にすれば、co2排出量の削減にもつながります。

今後も、プラスチックの油化技術について開発を進め、これまで難しいとされていたポリエチレンやポリプロピレンのガス化も実証していくようです。

プラスチック問題の解決は各自の意識が必要

プラスチック問題を解決すべく、世界中の企業が日々取り組んでいます。新技術の開発が期待されますが、マイクロプラスチックへの対策はそもそもプラスチックゴミを出さないことが重要です。

たとえば、日本でもレジ袋の有料化やプラスチック製ストローの廃止といった施策が、国や企業によって推進されています。

これらのプラスチックごみの削減効果については、疑問視されている声もあります。かといって生態系に影響を与えることを続けてよいことにはなりません。

またプラスチック製品をなくすことは実際問題、不可能でしょう。そこで私たちに求められるのは、ゴミとなりそうなプラスチックを「捨てない・使わない」を選択できるように1人1人が意識的に行動することではないでしょうか。

 

環境と人 編集部

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