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注目される「身土不二」とは?今求められるサステナブルな食生活

現代は飽食の時代。しかし、そのかたわら、世界の9人に1人が栄養不足で苦しんでいるという現状があります。この深刻な矛盾をなくすため、私たちにはよりサステナブルな食べ方を実践することが求められています。

 

そこで今回は、今、食関連で注目を集めている「身土不二」という考え方にフォーカスし、「地産地消」や「サステナブル」との関係をご紹介しながら、サステナブルな食べ方のヒントを提案していきたいと思います。

 

今注目されている「身土不二(しんどふじ)」とは何か

身土不二(しんどふじ・仏教用語での読み方はしんどふに)とは、「人と土(環境)は一体で、人のいのちと健康は食べもので支えられ、食べものは土(環境)が育てている」という考え方のこと。

例えば暑い国で育った野菜や果物は、そこで暮らす人にとって暑さをしのぎ体調を整えるために必要でも、寒い地方に人にとっては体を冷やしてしまい逆に体調を崩しかねません。その環境に適したその土地の食物をいただくことが、健康な体を育むのです。

 

そもそも「身土不二」は仏教用語であり、また、明治時代に起きた食養運動に基づく考え方でもありました。その後、昭和初期にマクロビオティックなどの発展にも寄与しましたが、近年において、このちょっぴり古風な言葉が地産地消やスローフードといったワードとともに再注目を集めているのには、大量生産、大量消費といった課題の解決への糸口になるのではないかという期待も込められているのかもしれません。

 

「身土不二」が食の分野で注目されているのは、日本に限ったことではなく、1980年代末からは、韓国でも「身土不二(韓国語読みで、シントブリ)」の概念は広く知られています。千葉大学大学院・園芸学研究科のレポートによると、韓国では身土不二は『郷里の食材や地元の食文化を大切にすることが、健康上も望ましいし、自然環境の保全、さらには生活の安定・向上にもつながる』という意味に解釈されており、日本よりも広義にとらえられているということがわかります。

「身土不二」と「地産地消」の違いとは

このところ「地産地消」という言葉もよく耳にしますが、身土不二との違いは何かというと、その土地ゆかりの作物であることは関係なく、地域でつくられた農産物や水産物であればすべて対象となるという点。つまり、冬場にビニールハウスで育てた夏野菜も、隣町の牛乳で作られたチーズも、地元産であれば、それを食べることは地産地消になるのです。

 

もっとも、この「地産地消」という言葉が生まれた当時、塩分過多に陥りやすかった米とみそ汁、漬物という伝統的な食事を見直し、緑黄色野菜や西洋野菜の栽培量を増やそうという計画が実践されていました。1980年代当初の「地産地消」は、伝統食や旬を重んじる「身土不二」との考え方は、相いれない部分も多かったというわけです。

しかし、1990年代以降、海外からの安価な食材の流入するようになり、多くの消費者が食の安全性に対する意識に目覚め、地域で生産される食材や伝統的な食への注目度が高まりました。

さらに2000年代にはスローフード運動が広まったことで、身土不二を地産地消と結び付けて紹介するメディアが増え、境界線があいまいになったのだと思われます。

 

江戸時代には「三里四方」という表現が使われていた

ここで、ちょっと時代を遡ってみましょう。

江戸時代には、地域のものを最大限に活かすことは重要なことだと考えられていました。例えば食において重要視されていた「三里四方」。この言葉は、半径三里(約12km)の範囲で栽培された野菜を食べていれば、健康で長寿でいられるという意味です。人間が足で歩ける身近なところ(三里四方)で育ったものを食べ、生活するのがよいとする考え方は、まさに身土不二に通ずるところがあったわけですね。

当時どのような野菜が作られていたかというと、現代においても食べられる江戸東京野菜を見ればわかります。

「亀戸大根」「練馬大根」「品川かぶ」など、土地の名前のついた江戸東京野菜は約50種。この江戸東京野菜の始まりは、江戸時代初期。インフラ整備による急激な人口増加で新鮮な野菜が不足したことから、近郷に畑を設け、関西から呼び寄せた農民たちが野菜作りに着手しました。さらに参勤交代によって江戸に集められた地方の大名たちも、国元から持ち込んだ野菜の種で栽培を開始。こうして全国から集まった野菜の種の中から、江戸の気候や風土に合った野菜だけが固定種として定着しました。これが江戸東京野菜のルーツ。

在来種・固定種は栽培に手間ひまがかかるうえ、大きさにバラつきがあり収穫量も少ないという面もありますが、味は力強く個性的。これからも大切に後世に受け継いでいくべき作物です。

 

合わせて意識したい「一物全体」という考え方

実は「身土不二」と並んで重要なのが、生命あるものを丸ごと食べるという「一物全体」という考え方。身土不二と一物全体は食の2大原則と言われ、養生学の考え方として定着しています。

生命は個体全体でバランスを保っているので、野菜なら皮をむかず、葉や根の部分も食べる。小魚は頭から尾まで、穀類なら精白していない物を食べる事により食物本来の生命力を頂くことができます。

栄養学的に見ても、

・にんじんに含まれるβ-カロテンは皮の下の部分に最も多く含まれる

・じゃがいもは皮つきのまま調理すると、ビタミンCの損失を最小限に抑えることができる

・大根の葉にはビタミンCが豊富

など、食物を丸ごと食べることは体にとってもいいことがわかります。

 

捨てるところがない=ゴミも出ないので、結果的にエコロジカルな食べ方にも繫がり一石二鳥。そのまま食べることが難しくても、野菜の皮や茎、ヘタなどの切れ端を煮詰めてベジブロスにしていただくなど、工夫次第で簡単に取り入れることができるはず。「身土不二」と「一物全体」のどちらにも言えることは、自然の摂理に則った食事が健康に繫がるという点です。

 

「身土不二」とサステナブルの関係

では、再び注目を集めている「身土不二」という考え方は、サステナブルな考え方や行動とどのように結びつくのでしょうか?

 

近年地元で採れた新鮮なオーガニック野菜を買い求める人が増えていますが、このような、いわゆるファーマーズマーケットで買い物することには以下のようなサステナブルな要素が詰まっています。

このような行動は、旬や伝統と深く関わる「身土不二」の思想と親和性が高いことがわかります。作り手は届けられる範囲に必要な量を、その土地に合った環境に負荷のかからない優しい農法で作り、消費者は丁寧に作られた食材を無駄なくいただく。これは、とてもサステナブルで、機能的な行動だと言えるのではないでしょうか。

サステナブルな食べ方のヒント

ファーマーズマーケットのような場でいつも買い物ができたら理想的ですが、なかなかそうはいきません。そこで、普段の生活の中でできる、身土不二の思想に近づけるサステナブルな食べ方のヒントをいくつかご紹介します。

 

・地元の個人店で買い物をする

地元の個人店で買い物をすることで、手っ取り早く地域貢献することができます。全国チェーンのスーパーではなく地元の個人店で買い物をすることで、地域でお金を回すことを意識しましょう。

 

・あえて規格外の野菜を買う

スーパーなどではつい形の揃った食材を選びがち。しかし、当たり前ですが、形や見た目が悪くても栄養分や美味しさは変わりません。フードロスを少しでもなくすためにも、あえて規格外の野菜を買って美味しくいただきましょう。

 

・季節の食材を選ぶ

食材の栄養価が最も高まり、美味しく食べることができるのが、旬の食材。健康にいいのはもちろんですが、「フードマイレージ」も重要なポイントです。

季節に合わない野菜を買うということは、すなわち遠い地域から運ばれた野菜を買うということ。輸送にかかる燃料が増え、環境に優しいとは言えません。

 

・国産・地元産の食品を選ぶ

フードマイレージをできるだけ減らし、地元でお金を循環させることができる地元産の食品を選びましょう。

 

・顔の見える食品を選ぶ

信頼性の高い食品を選ぶためには、誰がどのように作っているかを知ることが必要。食の安全性が確保されているのかどうか、家畜をどのように扱っているかが見える食品は、安心して購入することができます。

 

・オーガニック食材を選ぶ

農薬や化学肥料を使わないものオーガニックな食品は、体に優しく美味しいだけでなく、環境にも優しいのがポイント。できるだけ持続可能な方法で作られた食材を選ぶようにしましょう。また、このような食材は素材を丸ごといただく一物全体の考え方に則した食べ方にも最適。

サステナブルで機能的な食べ方を習慣づけよう

私たち人間はこれまで地球上の資源を大量に消費し、環境を変えてきました。その結果、自然は破壊され、深刻な環境問題に直面しています。専門家の中には、そう遠くない将来世界的な食糧危機が到来し、人類の生存そのものが危うくなると指摘する方も少なくありません。

 

現代は飽食の時代。ですが、環境のために食材の無駄をなくすことは、「もったいない」という感覚を備える私たち日本人にはそこまで難しいことではないはずです。

自分や自分の大切な人の体にとって安心安全で環境の負荷も減らせる「身土不二」という思想を取り入れることが、サスティナビリティな社会への第一歩になることは間違いありません。

買い物は一種の投票行動であり、消費には力があります。

・地元のものを食べれば新鮮で美味しい。

・生産者の顔が見えるので安心。

・流通コストやエネルギーの削減に繫がる

難しく考えなくても、世界中のあらゆる食材が選べる時代だからこそ、いま一度身土不二の考え方を見直してみてはいかがでしょうか。

環境と人 編集部

このメディアは、「ごみ問題を解決する」ことを目的として、サステナブルな社会と、自然と調和したライフスタイルに関する情報を発信しています。
普段あまり目にすることのない「リサイクル・廃棄物産業側の視点」から、環境と社会に関する深い理解を提供していきます。

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