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江戸時代のシェアリングエコノミーとは⁉物を持たないミニマルな生き方

現代はありとあらゆる“モノ”に溢れています。しかし、近年は“たくさん物を持つこと”=“豊かであること”という意識は薄まり、家や車、自転車などをシェアする人も増加中。このようなモノを持たないミニマルな暮らしは、実は江戸時代では当たり前に行われていました。

 

そこで今回は、江戸時代に実際行われていたさまざまなレンタル業や、あらゆるものをシェアする合理的な暮らし方をご紹介しながら、現代のシェアリングエコノミーについても考えてみたいと思います。

 

江戸時代のミニマルな暮らし方とは?

江戸の町は火事を想定した安普請(粗雑なつくりの家。万が一火事になっても身体一つで逃げられる)のため、長屋の住人は最低限の物だけしか家財道具を持ちませんでした。そもそも長屋のスペース自体も極端に狭く、4畳半程度の空間と炊事場の土間に家族全員が生活していたため、たくさんの物が入る余地がなかったのです。そのため、人々は多くのものを貸し借りし、ほとんどモノを持たない生活を行うことが当たり前に。江戸の町では生活に関わるさまざまなレンタルサービス業が繁盛し、あらゆるモノをシェアして合理的に暮らす人々の生活を支えていたと言われています。

江戸時代のレンタルショップ「損料屋」

あらゆる品物を取り揃え、江戸時代の人々の生活を支えていたのが、今で言うところのレンタルショップ「損料屋」です。布団や衣服、手ぬぐい、鍋蓋、冠婚葬祭や旅行のときに使うさまざまな用品…損料屋にはありとあらゆる品物が揃っていましたが、主力商品はなんと「ふんどし」。江戸時代のふんどしは、身分の低い武士たちにとって高級品だったため、気軽に買えるような代物ではなかったようです。

 

品物を貸せばその分価値は目減りするので、その目減り分を損料(つまりレンタル料)として受け取る。これが損料屋のシステムです。また、保証金に該当するシステムも発達しており、品物を返却した時にその残額が返って来ました。損料が十文(200円)の場合は保証料が二十文(400円)で、合計三十文(600円)。きれいなまま返されればこの保証金が戻ってくるという仕組みです。

賃貸する期間もまちまちで、数年や数ヶ月になることはもちろん、日没から翌朝の日の出まで貸す『蝙蝠貸(こうもりがし)』や、反対に日中のみ貸し出す『烏貸(からすがし)』などスタイルも様々でした。

江戸時代は貸本業も盛んだった

江戸時代には、レンタル本屋「貸本屋」も盛んでした。江戸では約650人が貸本業を営んでいたと言われています。

江戸庶民に本が読まれるようになったのは江戸時代中期。それ以前の出版物は公家、武家、僧侶など特定の知識階級の人たちだけのものだったため、主に学術書や仏書などが出版されていました。元禄時代に入り町人文化が栄え、絵本をはじめ怪奇物などの読み物など庶民が楽しめる本がたくさん出版されるようになると、庶民の間では一気に読書ブームが到来。

しかし、庶民にとって本が身近なものになったとはいえ、当時の本の値段は蕎麦の値段の何十倍や何百倍もしたと言われており、到底手の届くものではありませんでした。そこで登場したのが貸本屋というわけです。

 

レンタル料はというと、「見料は四、五冊物で銀三分から四分、現在のお金で240円から320円ぐらい。一冊物で銀二分、160円ぐらい、十冊物以上になると銀一匁前後、800円ぐらい」(長友千代治『近世貸本屋の研究』東京堂出版)だったそう。

レンタル方法は行商方式、つまり貸本屋がお得意先に本を持っていくシステムでした。当然持参できる量には限りがあるので、貸本屋は借り手の好みを把握し、ニーズに合わせた本をピックアップして持参したというから驚き。貸本業の繁栄を支えたのは、こうした貸本屋の地道な努力だったのです。

 

「長屋」は江戸時代版シェアハウス

『膝栗毛文芸集成』より

江戸の町には「武家地」「寺社地」「町人地」の3エリアがあり、身分によって居住エリアが決まっていました。「町人地」で商人や庶民が住んでいたのが集合住宅である「裏長屋」。一説には町人人口およそ50万人のうち約70%が借家暮らしで、そのほとんどが裏長屋暮らしだったと言われています。

 

長屋の代表的な間取りは「九尺二間(くしゃくにけん)」で、間口が九尺(約2.7m)×奥行が二間(約3.6m)だったことからこう呼ばれていました。現代でいう六畳間と同じ程度の広さで、そのうち土間が一畳半分ぐらいあるため居住スペースは四畳半程度。入口の戸を開けると家全体が丸見えで、壁は薄く生活音がすべて聞こえてしまうので、プライバシーは皆無だったと言えるでしょう。

 

長屋に住む住民同士には、日常的にさまざまなやりとりが存在していました。生活必需品の貸し借りはもちろん、毎日のように調味料や米などの貸し借りや食材や料理のおすそ分けが行われていたそう。

何でもすべて筒抜けな分、江戸の町人たちはお互い助け合いながら長屋暮らしを楽しんでいました。つまり、裏長屋は賃貸住宅というよりひとつのコミュニティだったわけです。

水場のシェアは当たり前

『冬のあした』歌川国貞 画

井戸は長屋の共同設備で、江戸時代の中期頃には江戸市内中にほぼ20~30m四方に1ヶ所ほど設置されており、飲料水、炊事、洗濯、行水などに使う水を順番に汲んで各戸の水瓶まで運んで満たす作業が行われました。他の人が水を汲んでいる時間の主婦たちの雑談が、今でも使われている「井戸端会議」。長屋の共同井戸は住人が集うコミュニケーションの場でもあったのです。

社交場の役割も果たす「湯屋」

『肌競花の勝婦湯』豊原国周 画

長屋生活でのお風呂はどうしていたかというと、今で言う銭湯「湯屋」に通っていました。湯屋は、ピーク時には江戸の町に約600軒も存在したそうです。

洗い場と浴槽の間に板戸を張って湯気が逃げて温度が下がらないような作りになっており、浴槽のある区間は明かり取りの窓もほとんどなかったので、湯気が漂う暗い空間の中で入浴していました。

「火事と喧嘩は江戸の華」というように、湯屋では些細なことから喧嘩が頻発していたものの、さまざまな職業や階層の男女が集っておしゃべりをし、憂さ晴らしをして帰って行く湯屋は江戸の活力を支えた大事な社交場の役割もあったようです。

子供は長屋の住人みんなで育てる

『絵本時世粧』より/歌川豊国 画)

長屋で暮らす住民たちの支え合いは、生活必需品の貸し借りだけでなく育児の場面でも行われていました。子どもが生まれると住民がみんなで世話を焼き、地域社会で子供を育てるのが当たり前。そのため、生活費を稼ぐために長屋の外へ働きに出なければいけない母親も、育児に煩わされることがなかったそうです。

これには、「生後1年間の乳幼児死亡率が20~25%」という高さも影響しています。つまり子供の成長はまさに奇跡であり、将来の江戸を担う子供は地域の宝であるわけです。

現代におけるシェアリングサービスの実例

ここからは、現代におけるシェアリングエコノミーについて見ていきましょう。

メルカリなどを生んだシェアリングエコノミー市場は、2030年には市場規模が11兆円を突破すると予測されています

シェアリングエコノミーとは、個人や企業が持つモノや場所、スキルなどの有形・無形資産を、インターネット上のプラットフォームを介して取引する新しい経済の形のこと。シェアリングエコノミーは取引される資産によって5つの領域に分類されます。

出典:一般社団法人シェアリングエコノミー協会

現在日本で展開されているシェアリングサービスの中から、いくつかの事例をご紹介します。

Airbnb

Airbnb(エアビーアンドビー)は、空き室や空き家を宿として提供したい人と旅行先で宿を取りたい人をつなぐ、世界的な民泊サービス。世界220ヵ国以上の国で560万件以上の物件が登録されています。

アイカサ

アイカサは、傘のシェアリングサービス。一度アプリをダウンロードすれば、スマホをかざしタッチ一つで傘が借りられます。突発的な雨にもビニール傘をわざわざ購入せずにアイカサを借りて利用し、雨が止んだ際には最寄りの傘スポットに傘を返却することができるのが特徴。使い捨て傘に終止符を打ち、”傘を消費しない”環境に優しい社会を目指します。

タスカジ

タスカジは、多彩な家事スキルを活かして働くハウスキーパーと、家事をお願いしたい人とをつなぐシェアリングエコノミーの家事代行マッチングサービス。掃除から料理、作り置き、整理収納まで、依頼主には低価格、働く人にとっては高時給の嬉しいビジネスモデルです。

Carstay

Carstayは、空き駐車場や空き地のオーナー(ホスト)と、車旅人をマッチングするシェアサービス。従来の車中泊スポットとは異なり、温泉旅館・古民家・スーパーなど2~3台の空き駐車場で静かに車中泊することができ、従来の車中泊スポットよりもプライベート感あるスペースで伸び伸びとくつろぎながら車旅を楽しむことができるのが特徴です。登録施設は全国で230か所以上。

 

このように、さまざまなシェアリングサービスが登場していますが、日本国内においては認知から利用への行動シフトをどのように促すかが課題となっています。

シェアをうまく取り入れることで環境にも優しい暮らしを

近年のシェアリングエコノミー市場急成長の背景には、BtoC経済にはなかったメリットやスマホ・タブレットの普及などテクノロジーの発展という技術的側面はもちろんですが、江戸時代の生活に見られるような助け合いの文化も寄与しているのではないでしょうか。

江戸時代の人々がモノを持たなかったのには、確かに生活スペースなどの事情もありますが、所有できる物が限られた生活が人々の新たなアイデアや生活のイノベーションを生み、人と人との距離を近づけ、ご近所同士の助け合いやコミュニティ形成が自然に行われていたという点は、現代においても学ぶべきところが多いと思います。

 

何かを購入する前に、本当に必要なものか、買わなくても良い方法はないか一度立ち止まって考えるだけでも世界は変わるはず。

合理的かつ環境にも優しいライフスタイルの実現に向けて、今の生活の中にうまくシェアを取り入れてみてはいかがでしょうか。

環境と人 編集部

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