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「衣服ロス」に向き合う~サステナブルファッションをどう進めるか

衣服の大量廃棄問題はネット上で廃棄現場の写真が出回ることで一般にも広く知られるようになりました。英国の高級ブランド「バーバリー」が、服や香水など約42億円相当を燃やして廃棄していたことが発覚し、激しい批判を受けたことを覚えている人も多いのではないでしょうか。(英バーバリー、42億円相当の売れ残り商品を焼却処分 – BBCニュース)2018年のことでした。

問題は海外の高級ブランドに限りません。バブル期に15兆円あった日本のアパレル市場は2016年には10兆円まで縮小しました。その一方で、供給量は2019年に約35億着と、1990年の1.7倍に増えています。(環境省_サステナブルファッション (env.go.jp)

「プチプラ」などと形容される単価の下落もありますが、需給のギャップはあまりにも大きいのです。流行品を大量生産するファストファッションの台頭が拍車をかけています。企業は商機を逃すまいと新商品の投入頻度を高め、余ると安売りセールでさばいています。元の価格が形骸化していて、過剰供給の悪循環は断ち切れません。

アパレル産業の大量生産・大量消費は、環境に大きな負荷をかけているとの声は年々強まるばかりです。今回は、衣服の大量廃棄問題について考えてみましょう。

 

深刻なアパレル業界の廃棄問題

環境省の調査(2020年)によれば、国内では、家庭で着古すなど使い終わった衣服の66%に当たる約51万㌧がそのまま廃棄され、リサイクルや再利用されたのは3割あまりにとどまっています。1日当たりに換算すると、毎日大型トラック130台分の衣服がごみとして捨てられた計算になります。

また、国内に衣服を供給するサプライチェーン全体でみると、原材料を調達して製造する過程で年間約9万キロ・トンの二酸化炭素が排出されていており、1着当たりに換算すると、二酸化炭素は平均約26キロ。500ミリのペットボトル約255本分の製造に相当します。さらに、原材料の栽培や染色など、1着に使われる水は約2300リットルにも及びます。(環境省_サステナブルファッション (env.go.jp)

35億着もの膨大な量の衣服を生産するための作り手の犠牲、そして廃棄にかかる測り知れない環境負荷や労働問題に、ようやく消費者の目が向き始めています。アパレル業界も深刻な問題と位置づけ、企業が動き出しました。

 

倉庫に眠る衣服を掘り起こす~東京都内で開催の「RAHA KENYA」のポップアップを訪ねて

「RAHA KENYA」(ラハケニア)は、アフリカ・ケニアからの個性的なアフリカ布で仕立てた服やアクセサリーなどを扱うファッションブランド。(RAHA KENYA)ネットショップを中心に運営されていますが、期間限定でポップアップショップがオープンすることも度々です。

創業者の河野理恵代表は、2018年に起業するまでアパレル業界にかかわったことがありませんでした。ビジネスを始めてまず驚いたのが、大量の廃棄物が出ること。正規品が誕生するまでに制作過程で繰り返し試作されるサンプル品の多さに圧倒され、少しの傷や汚れ、縫製の不備によって検品落ちする現実に衝撃を受けたと言います。そうしたアイテムは日の目を見ることなく、倉庫に眠っているわけです。

そこで、「売る分だけ作って捨てない」経営で根本的な課題解決を目指すことにしました。梱包資材には、通常は捨てられてしまう余り布を利用して廃棄物削減に努めています。

10月23日と24日の両日、東京・目黒区の小スペースで開かれた同ブランドの「もったいないPOPUP」をのぞいてみました。

展示ブースに試作品の数々が並べられ、物販ブースには、検品落ちしたアイテムが30-60%オフの価格で販売されていました。「ここに汚れがあります」「ブランドロゴが隠れてしまいました」など、それぞれどこに問題があるのか、添え書きが付いていました。

私は白のおしゃれなかごバッグが気に入って買ったのですが、「ここに汚れといいますか色ムラがあるんです」とスタッフに説明されるまで、なぜ検品落ちしたのか全くわかりませんでした。自然の植物繊維で編まれているのだから、色に多少のムラがあるのは許容範囲だと思うのですが、検品ではねられてしまうのです。

河野代表の「捨てない」経営哲学は、衣服の大量廃棄問題への一つのチャレンジと言えるのではないでしょうか。

 

サステナブルファッション推進に向けた取り組み

環境に配慮したサステナブルファッションの推進に向けた取り組みは広がっています。従来の手法や戦略を見直し、メーカーが消費者に「長く着続けるように」と促したり、再生した服の販売を強化したり、様々です。

米国のアウトドアウェアメーカーの「パタゴニア日本支社」は、東京都内の店舗で、2021年8月から期間限定で自社製品の古着を販売しました。スタッフが愛用してきたパーカーやジャケット、シャツが並び、タグに着続けてきた思いなどが記されています。買い過ぎないように、購入は1回2着まで。店内では補修の実演も行いました。同社は商品を長く使ってもらう「Worn Wear」キャンペーンを進めており、「必要ないモノは買わないで」とも呼び掛けています。(パタゴニア日本支社 | SDGs | グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン (ungcjn.org)

広島県福山市の「坂本デニム」は、デニムに使う綿糸を作る過程で大量の湯と洗剤を使用する従来の手法を見直し、水を電気分解して洗浄処理する「エコ染色」技術を導入。(坂本デニム株式会社 | Sakamoto Denim Co.,Ltd. | ジーンズ染色 インディゴ連続染色 | デニム生地販売 | イヌ用デニムグッズ販売 (sakamoto-d.co.jp))他のアパレルメーカーからも高評価を受けています。

百貨店では、不要になった衣類に新たな付加価値をつけるアップサイクルに力を入れています。「三越伊勢丹」は、京都の老舗織物会社の技術を使って、汚れて着られなくなった服を黒く染めて再生するサービスを始めました。(黒紋付の染め上げ技術を持つ京都紋付と手がける黒染めサービス<KUROZOME REWEAR> | レディース | 三越伊勢丹オンラインストア【公式】 (mistore.jp))「高島屋」は「日本環境設計」との協業で、回収した中古衣料からポリエステル糸を再生、それでTシャツやジャケットなどを作って販売しています。その名もズバリ、「再生し続ける服。」です。(デパート デ ループ(Depart de Loop)|高島屋 (takashimaya.co.jp)

 

国も啓発活動などを通じて後押ししています。経産省、環境省と消費者庁は、2021年8月、サステナブルファッション推進に向けた関係省庁連携会議を設立。生産・流通から廃棄・循環までの各段階に応じて、事業者と消費者の双方に意識改革を促し、制度面を含めた課題の整理・検討を行っています。消費者庁の特設サイトでは、「本当にその服が必要かどうか、もう一度よく考えてみる」など、衣服の購入から処分までの18の行動のヒントを紹介しています。(サステナブルファッション習慣のすすめ|エシカル消費特設サイト[消費者庁] (caa.go.jp)

また、環境省の「ファッションと環境」タスクフォースからは同じく8月、「ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)」が発足。アシックス、伊藤忠商事、倉敷紡績、東レ、日本環境設計、良品計画など11社が参加。官民で連携して、「適量生産・適量購入・循環利用によるファッションロスゼロ」と「2050年カーボンニュートラル」を目標に掲げて、サステナブルファッション産業への移行を模索しています。

 

100%循環型ファッションは可能か?

では、100%循環型ファッションを作ることは可能でしょうか? ファッションのサーキュラーシステム実現に向けて、今できることと今後の課題を考えてみましょう。

サーキュラーエコノミーは、作って使って終わりではありません。最初から捨てる先まで視野に入れた循環の仕組み作りが求められているのです。

サーキュラー型のファッションを実現している事例を2つご紹介しましょう。一つは、「Green Down Project」が行っている羽毛製品のリサイクルシステム。(Green Down Project | グリーンダウンプロジェクト | 羽毛が変われば、世界が変わる。 (gdp.or.jp))ダウンジャケットや寝具など羽毛を使った製品を回収し、中綿を切り出し、洗浄して再度素材として蘇らせる仕組みです。タンパク質でできている羽毛を燃やさないことで二酸化炭素の排出を抑えられます。

もう一つは「日本環境設計」のBringというケミカルリサイクルのシステム。不要になった服を回収し、ポリエステルのみ取り出して再生ポリエステルを作ります。(BRING | 服から服をつくる)前章に挙げた高島屋の「再生し続ける服。」で実際に利用されています。

これらの取り組みには多くのアパレル企業が賛同しています。こんな具合で「服は再資源として回収されるべきもの」という認識が徐々に広まっていくのであれば、循環型ファッションの構築は順調なようにみえます。

ただ、課題もあります。最も困難なのは、需要と供給のバランスを取ることが容易ではない点でしょう。不要になった衣服の回収だけが多くなっても、それらを使っての製品化が進まなければ素材として残り、大量に保管場所を確保する必要が出てきます。それこそ本末転倒の事態が起こる可能性があります。きれいな循環サイクルを描くには、ある程度需給見通しを立てることが必要です。

現在日本で可燃ごみとして出される衣服は1日1300トンとの調査があります。これらすべてがリサイクルに回った場合、処理能力を有する工場があるかという点も疑問です。

(参考記事:いらないその服、大切に捨てよう

 

さらに、衣服は多種類の素材がミックスされていることを忘れてはなりません。たとえば、ダウン製品の再生時に出るダウン以外の素材をどうするか、再生ポリエステルのケミカルリサイクルについても、ポリエステル以外の混合物の再資源化はどうするか、課題が残りそうです。

(参考記事:「BIOLOGIC LOOP」サーキュラーエコノミーを実現するプラットフォームの提案

 

単一素材を使い、シンプルなデザインでリサイクルしやすい服を作ることも考えられるでしょう。とはいえ、ファッションの楽しさ、わくわく感は大事です。となると、クリエイターの技術やネットワークを複合的に連携させた、サーキュラー型ファッションのコミュニティを作るのも一案かもしれません。

廃棄予定の新品未使用の衣服や服飾資材を使ったクリエイター向けの「クローズ・リノベーション・コンテスト」(MODALAVA株式会社主催)は2019年秋から始まりましたが、SDGsへの関心の高まりから毎回参加者が増え、2021年春からは隔月間で開催される盛況ぶり。シーズンごとに資材を提供する協力企業が変わり、リメイクの材料もアップデートされています。コンテストへのリピーターも増えて、「一度手に取ったものを次の人に大切に引き継ぐ」のコンセプトの下、同社が作ったリメイクコミュニティ「atelier HIKITSUGI」には700人以上が登録しています。

ファッションリメイクコミュニティ|atelier HIKITSUGI (a-hikitsugi.tokyo)

 

まとめ

9月から10月にかけて開催された「2022年春夏パリコレクション」では、ファッション界のサステナビリティへの取り組み強化が大きな潮流として読み取れました。

「クロエ」は、過去のコレクションの残反を細かく切ってマクラメ網にしたドレスを提案しました。イタリアのアクアフィル社が開発したリサイクルナイロン・エコニールは、漁網や使い古したカーペットなどの廃棄物を100%原料にしています。(伊藤忠とリサイクルナイロン「エコニール」の伊アクアフィルが提携 – WWDJAPAN)「グッチ」や「プラダ」などがこぞって採用しています。

2008年にいち早くオーガニックコットンを採用し、様々な素材メーカーとサステナブルなファッションマテリアルを開発してきた「ステラ・マッカートニー」は、今シーズンはキノコ由来の人工レザーを使った黒のバッグを発表。「ランウェイで目にしているものこそが、未来のファッション」とメッセージを送りました。デザイナーは労働環境の改善にも尽力しており、すべての働き手が搾取や差別なく公正な環境の下で自由かつ安全に仕事ができるように活動するグローバル組織「ETI」(region_index13_170313_0003.pdf (caa.go.jp))にも加盟しています。

アパレル業界は、立ちはだかる大量廃棄問題を今こそ好機ととらえる時です。ITの活用で需要予測と生産管理の精度を高めれば、無駄な量を作らずに、流行に合わせて機動的に商品を投入できるはず。新たなビジネスモデルを構築する気概が求めらます。一方の消費者も、環境への配慮もデザインや価格と同様に購入の際の判断材料ととらえて、自分のできることから一歩踏み出すことが大切なのではないでしょうか。

永峰好美

読売新聞記者として主に生活面などの取材にあたり、2005年から新聞社が親会社だった百貨店のプランタン銀座取締役、同常務取締役。その後、読売新聞東京本社編集委員を務め、2018年5月に新聞社を卒業。夫のギリシャ大使就任に伴ってアテネに在住、2020年末帰国。環境をはじめライフスタイルに関わる記事を執筆している。

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