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日本とシンガポールの意外な共通点

地球を巻き込むファストファッションの歪み

ポイ捨てに罰金が課されるなど、いち早くから公衆衛生の徹底がなされクリーンな印象の強いシンガポールはまた、世界の金融の中心地のひとつだ。

人口570万(日本のわずか4%)という小国ながら、日々膨大なお金が動き経済も人口も拡大傾向にあるこの国は必然、消費も活発で、ごみ問題を抱える国でもある。中でも大量に出るごみの一つが布類・繊維ごみ(衣類、靴、カバン、寝具、カーテンなど)だ。シンガポール人一人あたりの排出量は日本を上回っており、衣料のリサイクル率も日本の11%を下回る8%だという。

今回はシンガポールの衣料ごみ排出事情を追うとともに、近い状況にある日本の現状についても考えてみよう。

 

日本と似た国、シンガポールの衣料品事情

シンガポールの住民ひとりがファッションに年間かけるお金は、約33,000円。日本の37,149円(2020年調べ)と伯仲している。一回のショッピングで8,400~25,200円くらい使うという人もおり、数ヶ月着ただけで買い換えることもざらだ。そして、日本と同じくファストファッションの隆盛によりその周期は更に加速し、毎日のように新しいデザインの服が売買されている。

現地での調査によると、シンガポール人は一人当たり年間に34点のファッションアイテム(服、靴、カバンなど)を購入し、27点を捨てるという結果が分かった。つまり、買った服の80%がごみとして捨てられているということだ。

さらに驚くべきことに、服を捨てる大きな理由の1つが「新しく買った服の収納スペースを作るため」だった。


このように服のリサイクル率が低く日本と状況の近いシンガポールだが、ひとつ日本とは違う点がある。シンガポール人の半分以上が不要になった服をチャリティーに回しているという点だ。この点は寄付の文化がない日本よりも進んでいるように思えるが、しかしその結果、行き場のない古着が福祉団体に溢れてしまっている状態になっており、溢れた古着の多くが古着輸出業者に運ばれてくる。

中には新品同様の綺麗な服も珍しくなく、業者に送られてくる古着の量は毎年10%ずつ増加傾向にある。その多くは2~3か月程度着てチャリティーに出されたものだが、タグが切られていない新品のケースもある。そしてそれだけではなく、衣料品店からの在庫処分で出た新品の服もよく持ち込まれるのだ。

 

古着の輸出はこれからどうなるか

2015年に15万トン超の布類・繊維ごみが出たというシンガポール。国内最大の古着輸出業者では毎日20トンの洋服が回収されるが、古着はシンガポール国内では需要がなく、日本と同じように輸出用に梱包され、アジアの途上国やアフリカに向けて輸出・販売されている。

しかし、その古着の輸出を含めてもシンガポールの布類・繊維ごみのリサイクル率はわずか8%で、さらに低下傾向にあるという。

シンガポールから輸出された古着の買い取り手のうちの1つがインドネシアだ。インドネシア最大の古着市場「モンジャマーケット」にはシンガポールから運ばれてきた服が多く並んでいるが、国内の新品よりも質がいいとされ、非常に喜ばれているそうだ。

 

しかし、この市場で輸入古着を扱う店は一年で半数が閉店した。その理由はインドネシア政府が規制に乗り出したためだ。2015年、政府が地元の布類・繊維業界を守るため、海外からの古着輸入を禁止する措置を発表して以来、シンガポールからの古着輸入量は大きく減少した。

古着の輸入規制に乗り出したのはインドネアシアだけではない。東アフリカ諸国もまた、中古衣類の輸入禁止を検討しているという。これはただでさえリサイクル率の低いシンガポールにとって大きな打撃となる恐れがあるが、もちろん日本も他人事ではないだろう。

こうした世界的な情勢のなかで、一体どうすれば無駄に廃棄される服を減らすことができるのだろうか。

 

服を捨てない選択肢

ひとつは国内で古着の需要を伸ばすことだが、シンガポールの人々に古着を買わせるのはかなり難しい。先述のシンガポールのTV局が1,000人に行った調査では、77%の人が「古着は絶対に買わない」と答えており、その理由は「誰かが一度着た服は、たとえ洗ってあっても抵抗感がある」というものだった。これはシンガポール国民の高い衛生観念が少なからず関係していると思われるが、この点も日本とかなり近いものがあり、日本人1万人への2008年のWebアンケート調査では、古着の購入に「抵抗感がある」と答えたのは72%だった。

古着市場を通してリサイクル量を増やすのが難しいのであれば、捨てる量を減らすのはどうだろうか。とはいえ、捨てる量に関して言えば、全てが我々消費者の責任というわけではない。世界中のファッションブランドが日夜新製品を作り出しているが、それに比例して売れ残りも生まれる。売れ残った商品の多くは、ブランド維持のために過度なディスカウントや寄付ができず、手っ取り早く焼却処分に出されるケースが多いと言われている。なかにはRenameのように廃棄を減らす取り組みもあるが、今はまだまだごく一部しかフォローできていない。

売り切れず燃やすくらいなら、単純に生産量を減らせばいいのではないかと思うが、それもまた販売量や利益が減ってしまうというビジネス上の判断が優先され、生産量が見直されることは稀だという。

では、せめて焼却施設に運ぶのではなく繊維だけでもリサイクル工場に回せればよいのだが、事はそう簡単ではない。繊維リサイクルの市場はまだ小さく未成熟なため、リサイクルに回しても利益に繋がりにくいという問題があるからだ。

私たちはどうするべきなのか

このように、生産側の構造の問題は案外根深く、今のところ大量に出る衣類ごみを完全にリサイクルするのは不可能だ。となるとやはり、我々消費者の意識を変えていくしかない。

日本だけでなく、日本と近い状況にあるシンガポールを通して、ファストファッションをはじめとするファッションサイクルの加速が、地球すべてを巻き込むほど大きな歪みであることが見えてきただろうか。

安価な衣類を次から次へと消費するファストファッションではなく、丈夫で良い製品を長く使い、衣料ごみを減らすことが、最も身近な環境対策である。

 

 

リサーチ:TOKYOVISION

  • 新井紙材株式会社
  • メディア事業部
  • 映像ディレクター・エディター

Yuji Arai

AIMS VIDEO(新井紙材株式会社 メディア事業部)
2015年から映像制作に従事。福島の民法局と民間の映像制作会社に勤務ののち2020年よりAIMS VIDEOに所属。

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