プラスチックって一体何者?意外と知らない起源や製法についてご紹介

日常生活の中に溢れているプラスチック。もはや当たり前すぎて気にも留めないかもしれませんが、実はプラスチックの生産量が急速に増えたのはここ60~70年ほどと比較的最近のことです。

プラスチックは安価で丈夫な素晴らしい素材であることは間違いありませんが、私たちはあまりにもこの素材に依存しすぎています。そしてプラスチックごみが生物や地球にもたらす影響は計り知れません。

私たちは、プラスチックが環境にとって良くないことはなんとなくわかっているものの、プラスチックがどのような物なのかについては、実はよく知らないというのが実情ではないでしょうか?そこで今回は、プラスチックがどのように誕生したのか、どんな物質でどのように作られているのかについて、簡単に紹介していきたいと思います。

プラスチック誕生にはビリヤードが関係していた⁉

プラスチック製造のきっかけは、実はビリヤードの球が関係しています。アメリカでビリヤードが盛んだった頃の19世紀半ば、ビリヤード球は象牙から作られていました。ところが、象の牙1本からできる球はわずか3球。象牙を採取するためには像を殺傷しなければならず、ビリヤード業界において、そのうち材料の調達が困難になるのではないかという懸念が広まりました。

1863年、アメリカでビリヤードの父と呼ばれていたマイケル・フェランは、『象牙の代替品を見つけた者に賞金1万ドル(現在の約」300万ドルに相当)を支払う』という新聞広告をうちます。そこで代替品探しに乗り出したアマチュア発明家ジョン・ウェズリー・ハイアットが、綿の中にあるセルロースから新しい素材『セルロイド』の合成に成功。このセルロイドが最初のプラスチックとされています。セルロイド球は象牙の球のように跳ねず、残念ながら賞金獲得には失敗したものの、セルロイドは櫛やフィルムなど幅広い用途に使われるようになりました。

さらにセルロイドの発明は他のプラスチックの発明を促すことに繫がり、1907年、初の完全な合成プラスチックが誕生。これはレオ・ベークランドが発明した『ベークライト』というプラスチックで、現在でも電気絶縁材料などに使用されています。

戦争によって産業プラスチックの開発&製造が加速

1939年に始まった第二次世界大戦中は資源の確保が必須であり、天然ゴムなどの素材は配給制だったため、合成素材が作られるようになります。戦時中のプラスチックの生産量は300%増え、パラシュートやバズーカ砲の砲身、ヘルメットなどさまざまな物に使われていました。

(Geyer et al. 2017より)

このように、戦争で産業用プラスチックの開発と生産が進み、戦後は大量消費の時代が数十年続くことになります。安価で軽量、何より自由に形を変えることができる点がもてはやされ、現代人の生活は快適さを求めて劇的に変化。1950年から2015年にかけて、プラスチックは190倍に増えたのです。

プラスチックの原料は化石燃料

プラスチックの99%は化石燃料からできており、原料の大半は石油と天然ガスです。2019年の世界の石油生産量は一日あたり平均8,000万バレル以上(1バレルは約159リットル)。世界経済フォーラムによると、消費される石油の約4~8%がプラスチックの製造用で、そのうちの半分はプラスチック製品の原料に、残り半分は製造するためのエネルギーとして使われているのだそうです。ということは、少なく見積もっても毎日世界で300万バレル以上の石油がプラスチック製造に使われていることになります。ちなみに、1バレルで作ることができるレジ袋の数は8,500枚。

天然ガスはどうかというと、全生産量のうち約1.8%がプラスチック製造に使われています。

化石燃料の輸送時にもCO₂が排出される

石油と天然ガスは、燃料や製品原料として世界中で使われていますが、埋蔵地域が限られているため、パイプライン・船・列車・トラックの4つの方法で輸送されます。ということは、燃料の輸送時にもCO₂が排出され、環境に影響を与えていることに。

また、輸送中の流出事故は珍しくなく、環境に大きなダメージを与えているのも事実。燃料の流出は生き物にも大きなダメージを与えますが、例えば原油の流出によって一つの種が多く死ぬと連鎖的に他の種にも影響が及び、生き物のコミュニティーの構造が変わってしまうという問題も起こります。

プラスチックの作り方

プラスチックは複雑な化学プロセスを数段階経て出来上がります。基本的には、精製・クラッキング・重合・ナードル製造の4つの工程があります。

(日経ナショナルジオグラフィック社『脱プラスチック データで見る課題と解決策』より)

精製

採ったばかりの天然ガスは、複数の炭化水素と水蒸気、硫化水素、二酸化炭素、ヘリウム、窒素などが混じり合っていますが、水分と不純物を取り除く複雑なプロセスを経て最終的に天然ガス液になります。

一方原油も採取したばかりの状態では様々な炭化水素が混ざっており、そのままでは使用することができず、精製されて初めて利用価値が生まれます。原油は精製されてガソリンやディーゼルオイル、ナフサ(さまざまな石油化学製品の原料となる可燃性の液体)になりますが、そのためには高温化で分別蒸留して「留分」と呼ばれる成分に分けなければなりません。プラスチックを作る時に有用な留分は、ナフサ・灯油・軽油・重質軽油です。

クラッキング

クラッキングとは、炭化水素の長い鎖を切って小さな分子やモノマー(単量体)にすることを言います。クラッキングの方法は燃料によって異なり、エタンはスチーム・クラッキング、ナフサはナフサ分解、灯油や軽油は流動接触分解です。どの方法も高温高圧下で行われるのが特徴。

(引用:JEJ ASTAGE プラスチックの基礎知識より)

例えばナフサ分解について説明すると、まず約800度になった蒸留塔にナフサを通すことで、ナフサが激しい熱分解反応を起こして気体となります。さらに蒸留を繰り返すと、気体となった成分が重さによって分類されます。これを重さごとに取り出したものが「石油化学基礎製品(=基礎原料)」。石油化学基礎製品には「エチレン」「プロピレン」などがあります。

重合

クラッキングのあと、石油化学製品は重合という段階へ。重合とは、モノマーをポリマー(重合体)にするプロセスのことで、ある温度化で触媒を用いてモノマー同士を結合させ、ポリマーの鎖を作る工程です。

例えば、エチレン(C₂H₄)は2個の炭素原子が二重結合した分子ですが、この分子が複数あるところに触媒を加えると、二重結合が切れて炭素の原子同士が繫がり長い鎖となります。こうしてできたものがポリエチレン。

ナードル精製

重合した液体は冷却すると固体になります。この固体を1ミリ~5ミリくらいに粉砕したものをナードルといい、このナードルが世界中に運ばれてさまざまなプラスチック製品に生まれ変わります。

プラスチックの種類

このように、化石燃料は複雑な工程を経てプラスチックになるわけですが、ひとくちにプラスチックと言っても材料はさまざま。その種類は数百種類にも及ぶといわれていますが、代表的なものを紹介していきましょう。

プラスチックは何にどれくらい使われている?

人間の文化を大きく変えた素材であるプラスチックは、現在では日常生活の至るところで活用されています。では実際に何にどのくらい使われているのでしょうか?

(出典:プラスチック循環利用協会 「2020年 プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況」)

このグラフは2020年における国内プラスチック製品の消費量とその内訳を示したものです。軽くで丈夫、安価なプラスチックは、約半数近くが包装や容器類に使用されていることがわかります。この部分を減らす策を講じなければ、地球は今以上にプラスチックに汚染されてしまうでしょう。

「夢の素材」が及ぼす影響はあまりにも大きい

プラスチックの発明により、人類の生活は大きく変化しました。プラスチックは私たちの生活のさまざまな部分で重要な役割を果たしている、便利で優秀な「夢の素材」です。ですが、想像以上に複雑な工程を経て生み出されるプラスチックは、ごみの問題だけでなく、原材料の枯渇や輸送や製造過程での環境への影響など、目に見えない多くの問題を抱えているのも事実。

私たちは、プラスチックの「便利で優秀」なだけではない別の側面からも目を逸らさず、未来を救うための一歩を踏み出さなければなりません。

まずは、何も考えずにプラスチック(プラスチック包装されたもの)を購入し、深く考えずにゴミ箱に捨てることに疑問を持つこと。

いかに自分たちがプラスチックに依存しているかに気付くことが、環境に優しいアクションを起こすきっかけになるはずです。